第17話

 土曜日。俺達にとっては今日が初めての二人にとっての休日になる。

 とは言っても特に予定は立てていない。単に疲れてるからゴロゴロしたいという俺の希望が通ったのだ。

 という事で、秋根と二人で熟睡しようと言って、朝十二時くらいまで寝るという覚悟で寝た。



「ピンポーン」


 インタ-フォンが鳴る。その音で目が覚めた。今は一〇時半。確かに宅配便が来てもおかしくない時間だ。


「秋根、宅配便か?」


 そう訊くも、秋根は「遊星くん好き」だとかよくわからないことを言っている。まだ夢の中のようだ。


「仕方ねえ」


 俺が出るしかないようだ。 確か、ハンコは玄関付近にあったはずだ。

 そしてパチン! と自分の頬を叩き、宅配便に出ようとする。



 そして「はーい」と言いながら玄関のドアを開ける。するとそこにいたのは俺の見知った顔の女の子だった。


「……なんでここにいるんだよ!」


 思わず大きな声で言う。、今日こいつが来るなんて言う話は知らないし。


「サプラーイズ!!」


 そう大きな声で言ってそのまま家に入ってこようとする。


「おい、待て」


 それを慌てて制止した。流石に実の妹にこの家に入られるのは気まずい。


「いいじゃん。お兄ちゃんの新居見てみたいし」

「そうじゃねえ。なんでここにいるんだよ」

「だからサプライズだって。察しが悪いなあ」


 なるほど、サプライズがしたいから黙ってここに来たのか。全くはた迷惑なやつめ。


「だが、家に入れるとは言ってねえ」

「えーだったら私野垂れ死んじゃうじゃん。お願い入れてよ! お兄ちゃん!」


 まったく、こっちは寝起きなんだぞ。少しはこっちの身にもなってくれ。だが、そんなことを言っても、こいつが引き下がるわけがない。

 仕方ない。家に入れてやるとするか。

 そう思って、肩をつかんでいた手を離してやる。すると、超スピードで家に入って行った。


「わーここがお兄ちゃんの家⁉ めっちゃ広いじゃん!!」


 昭かなハイテンションだ。ただでさえ、ハイテンションは秋根だけでいいというのに。

 優子……こいつは、名前とは反対に全く優しくない、むしろ兄にはあたりが強いとまで言える。こいつのうざったらしい性格にどれだけ悩まされてきたか……。


 そんなことを考えていたら、もう優子はここにはいなかった。なぜ人の家を勝手に探検するんだよ。


 そして「誰!!!!!」という大きな声が家中に響いた。まさかあいつ寝ている秋根を起こしたというのか!!


 別に二人は初対面という訳ではない。あの俺と秋根が一緒に泊まった日にはたまたま友達と旅行(友達の両親同行)に言ってた関係でいなかったのだが、二人は何回かあっている。


 そもそのの話、秋根と優子自体二歳しか年が離れていなかったこともあり、その関係性としては人見知りな秋根を元気いっぱいの優子が引っ張って行ってたな。あの日々は懐かしいわ。……手そんなことを考えてる場合じゃねえ。早く寝室に向かわなくては!! そう思い、走って向かう。するとそこには……


「なんかすごい変わったよね秋根」

「そう? 優子こそだいぶかわいくなってるじゃん」

「え? そう……?」

「うん。ほら髪型もいいし……」


 普通に会話してる!? 二分前くらいに悲鳴聴こえたはずだけど。


「あ、遊星くん。優子が来るんだったら教えてくれたらいいのに。酷いね」

「それはこいつに言ってくれ」

「こいつって酷くない? お兄ちゃん」

「そうよね。優子ちゃんにひどいわ」

「いや、来るって伝えなかった優子がどう考えても悪いんだが」

「それはサプライズ! ……あ、秋根にサプライズっていうの忘れてた」

「あ、そういう事!?」

「というか……なんで今日は来たんだ?」

「何お兄ちゃん。用事が無かったら来たら駄目なの? 私はただ秋根に会いたかっただけなんだけど」

「そうなの? うれしい!」


 ダメだこいつら……と思いつつ、どうしようか。少し気まずい。

 再会の喜びの会話をしている時に俺がいたら邪魔だよな……と思い、部屋から出る。……ようとすると、


「お兄ちゃん! 待って!!」

「え?」


 腕をつかまれた。その勢いでその場に倒れてしまう。


「っいた。どうした?」

「お兄ちゃんも含めて三人で会話したいな……だめ?」


 お前もっと小悪魔だろと言いたい、本当に言いたい。

 秋根にしろこいつにしろなんで上目使いとかかわい子ぶりっこしたら言うこと聞くと思ってるんだろ。

 だが、それに秋根も加わって「私も遊星くんと話がしたい」と言い出してきたので、抜け出すにも抜け出せない状況になってしまった。

 仕方ないので、この場にとどまる。

 そして話は秋根の五年間の話になった。


「なんでそんなに性格が変わったの?」という優子の質問から生じた話題だ。


「私は、あのときいじめられたということから自分を変えようと思ったの。まず垢抜けようって。だから中学は勉強して、髪を染めていい学校に行ったの。そこで髪の毛を染めて陽キャみたいにして、中学校では積極的に話しかけるようにした。だって、そうじゃないとグループから阻害されてしまうし。で、そんな感じで頑張ってたらいつのまにかこうなってた。結局いじめとかには無縁になったけど、変な人に絡まれたりするのが面倒くさくて軽く後悔しかけた。まあ結果的に遊星くんに再会できたから良いんだけど。結構遊星くんに褒められるし」

「まあ、実際今可愛いからなあ」

「ありがとう!!」


 そう言って秋根は俺に飛びついてきた。


「ちょっと、イチャイチャしないでくれる?」

「イチャイチャしてねえよ」


 妹に言われるのが一番嫌だ。


「それで、モテまくったんだよねー」

「秋根、羨ましい」

「でしょ! でもいいことだけじゃなかったよ。さっきも言った通り、厄介なやつ多いし」

「秋塚とか?」

「うん。本当に付きまとってくるから嫌い」


 まあ、あいつはいつかなにかやらかしそうだな。いや、もうやらかしてるか。


「大変だね。お兄ちゃんが倒せばいいじゃん。論破してさ」

「そう簡単に言うなよ」

「そうだね……でも遊星くんが倒してくれたら嬉しいな」

「おい! お前!」

「だって迷惑なのは迷惑だもん」


 まあ、それは知ってるけど。


「そうよ。秋根のヒーローになってよお兄ちゃん」

「なんでお前にそんなこと頼まれなきゃならないんだよ。だったらお前がやれよ」

「私よりもお兄ちゃんの方が適任じゃん。彼氏なんだし。叶わない恋の引導を渡してやって!」

「なんだよ」


 軽く言いやがって。結局秋根もその話にノリノリだし。結局俺は秋塚に言ってやらなきゃならなくなりそうだ。

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