第24話 優子の寝相

 そして俺たちはお風呂から出た後、ベッドに向かう。ベッドはぎり三人寝られるスペースがあるが、若干狭い。

 俺、秋根、優子の形で、俺と優子が秋根を挟む形で寝ることになった。

 しかし、なんとなく気まずい。先程三人でお風呂に入ったからだろう。

 もし俺と秋根の二人だったらここまでの事にはならなかっただろう。

 やはり優子の裸を見てしまったのが原因だろう。本当に優子は何を思ってあんなことをしたのだろうか。


「ねえ、秋根」


 そう考えていたら、優子が秋根に話しかけた。


「お兄ちゃんとの生活は楽しい?」

「うん! もちろん」

「そう、良かった。お兄ちゃんって変なところがあるからね」

「おい! どういうことだ」

「だって、たまに漫画とかのセリフを呟いてたじゃん。それに、三年前から反抗期始まってるし」

「おい、やめろ」

「え? 聞かせて?」

「やめろ!!!」


 半分黒歴史なんだからさ。


「もし言ったら優子、お前どうなるか分かってるだろうな」


 優子の肩を押しながら言った。もちろん脅すためだ。


「冗談だよ。冗談に決まってるじゃん」

「本当か?」

「本当だよ。もう離さないと、変態だよ」

「変態じゃねえよ」


 そして俺はもう一度「言うなよ」と念押しして、秋根の横に戻った。


「ふう」

「お疲れ様」

「おう」


 そして秋根が俺に抱き着いてくる。


「お前は相変わらずだな」

「えへへ」

「お兄ちゃんばかりずるい!」


 といった優子は秋根に抱き着いた。

 これどういう状況だよ。


「優子ももちろん大切だから」


 そして秋根は優子の方を抱っこする。そして二人で抱き合った後、



「遊星くんと、優子も抱き合ったら?」

「ちょっと馬鹿!?」


 優子が分かりやすく動揺した。


「私は是tぅた位にそんなことしないから」

「でも優子そんなこと言ってさっき脱いでたじゃん」

「それとこれは違うから!! もう」


 優子は布団をかぶって、潜ってしまった。なんとなく振られた感じになって少しやだなあ。


「まあいいけど」


 そして俺も布団をかぶる。


 そしてそのまま会話が無くなり眠りについた。





「ん?」


 目が覚める。すると俺は抱き着かれている感触を感じた。


 どうせ秋根だろう、と思っていたら感覚的に違った。二人には大きな違いが二つある。髪の長さと胸の大きさだ。髪の毛は秋根の方がはるかに長いが、胸は優子の方が大きい。

 そしてこの胸の感触は明らかに優子だ。

 昨日馬鹿!? とか言っておきながらどういうことだ?

 やっぱり兄の肌が恋しくなったのか?



 しかし、長くないか? 

 こんな長時間抱き着く必要あるのか?

 そう思っていると、


「お兄ちゃん大好き」


 そう言われた。

 マジで意味が分からん。

だが、感じを見てたら完全に寝相っぽい感じだ。こいつはこいつで俺が家を出てからさみしかったのかな。兄貴に続いて俺も家を出たからなあ。


そう思い、頭をなでる。すると嬉しそうな感じの表情を見せた。寝ながらなのに器用なやつだ。

抱っこして元の寝場所に戻してから眠りについた。


そして、翌日目が覚めると二人ともいなかった。いろいろと準備をしてからリビングに行くと、二人で朝ごはんを作ってた。


「あ、お兄ちゃんおはよう」

「おう」

「遊星くんおはようなのです!」

「二人で料理作ってるのか?」

「うん、お兄ちゃん。まあ卵焼きとかだけど」


フライパンを見る。そこには美味しそうな卵焼きが出来上がりつつある。


「おいしそうだな」

「まあね。卵焼き作るの得意だから」

「まあ知ってるけど」


兄だから。


「そして秋根はチャーハンか」

「うん。美味しく作るから楽しみにしててね」

「ああ。……そう言えばなんだが、優子昨日のは何だったんだ?」

「え?」

「昨日の夜、お兄ちゃん大好きなんて言いながら抱き着いてたから」

「え? 優子、遊星くんに結局抱き着いたの?」


秋根が、興味深そうに優子をガン見する。


「え? そんな記憶はないんだけど。もしかしてお兄ちゃんの妄想が生んだイマジナリー妹なんじゃないの?」

「そんなはずはないんだが。明らかにお前だったし」

「お兄ちゃん、変態? 私にそんなことしてほしいの? 妹離れしたら?」

「それはこっちのセリフだよ」


どうなってるんだよ、一体。


そして、そんな会話をしていると、いつの間にかご飯が完成したようだ。

なにも手伝ってないという事で、皿を運んだりして、机に料理が並ぶ。


「いただきます!」

「いただきます」


三人で食卓を囲み食べ始める。


「美味しいな二人とも」

「良かったのです」

「まあ当然だけどね」


そして爆速でご飯を食べた後、三人でゲームをしたりゴロゴロしたりで楽しんだ後、五時、優子が帰る時間になった。


「優子がいなくなるの悲しいな」

「ああ。まったくだ」

「まあ、明日学校あるからね。私だって今日も泊まりたかったけど……」


そして優子は秋根に抱き着く。


「秋根また遊ぼうね」

「うん」


余談だが、実家から俺たちの家まで二時間の距離がある。そう簡単に行ける距離ではないのだ。だからこそ、秋根と一緒の学校になったというのが奇跡レベルの出来事なんだが。


「じゃあ、お兄ちゃんもまたね」

「ああ。また今度」

「お兄ちゃん、今度は変な夢見ないでね。私が抱き着いてるなんて夢を」

「夢じゃねえよ」

「ふふ。じゃあねー」


そして優子は去って行った。


「寂しくなるね」

「ああ。そうだな」


俺たちはその背中を見て、悲しげにつぶやいた。

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