第41話 ホテル

 そして次は、漫画コーナー、ここでもかなりの漫画を買った。

 主にSNSのライターで投稿されている漫画などだ。


 しかしやはりここは人が多い。ここはメインだと言うべきか、なかなか進まない。人の群れがうんざりだと感じてきた。

 だんだん歩きずらくなってくる。


 そうしてSNS漫画を買い終わった後、三時になった。

 そこでお腹がすいてきたため、間食用に持ってきていたおにぎりをそれぞれ一個食べる。


 そして、そんな時だった。秋根が行こうよと、口にしてとある場所を指さした。

 そこにあったのは、高速系の漫画を専門とするブースだった。

 例えば、国の命令によって毎年一定数の少女が人権凍結されて拘束されるという物や、盗賊にさらわれる斧や、まあとりあえずたくさんのそう言う気の漫画があった。

 そして秋根はもう一つ指さす。そこにあるのは、所謂エロ漫画だ。


「おい」

「いいじゃん。女子だって興味があるものだよ」


 そう言って秋根はたくさん買う。

 恥ずかしげもなく買いまくるなんて漢だ……いや女だが。


「お待たせ。変なところ行かないでよ」

「え? エロ系の漫画? R15,18?」


 朱音ちゃんがそう呟く。それに対して俺は、


「ここから先は見ない方がいいと思うぞ。少なくとも君にとっては」


 そう言って、俺は朱音ちゃんをほかの場所に向かわすように、優子にアイコンタクトする。

 その意図が伝わったのか、優子は朱音ちゃんをほかの場所に連れていく。

 しかし、秋根目立ってんなあ。


 そして、一時間後、秋根はたくさんの本を買ってきた。これら全部がエロ関係の本だと思うと、少しだけ気になってしまう。

 思春期として、やはりエロには興味のあるものだ。

 だが、我慢だ。

 そうして狙いの物が買い終わった俺たちは、もうそろそろ終了時間という事で、最後に色々と買いたいものがあるか見る。だが、他にも同じことを考えている人がいるのか、動きにくい。

 これだと後買えても一二冊くらいだなと思った。


 だが、コミケは一日だけではない。明日も行ける。

 早速買い終わった後、取ってあったホテルに向かう。


「はあ、たくさん買ったねえ」


 三人総計で勝った本漫画は、170冊を超える。


 この時点で、スーツケース二つあって、ぎりぎり入ったという感じだ。


「これ、明日いらなくないか?」

「えー、二日目しか出店しないおころもあるでしょ。それに二次創作系も漫画ももう少し買いたいし」

「いや、すでに半年持つと思うんだよ」


 確か年二回開催。となれば、半年分変えたら十分なんだけどなあ。


「さて、早速読みますか」


 その秋根の言葉で、俺たちは読み始める。

 俺はラノベの二次創作、優子は少女漫画、そして秋根は……エロ漫画だ。

 秋根の呼んでいる漫画の表紙がこちらに向いていて恥ずかしい。

 タイトルは『その少女、人権凍結中にて』という物だ。

 そして表紙には、拘束されている少女が空いてある。

 目隠しされ、口を器具で無理やりあけられている。

 本当になんつう物を買ってんだよ。


「ねえ、お兄ちゃん」


 優子が話しかける。視線からして、あのことだろう。


「ああ、そうだな」

「こっちまで恥ずかしいよ。これがお兄ちゃんだったら容赦無く、没収できるのに」

「……おい!」


「秋根、ちょっと向こう見て呼んでくれないか?」

「なんで?」

「恥ずかしいからだ」

「え、遊星君こういうの興味があるの?」


 そう言ってにやにやする秋根。


「興奮とかしてるの?」

「……はあ」


 俺はため息をつく。

 こうなったら無理やりはがすしかねえ。

 俺は秋根の方に向かい、手に持っている漫画を奪いに行く。


「おい、貸せ。もしくは別の部屋で読めよ」

「えー、遊星君も呼んだらいいじゃん。ほら」


 そして彼女が差し出した本は、今日秋根がコスプレしてたキャラのエロ同人だった。


「秋根、俺にどうしろというんだよ」

「え、これで興奮」

「それ実質お前で興奮してほしいってことじゃねえの?」

「もちろんそうですよ」


「ちょっと二人とも、エロい話は禁止よ。JCがいること忘れないでよ」

「優子、俺も巻き込まれた方なんだよ!!!」


 全部の元凶は秋根一人だけだ。それに、元凶はJKなんだよ。


「そう言えば、そろそろご飯の時間なのです」

「聞けよ」

「行くのです」


 優子と顔を合わせて俺たちはため息をついた。

 そして、半はあきらめたように、俺たちは秋根についていく。


 秋根が向かったのは寿司屋さんだ。

 ここは銀座。まさにザギンでシースである。

 食事所にはおいしそうな魚が置いてあった。見ただけでおいしそうだ。


「秋根ってすげえな」

「えへ、なのです。遠慮しなくてもいいよ」

「ああ、遠慮なく食べるわ」


 そして俺は寿司を一つ口に入れる。


「うまい」


 思わずそう呟いた。今まで食べた鮨とは違う。

 思えば今までは、回る寿司に数回行っただけだ。そりゃ、美味しさが違う。


「うん、おいしーね」


 優子も隣でうなっている。


「本当に、ありがとうね。秋根ちゃん」

「勿論、これは遊星君のためじゃなくて、優子ちゃんのためなんだから」

「おい!」


 俺はついでかよ。


「ふふ」


 秋根笑っていやがる。


「さあ、どんどん食べるよ」

「うん」

「おう」


 俺たちは寿司を満喫した。そして部屋に戻り風呂に入る。

 だが、当然ここは混浴などではない。

 残念ながら一人風呂だ。

 寂しいが、ホテルの中にある沢山のお風呂を見たら思わず楽しくなってくる。


 水風呂に、巨大なお風呂に、打たせ湯、そしてウォーターバス。

 温泉ではないが、それでも十分だと思わせてくれる、素晴らしいお風呂だ。


「はあ」


 極楽だ。今日の疲れが癒される。

 あいつらも今気持ちよく入ってんのかな。


 今頃エロ本のことで責められてるかもしれないな。

 そう考えると、少し気になってきた。

 一人でお風呂は落ち着くけど、暇だからなあ。

 そしてゆったりとお風呂を楽しんだ。





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