第11話
「さあ、時はきた。俺が練りに練った作戦、作戦名「ブルートフォース」を発動する!!」
俺は今、仁原市の
「聞こえるかアルファチーム、応答せよ」
『聞こえてますよ。アルファチームって何すか。こっちは一人何ですけど』
「オーケー。今どこにいる」
『今は昼休みなんで中庭で飯食ってます』
「了解した。決行は終業時間直後に行われる。準備を怠るな」
『はぁ・・・イエッサー』
通話が切れた。通信は良好っと。今の電話は電波状態を確認しただけだ。白銀をからかうとかそういった意味は無い。さて、ここでブルートフォース作戦の内容をもう一度確認しよう。内容は白銀が黒宮をここまで連れてくる。以上。ものすごく雑だ。名前が格好いいからという理由だけでつけた作戦名もこの雑で強引な作戦には意外と合ってるかもしれない。
帰宅後にした白銀とのやりとりで、黒宮の情報はさらに集まった。白銀と同じ2年、それに同じクラスだそうだ。さらに部活には入っておらず終わると直ぐに帰ってしまうようだ。おそらく、陰陽師の修行でもしているのだろう。彼女の戦いを一度見た感じ、才能はかなり感じたが使い方が下手という印象を受けた。やはり教えてくれる存在がいないせいだろう。
昼の通話からしばらくの時間が過ぎた。暇すぎた俺はずっとスマホを構っていた。どうやらこの世には怪物が存在して、それを倒す世界的組織がある、等と語っている団体があるらしい。鋭いな。うちの組織は情報漏れは極力避けてるはずなんだけどな。そして案の定メディアにもコメントにも馬鹿にされているようだ。普通に考えればそらそうだ。だが、普通じゃない俺達退魔機関、特に上層部の人間はビビってるだろうな。
そして時刻は4時半過ぎ、白銀から電話が掛かってくる。すかさず通話ボタンを押す。
「状況は?」
『今、黒宮が教室を出てった所です』
「校門前くらいで話し掛けられるように追跡しろ。黒宮との会話は通話で指示を出す。イヤホン付けとけ」
『了解。ちゃんと指示出して下さいよ!』
電話越しに白銀の歩く音が聞こえる。スマホは通話中のままなので生徒達の声が聞こえてくる。その声はどんどん小さくなっていった。代わりにギィと靴箱をあける音が聞こえた。今は玄関にいるのか。バタンッと少し大きめの音が響き、タッタッタッと小走りの音が続く。
『く、黒宮・・・!ちょっといいか・・・?』
話し掛けたということは校門を抜けたということか。話し掛ける白銀の声は電話越しにも分かる位、緊張している。白銀には話していないがこれは黒宮の白銀に対する好感度を測る目的もある。観測者も女子の心なんて分かるわけないので、俺がそう感じた程度のことしか言えないが・・・とにかく頑張れ!白銀!!
『白銀君、何か用ですか?』
とりあえず無視はされなかったと。名前も覚えられてるな。ここら辺で一度指示を送るか。
「白銀、聞こえてたら咳払いしてくれ」
『ゴホン』
「オッケー。先ずは俺の名前を伏せて誘ってみてくれ」
『えーと、この近くに烏杜神社があるだろ?そこに俺の知人がいるんだが、黒宮に会いたいらしいんだ』
まず名前を伏せさせたのは俺の名前を出したら帰られる可能性もあるのと、少しはぐらかすような言い方をすることで黒宮の警戒心、白銀への信頼感がどんな程度か試したかった。
『ごめんなさい。白銀君。私は行けないわ。話はそれだけですか?』
『えーと・・・ほんの一分待っててくれるか?』
白銀が小走りで走る音が聞こえる。
『断られたけど、こっからどうすんだアンタは。何か考えてるんだろうな』
「しょうがない。俺の名前を出せ」
白銀が小声のウィスパーボイスで俺を詰める。一応考えはいる。
そもそも覚えているか。まだ怒っているのか。それすら分からないので怒って帰ってしまうという可能性はあるが、それを考えた上でも話すべきだ。なにも情報を得られず帰ってしまったら元も子もないからな。
『分かった。アンタの名前を出せばいいんだな』
白銀が再びウィスパー早口で答えて直ぐに会話が始まった。
『黒宮、ごめん。待たせたよな?』
『私は大丈夫ですが・・・電話相手は私に会いたいという人物ですか』
「そうだと答えろ」
『ああ、会えないって伝えたよ。そしたら名前を出して良いって。黒宮も知ってるかも』
『そのお相手は何と言うお名前何でしょうか』
『・・・本田祐也って名前』
『えっ・・・』
二人の時間が止まる。黒宮は俺の名前に驚き、その黒宮の動揺に白銀は驚いている。多分こんな感じだと思う。
『本田、祐也さんですか?』
『知ってるのか?』
おい!白銀!ちゃんと知り合いって言っただろうが!全然信じて無かったのかよ!!
『ええ、知り合いです。成る程、私に会いたいという人物に心当たりがありませんでしたが、彼なら納得です』
『つまり・・・』
『行きましょう。烏杜神社に』
よっしゃあ!!ブルートフォース作戦成功!!さすが俺の考えた作戦は完璧だったな。ひょっとして司令官の才能があるかも知れん。・・・ってそんな下らないこと考えてる場合じゃない。今から黒宮が来るんだ。どうやって待ってればいい?隠れて「いない!?」ってなったら背後から登場。これは格好いい。けど没。やっぱり普通に会うのが一番かな。いやでも・・
俺の聴覚は、不意打ちを防ぐため、魔物を見つける為に訓練をして鋭敏になっている。その耳がこの烏杜神社の長い階段を登る2つの足音を感じ取っている。黒宮は霊力もあり分かりやすいが、白銀は聞こえたり消えたりして分かりづらいな。これは昨日の夜聞いた爺さんに鍛えられているというのが影響しているのだろう。足音を消す武道って何だ?
顔が見えてくるまで残り5段、4段、3段、2段、ラスト1段。俺はあらかじめ決めていたポーズを取る。神社の建物に背中を預けて腕を組み目を瞑る。顔が見えたらおーいって行くのもあれだし、逆に向こうからおーいとも来ないだろう。それを考えるとこれが一番いいと思った。
「本田さん!」
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