第23話 お風呂

 実食ということでまずはハンバーグをかじろうとすると、「待って!」と秋根に手を掴まれて止められた。


「何だよ」

「スープから飲まない? 私達で作ったんだし」

「うん。のみなよお兄ちゃん。私のハンバーグは後でいいよ」

「じゃあ」


 そして飲み始める。すると、程よい延水戸、野菜の柔らかい触感が広がった。何だろう、美味しい。その旨を秋根に伝えると、


「遊星くんが作ったんだから遊星くんの手柄じゃない?」


 そう言われた。そう言うものなのかな。

 そして俺の逃げ場のない感情をどうにか、という感じでハンバーグも食べる。

 肉汁がしっかりと出て、美味しい。


「こっちもおいしいな」

「ありがと! お兄ちゃん」


 そして三人で夕食を楽しむ。

 優子のハンバーグももちろん美味しかったが、やはり一番はスープだ。自分で作った補正でもあるからか普通のスープよりもはるかにおいしく感じた。


 そしてその後はゲームをした。キングカートだ。

 前は秋根に連勝したが、だいぶ上手くなっている。

 一筋縄ではいかないようだ。だが、一方で優子は大分へたっぴだ。

 中々上手くいっていない。それところか、最下位を独走しまくっている。


「優子大丈夫か……?」

「っうるさい!」


 そう言いながら優子の車は大きくコースアウトしてダート地帯に侵入した。ダート地帯は車の速度が下がる。


 これは復帰が難しいな、と思った。


 という事はだ。やはり立ちふさがるのは……


「遊星くん勝負なのです!」


 秋根か。


「私はこの前みたいには絶対に負けませんから」

「おう、かかってこい」


 そして俺たち二人でバチバチと火花を散らしながら一位争いをしていく。アイテムの効果で何とか再会一歩手前の十一位を狙っている奴もいるようだが、それは無視して。



 そして俺と秋根の出っとヒートは俺が勝利を収めた。というのも、優子が一瞬アイテムの効果で三位まで上がり、追尾型アイテムを投げたのだ。そしてそれが運悪く秋根に当たった。その結果俺が余裕の一位でゴールしたわけだ。

 後で、優子に感謝しなければ。


「……これは運負けじゃない? だって優子のせいだし」

「私のせいって酷くない? だって真剣勝負の結果なんだし」

「え? 結局八位だったのはどこのどいつだよ」

「うるさいお兄ちゃん!」


 と、優子がボコってきた。


「お前なあ!」

「じゃあもう一戦しよう。そしたら真の商社側あkるんだから」

「そうだな……でも優子は無しだな。シンプルに戦力外だ」

「ひどいって!!」

「まあそうだね」

「秋根も!?」


 そしてそばで明らかに落ちこんでいる優子を無視して俺たちは本当の意味での決戦をし始める。

 その間に優子はスマホを触ってボーとしていた。

 いじけてるな。

 そして俺たちの戦いは過熱を極める。一位を取ったり取られたり。


「遊星くん、今日は絶対に負けないから」

「おう! そりゃあこっちもだ」


 そして、結果が出た。秋根が一位でゴールしたのだ。


「ほら、優子が変なことをしなかったら勝てるのよ」


 そう言って調子に乗りまくっているようだ。


「はあ、もういいだろ。そう言うのは」

「いいじゃん。調子に乗らせてよ」


 そして秋根は俺を背中から抱っこする。


「何だよ」

「えへへ、勝ったから」

「イチャイチャしないで!」



 そして時間が経ち、九時になった。


「そろそろお風呂入らない?」

「そうだな」

「どっちから先に入る? 私は秋根と一緒に入りたいけど」

「それについてですが……私は三人で入るのを提案します!」

「え、ちょ。馬鹿?」


 優子が分かりやすく戸惑いを見せる。


「お兄ちゃんと入るのなんて嫌なんだけど」

「えー、昔三人で入ることあったじゃん」

「昔は昔、今は今よ。お兄ちゃんと入るなんて絶対やだ」


 ……なんとなく傷つくな。まあ、兄弟とは言え異性なんだから当たり前の感情だとは思うが。



「秋根と優子で入っておいてよ。俺は後で入るから」

「いや、私は遊星くんとも入りたい」

「それ、どうしようもなくね?」


 少なくとも優子が俺を嫌がってる以上、全員の希望を叶えることは出来ない。


「じゃあ、俺と秋根だけで……」

「だめ! 秋根と入りたいから」


 ええーどうしたらいいんだよ。


「じゃあ、全員水着を着るっていうのは?」

「水着か、優子はどうだ?」

「私は……むむむ」


 優子次第だな。これは。


「仕方ない。折れるわ。でも、お兄ちゃん決してエロい目で見ないでよね」

「妹の水着姿をエロい目で見たら終わりだろ……といいたいところだが、それは保証しかねるな」

「なんでよ! そこは不安になるから保証してよ」


 そして優子を説得して、俺たちは三人でお風呂へと向かう。


 そして秋根は裸で、俺と優子は水着を着てはいる。


「秋根は裸なんだね」

「だって、私の裸は毎日遊星くんに見せてるし」


 確かに、毎日見てるな。


「っえ、毎日秋根の裸見てるの? お兄ちゃん」

「うん」

「むむむ」


 そう言って優子は顔を赤くしながら、水着を脱ぎ始める。


「何やってるんだよ優子!」

「だって、もうこうするしかないじゃん。秋根がしてるのに、私が裸にならないわけには行かないじゃん!!!!」

 っどういう理論!?

「てかお前、俺に裸見られたくないんだろ?」

「そうだけど、でも秋根に負けたくないし」

「どういう理由なんだよ!」


 あーもう何だよその理由は。本当、秋根に優子も取り込まれてしまったという感じになってるな。


「優子、分かってると思うけど、脱ぐ必要はないからな」

「いや、今の状況で私には脱がないという選択肢はないから」

「じゃあ、いいや。もう慣れよう」


 とはいえ、優子の胸はもともと秋根よりも大きい、所謂巨乳に当たるサイズだから直視なんてできないのだけれど。


「そういやさ、優子は秋根の性格の変化にはなんか反応したのか? 最初にあった時」

「あー、私が強行突破したときのやつね。結構明るくなっててびっくりしたよ」

「なのに結構早くに適応してるじゃん」

「まあね。だってどうなっても秋根は秋根だもん。ねー!」


 そして優子は秋根に抱き着く。


 ……目の前で美女二人のハグ姿を見せられている俺よ。


「あ、遊星くんもハグしてほしい?」

「わ、私はお兄ちゃんにはハグしないから」

「じゃあ、私が!!」


 秋根に抱き着かれる。もはや無感情だ。


「優子も遊星くんに抱き着いて来てもいいよ」

「おい! 誰が許可してんだよ」

「ぐむむむむむ」


 おい、断れよ? 優子。


「私はお兄ちゃんには屈しないからあ」


 どういう状況? これ。そして優子は屈せずに結局俺は五分くらいハグされた。

 

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