第42話 浴衣
お風呂から上がった後、部屋に戻ると、秋根達が先に戻っているようだった。そして二人とも浴衣姿だ。
このホテルは浴衣がセットでおいてあるのだ。
かくいう俺も浴衣なのだが。
そして俺に気付いた秋根が、「これどうですか?」と、まぶしい笑顔で行ってきた。
「おう、かわいい」
その笑顔相手では本心を伝えるほかない。
実際、昼のコスプレ時の方が可愛いとはいえ、この浴衣はまたいい。
何しろ、着慣れていない感じがして、いいのだ。
「私は?」
優子も俺に訊く。
「可愛いに決まってるだろ」
優子の場合は、胸が大きいから、少しだけエロさを感じるが。
だが、そんな感想は妹に持ってはいけない。
「お兄ちゃんのシスコン」
「黙れ」
褒めたら褒めたで、なんでこんなこと言われるんだよ。
「それより、遊星君も似合ってるよ。ね、優子」
「それはそうね。お兄ちゃん似合ってるよ」
「ブラコン」
「何がブラコンよ」
こっちはやられたことをやり返しただけなんだが。
「それで、今日はもう寝るだけか?」
「そうだねえ、明日もあるし」
「そうか」
「でもね!! 旅行は深夜まで起きるのが普通じゃない?」
「……何を言っているんだ?」
「えい!」
俺の方に枕が飛んできた。それもかなりのスピードで。
「旅行と言えば枕投げでしょ」
「あ、ちょ。秋根ちゃん」
「ふふ、それえ!!」
優子にも遠慮なしに投げる秋根。
こりゃ、完全に、枕投げの空気になって来たな。
「仕方がない」
俺は秋根に向かって、本気で投げる。だが、秋根の目のあえでそれはポトンと落ちた。
「ちょっ、遊星君?」
「うるさい、俺をもうなじらないでくれ」
もうメンタル的には体力がゼロだからな。
そして枕投げは盛り上がり、結果的に俺たち三人はへとへとになり、ベッドに倒れこんだ。
「はあはあ、まさかこんなに運動することになるとはな」
「お兄ちゃんが、体力無いだけでしょ」
「うっせえ、てか胸元直しとけよ」
優子の胸元、浴衣がほぐれてきていてまずい感じがする。
「胸元見てたの? お兄ちゃんのエッチ」
「エッチだったらそのまま放置するだろ。ったく」
「遊星君、私の胸なら仕方ないので見せてあげてもいいですよ」
「秋根も馬鹿なこと言うなよ」
どうせ、俺をおちょくっているんだろうな。
というか、俺が見たいって言ったらどうしてたんだよ……
変な空気になることは間違いなしだっただろうな。
「そうだ、遊星君、寝る前に私のエロ本でも見ますか?」
「馬鹿言うなよ」
「あ、むらむらして寝れなくなるからですか?」
「優子、寝るぞ」
「あー、遊星君、待ってよ」
「優子お休み」
もう、この馬鹿は放っておくしかない。
「お休みお兄ちゃん」
優子もわかっていたのか、ちゃんとお休みと返してくれた。
そして、「なんでなのですか」と、文句を言う秋根をよそに俺たちは眠りについた。
そして翌日。
俺たちは早起きして、ホテルの小さなバイキングをめぐる。
とはいえ、そこにあるのはソーセージやスクランブルエッグなどのTHE朝ご飯と言ったような料理だ。
昨日の夜ごはんに比べたら質素なご飯だが、これもこれで美味しい。
そしてご飯を食べ終わった後、そのまま二日目に行く。前日少ししか変えていない二次創作系の漫画を買う。
二日目という事もあり今日もまた混んでたが、何とか買えた。
そして俺たちは二時に会場を出た。帰りの電車との兼ね合いもあったのだ。
「今日は楽しかったね」
「ああ、だな……」
目に映るのは秋根が読んでいるエロ本。
「お前さあ、電車の中くらい辞めろよ」
「え? でも、四人掛けの席だし、いいじゃん」
「こちらとしては目のやり場に困るんだよ。なあ、優子」
「うん、私もそう思う」
「えー、ひどーい」
そう言って秋根はテーブルの上に置かれているじゃがりこを一本口にくわえる。
「じゃあ、これだったらいい?」
それは二次創作系のものだ。
「それなら別にいいぞ」
「やったー!!!」
なんていう悦び方だ。
さて、
俺もラノベでも読むか。
「ああ、遊星君」
読み始めたら急に言われた。
「なんで昨日買ったやつを読まないのですか?」
「別にいだろ」
「だめなのです、こちらを読むのです」
そう言って秋根は昨日買ったやつを渡す。
「いや、俺はこれが読みたいんだよ」
「じゃあ、これは?」
エロ本だ。
「優子、ここには俺たち二人しかいない。いいな」
「ええ」
「なんでー!!!!!」
秋根の冗談に付き合うとキリがないからだ、と心の中で言った。
「はああ、懐かしき我が家なのです」
秋根は家に入りはしゃぎまくる。
「わー懐かしいのです」
「二日しか離れてないだろ」
むしろ、実家に帰った時の方が離れていた気がする。
「そんなくだらないことはどうでもいいのです。気持ちが大切なのですっ」
あ、これ、マジなトーンだ。
「まあ、そう言う事でいいよ」
そして、それからも互いに漫画、ラノベ、エロ本を読みながら楽しんだ。
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