第20話
「まさか本当に呼べたなんて・・・」
黒宮が驚愕の表情を浮かべている。
「成功だ。黒宮、よくやったな!」
「ですが、今のは殆ど本田さんの力で・・・」
「一回呼べたんだからどんどん出来る様になるさ。それよりも今は出来たことを喜ぼうぜ」
「・・・はいっ」
少し間を置いてから明るい声色で返事をした黒宮。彼女の中ではまだ疑問や引け目を感じているのかもしれない。でも今はそれで構わない。召喚出来たというのが大切だ。一度でも出来たのならそれはまぐれでも奇跡でもない。その人物の努力の成果だ。・・・なんて言っていた偉い人がいた・・・気がする。その言葉に従えば・・・いや、従わなくとも召喚出来たのは彼女の努力の成果だと分かる。
そんな事を考えている俺を脇目に黒宮は、自分が呼び出した大鴉をまじまじと見つめている。黒宮が呼び出した守護霊は“大鴉”。その名の通り巨大な鴉だ。目算だが全長3m以上とかなり大きい。これが黒宮家の守護霊か。
『我を引きずり出したの貴様か』
大鴉は尊大な態度で話しだした。っていうか守護霊って喋れんのかよ。カラスは頭がいいというからこの大鴉だけは喋れるとか?まあ、後で調べればいいか。どうやら話がしたいようだし。
「そうだけど、それが何だよ」
「ちょっと本田さん!?目の前に居るのは神ですよ!?そんな口調で!」
黒宮は焦ったように俺を両手でどうどうと制して俺と大鴉へ視線が行ったり来たりしている。というかこれが神?唯のデカカラスじゃん。
「黒宮だってジーッと見てたじゃん」
「それは・・・感動していただけで・・・」
「それにほら、向こうも怒って無いみたいだぞ」
黒宮は俺の指差す方へ顔を向ける。指差す先にいる大鴉は微動だにせず俺をを見ている。その視線はまるで俺を見極めようとしているようだった。警戒してるのかな。無理矢理呼び出したし。
『・・・成る程、大方は理解した。其方が今代の我の契約者、黒宮凉華であるな。そしてそこの男・・・貴様が本田という名の退魔士だ』
「まあ、そうなんだけどよ・・・なーんか態度が違わねーか?」
「本田さん落ち着いて下さい。気のせい、気のせいです」
「お前がそういうなら引き下がるけどよ・・・」
絶対態度違ったけどな。俺には貴様、黒宮にはそなただったし。契約者とその他有象無象で態度が違ったりするのだろうか?それとも嫌われてるだけだったり?などとそんな答えの出ない考察の迷路に入り込む寸前に大鴉の声で現実に引き戻された。
『我が契約者、黒宮凉華よ。其方と直接顔を合わせるのは初、改めて名乗ろう。そこの無知な男にも分かるようにな』
やっぱり嫌われてない?これ。
『我が名は大鴉。この地を治める土着の神である』
「はっ、はい!私は今代の契約者をさせてもらってます!黒宮凉華と申します!」
『うむ。知っておるぞ。其方の事は生まれる以前より──────』
「はい。ストップ!!年寄りの会話は長いからそこまで!!」
『ほう。我に向かってその態度とは・・・』
大鴉から莫大な圧を感じる。だが、殺気は感じない。威圧してるだけ。敵意は感じられない。
「えーと、えーと・・・」
その横では黒宮があたふたしていた。丁度いい。俺はこいつと話したいことがある。こちらに向かって来ている魔物の相手していてもらおう。来ているのはレッドウルフ3体。レッドウルフは赤い毛に覆われた、狼より一回りほど大きい魔物だ。黒宮の実戦も見てみたいし黒宮なら余裕だろ。
「俺達ちょっと二人で話があるんだ。その間黒宮は西から来るレッド・・・赤狼3体の相手を頼む!全然勝てない相手じゃないし、危ないと感じたら直ぐ行くから!」
「分かりました!」
そう言うと黒宮は西へ向かって行った。黒宮は強い魔物には勝てないけど凡百の雑魚魔物相手なら中々だと俺は思う。自身の莫大な霊気を纏わせた薙刀を振り回せば周りの雑魚魔物共は一瞬で霧散するだろう。標的を囲んで襲撃をかけてくるレッドウルフとは相性がいい。だから向かわせた。
『それで、話とは何だ』
「単刀直入に聞くが、黒宮の体内に居たんだろ?何で虐待を受けてる黒宮に手を貸さなかった・・・!!」
黒宮が虐待を受けていた理由は守護霊も呼び出せない出来損ないだからだ。つまり、こいつが手を貸していれば虐待など起こらなかったか、あるいは少し今よりも軽いものになっていたに違いない。今の彼女は精神の限界に近そうに見える。
『やはり無知だな。守護霊は相応の力を持った契約者が名を呼ぶ、又は陰陽符によって召喚される。言いたいことは分かるな?』
「結局・・・黒宮の、あいつの実力が足りてないのが原因ってことかよ!!師匠もいない、み味方もいない状況だ。それは仕方ないことじゃねーか!!じゃあなんだ?運も実力も無かったから黒宮はお前を呼べなかったっていうのか?」
『その通りだ。だが間違いがあるな。凉華に師匠も味方もいなかった、訳ではない』
「は?現に今居ないだろ。・・・いや、一人心当たりがあるな」
それは彼女の母、大鴉の先代契約者にして凄腕の陰陽師、黒宮遥香だ。母親の彼女なら良い師匠になっていたかもしれん。
『お前の考えている通り、遥香、凉華の母の彼女なら良い師匠になっていたであろう。だがお前は知らないだろうが母親が死んだ後、一人で凉華の味方で居続けた奴がいた』
聞いた事ない話だ。今、状況が改善されて無いところを見るにそいつは失敗したのだろう。
『其奴の名は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます