第27話 コスプレ勉強会
そして、火曜日。俺たちはいつもと同じように手を繫ぎながら家から出た。
もうここまで来たら大分平常な景色となっている。もはや、「ふーふー」「アッツアッツだなあ」みたいなことを言う人はいない。まあ、それは秋根と俺が同じクラスじゃないという事もあるかもしれないが。
そして、教室に行くと相変わらず仁が手を振ってきた。
「遊星、お前今日数学の宿題やってきたか?」
「もちろんやってきてるに決まってるじゃねえか」
「そうか。良かったよ、最近のお前の場合浮かれて忘れそうな感じがするからな」
「それは秋根のことか?」
「ああ、決まってるじゃないか」
「俺はそんなのろけじゃねえよ。俺にラノベの遊び人とかの役割求めるな」
それに俺は陽キャでもない。
「お前はどちらかと言えば主人公枠だもんな。ったく、うらやましい限りだぜ」
そして授業のチャイムが鳴り、授業が始まる。早速教科書の数学の問題のことを言われた。宿題になっていた場所だろう。
「えー今日は一四日なので、一四番の高田に答えてもらおう」
早速俺が当たった。
だが、それはあくまで予想通りだ。なにしろ今日当たるのは日にちで分かってたことなのだから。
そして意気揚々と答える。
「違うぞ」
俺の答えは一蹴された。仁を見るとにやにやしていた。ああ、授業後に変なことを言われるのは確定なようだ。
そして、昼休み、秋根が「遊星くん、お待たせ。かわいい彼女が来たよ」と言って教室に入って来た。
「じゃあ、今日も遊星くん貰っていくね」
「おう。だけど、あまりイチャイチャして成績に響くことはないようにな。遊星」
「ん?」
「先生みたいなこと言うじゃん」
「だって、遊星のやつ、数学の授業の時間違えていたから」
「……」
おーい、仁。それは話が違うぞ。なんでばらすんだよ。これじゃあ、秋根にまでからかわれるじゃねえか。
っくそ、今まで話題に出してなかったから、この話題は自然消滅したのかと思ったのに。
「遊星くん、その話は署で訊くのです!!」
そして、別の机へと連れ込まれた。そのさなか「訊くのです……?」と呟く仁の声が聞こえた。
「さて、数学の授業間違えたの? そう言えば昨日宿題あるって言ってたけど」
「白状するとそうだ。答えが違ってた」
「遊星くんってそこまでは勉強できてなかったよね」
「まあ、そうだな。この高校もぎりぎりで入ったし。っで、お前は勉強できると」
「うん。もちろん。遊星くんの一〇倍くらいは」
まあ、それは過言ではないのだろう。この高校にぎりぎりで入った俺に比べて、秋根は余裕で合格したらしいのだ。
それに秋根は中学は私立だし。
「遊星くん、教えてあげる。二人きりでみっちりと」
そう自信満々に言う秋根。マジで秋根に教えてもらった方が、成績伸びそうだから困る。
「じゃあ、分かった。一緒にやるか」
「うん!」
そして、家に授業が終わり、家に帰ると早速秋根がやる気のありそうな感じでコスプレしていた。
「さあ、勉強やるわよ」と言いながら。
「なあ、秋根。数点ツッコみたいんだが」
「いいよ。何?」
「なんでコスプレ衣装来ているんだ」
確かに、コスプレ衣装が家に来た時点でいつか着るんだろうなとは思っていた。
だが、今日着るとは全くもって思っていなかった。
「今日は勉強会するんじゃなかったのか?」
「そうだよ?」
「じゃあなんでコスプレ衣装?」
「それは……遊星くんのやる気を出させるため?」
「俺はラノベの主人公かよ」
こういうシーンは何回もラノベで見たことがある。
「いいじゃん。楽しいでしょ。いつでもこう、楽しめるじゃん。私の胸を見たりとか」
「そう言う楽しみ方をしたいわけじゃないんだけど……」
「いいじゃん」
そう言って、秋根が前かがみに俺の顔を見てくる。そのせいで、胸の谷間が見えてしまう。
「やめてくれ。俺はそう言うのは興味ないから」
「……分かった。でも諦めないから」
「何を⁉」
そして、秋根はコスプレ衣装を脱ぐことせずに参考書をを出してきた。
「じゃあやるのです!!」
「はいはい」
そして指で示された問題を解く。この問題は解ける。
だが、しばらく解き続けたところ、ついに詰まる問題が出てきた。証明問題だ。
まいった、俺は証明問題が大の苦手なのだ。正直、解ける気がしない。
とりあえず数分考えるが、解ける気がしない。
「もしかして遊星くん、解けないのですか? あらあらー」
服のせいか、めちゃくちゃアニメキャラっぽく煽られているように見える。
実際は秋根はウィッグと服を着ているだけで、そこまで完成度が高いわけではない。だが、秋根自身、このキャラのしゃべり方はよく知っているし、しかも、応用力もあるので、その未完成度さえ掻き消えるほどのものだ。
「煽ってるのなら、教えて欲しい」
「分かってるよ。この問題は証明でしょ? だから、何を証明したいかを考えて解くの。この場合……」
秋根はすらすらと教えてくれる。まるでさっきまでの秋根とは別だ。
「ありがとう」
結局、最後まで説明を聞くと、ほんの簡単な問題だった。
「これなら次は解けそうな気がするよ」
「でもね、数学の問題って結局解いた回数だから、自分で解かないと力にはならないけどね」
「そうだな。次の問題は自分で解くよ」
そして頑張って解き始める。その隣で絵秋根がじっと解いている姿を見やる。
「なんだよ」
「別にいいじゃん……なのです!」
そして二五分間かかり、ようやく証明が完成した。
「これでどうだ?」
その解が書かれた紙を秋根に渡す。秋根はそ!を受け取りそっと読み取る。
秋根は読みながらうんうんとうなる。
頼むから正解で会ってくれ。
「惜しいわね」
「何だと?」
「他はいいんだけど、ここだけ証明になってない。これだと、分かっていないはずのことを過程として使ってるから」
そして、秋根が次々と俺の証明が間違っているという説明をされる。
正直言ってかなりきつい。もう秋根の口を閉じさせたいところだ。
「じゃあ、次はがんばってね。もし正解したら私の胸も揉んでもいいわよ」
「……誰が揉むか!! とも言えないのが辛いところだ」
しかも秋根自体コスプレ衣装を着ているしな。こんなにそそる胸はない。
とりあえず、秋根に変なことを言われないくらいのやる気を意識して解く。
だが、いくらやる気に満ち溢れているとはいえ、難しいことは難しい。何とか手探りで手掛かりを探していく
ん? 待てよこれ。
よく考えればさっきまでの問題より簡単だ。しかもこれは計算で簡単に導き出せる。
そしてペンをすらすらと走らせる俺に秋根は感動しているようだ。
「できた!!」
俺はそう叫び、秋根に解答を渡し、結果を待つ。
「……これは」
その秋根の頷きに俺は唾を飲んだ。
「合ってるのです」
「っやったー!!!」
嬉しさからばんざいした。もう脳が動くよりも先に腕が動いた。嬉しさでにやにやが止まらない。
「そんなに胸を揉みたかったのですか?」
「うるせえ、問題正解の方のにやにやだよ」
「ふふーん。なるほど。でも、ご褒美はご褒美だから胸は揉ませてあげるわね」
「……おう」
そして、秋根はその胸を俺に差し出してくる。そう、俺が胸を揉みやすいポーズでだ。
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