第13話

黒宮を家の近くまで送り、スマホを見る。現在午後5時半頃、スマホには着信が数件掛かってきていた。サイレントマナーにしてたから気づかなかったな。誰から来ていたかというと白銀3件咲耶2件だ。白銀はともかく咲耶は何故かメッセージアプリをあまり使わず、電話を掛けて来ることが多い。俺から連絡する時、最初はメールやメッセージアプリで送っても電話がいい、と言われ結局電話で話すことになる。そんなに電話が好きなのか?



とりあえず、件数の多かった白銀に電話を掛ける。数コールで直ぐに繋がる。


『本田さん!!黒宮から招待が来てるんですけど!!!イタズラじゃないですよね!?イタズラだったらブッ飛ばしますよ!!?』


テンションおかしくなっちゃってんじゃん。イタズラって言ったら面白そうだけど、ブッ飛ばされちゃうからな。ここは事実を伝えるか。


「俺が提案したんだよ。機械とか詳しいから教えてもらったらどうだって」

『すんません。ちょっと舐めてました。本田さん、最高です』

「だろ!もっと崇めろー」

『いやーそれはちょっと・・・』

「何だよー。・・・まっいっか。それより機械と携帯について勉強しないとな」

『黒宮の中では俺はメカニック的な感じでインプットされてるでしょうから、教えられるように勉強しないとってことっすね』

「まあ、そういうことだ。頑張れよ」

『本当に応援してくれてるんですね・・・』

「そう言ったからな。白銀は約束通り黒宮を連れて来てくれた。俺もそれに答えないとって思っただけだ」

『ありがとうございます!聞きたいことは聞けたんで失礼します!』


白銀との通話が切れた。結局黒宮が言っていた白銀の事は話さなかった。今そんなことを聞いたら白銀は調子に乗ってしまうだろう。調子に乗るまではいいが、その勢いのまま黒宮にアタックしかねない。自分の事をよく見ていた。そんなことを聞いたらその女子を好きになってしまう。それが気になっている女子ならなおさら。それ程、恋愛経験の少ない男子高校生は単純なんだ。いや、高校生だけじゃないか。大人でもそうだ。かくいう俺もそうだった。


白銀との電話を終えた俺は一先ず自販機で炭酸飲料を買って近くの公園のベンチに座る。いやー、便利だね!このスイカだかメロンだかってカード!お金を入れとけばピッてやればジュースも買えるからなピッとやれば。それにこのカードは10万まで入るからこまめにチャージしなくてもいい。これは神のカードだあ。


飲み物を開け軽く喉を潤しつつ次に咲耶に電話を掛ける。1コール目の真ん中くらいで繋がった。はえーよ。さてはスマホを持って待ってたな。


『お主はいつも電話に出ないのう』

「そう怒んなって。かわいい顔が台無しだぞ?」


しょうがないじゃんか。タイミングが悪いんだから。このまま説教が始まっても面倒だと思い、歯の浮くような台詞で話を強引に変えた。めちゃくちゃ恥ずかしいが説教くらうよりマシだろ。多分。


『えっ・・・って電話だから見えないではないか!』

「お前は分かりやすいから頭ん中で想像できるわ。・・・それより何の用だ」


白銀の用は予想できたが咲耶の用は何も思い付かない。買い物はこの前行ったしな・・・


『用がなきゃ電話しちゃいけないの?』

「ゴフッゴホッ」


咲耶の奴、さっきの仕返しか?悲しそうな声色出しやがって!それも標準語で言うことで普段とのギャップでダメージ二倍。飲んでた炭酸飲料が気管に入って盛大にむせたじゃねーか!


「お、お前なあ・・・」

『さっきのお返しじゃ!どうじゃ?言われた方は慌てるじゃろう?』


やっぱ仕返しだった。でもそれはずるいって。


「分かったよ。もう言わなきゃ良いんだろ」

『そういうわけでもなくてじゃな・・・』

「はあ?よく分かんねーよ。そ、れ、よ、り!結局何の用なんだよ。いつもの夜の電話には早いぞ」


咲耶は電話魔だ。いや会話魔と言った方がいいかもしれない。そんな人間が転勤して友達が俺以外居ない状況。普段なら複数人と会話することで解消してるが、今は俺一人にしわ寄せが来ている。そのため、毎日1時間以上、他愛もない話をだらだらと話している。まあ、人の話を聞くのは嫌いじゃないからいいけど。


『少し分かった事があってのう』

「分かった事?」

『今から、施設の方に来れるか?』

「分かった。今いる場所からだと30分くらいかかるけど大丈夫か?」

『大丈夫じゃ。待っておるぞ』


分かった事とは何だろう。咲耶が所属しているのは対魔対策室、魔物の人的被害を減らす案を練ってそれを上の部署に提案する場所だ。そこで分かった事と言えば真っ先に思い付くのは、人的被害を減らす方法だが、それだったら俺を呼ぶ意味が分からない。俺を読んだからには、そこには必ず俺に関係する何かが存在するはずだ。それこそ記憶に関わるものかもしれない。


「どっちにしろ、向かわざるを得ないか・・・!」


俺は今までのノーマルモードから仕事モードに心のスイッチを切り替えた。そしてそのまま駆け出した・・・何て事はなく、普通にバスに乗った。バスすぐ来て良かったあー。走らないのかって?いやいや、走ったら目立つじゃん。その点、バスは目立たないし、安いし、早く着くの三拍子が揃っている。バス、これは神の乗り物だあ。


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