第37話 旧友

 帰省の最終日。俺たちは秋根が行きたいという場所に行く。

 昨日、秋根が「は、あれを忘れてたのです」と言ったのだ。

 その旨を聞くと、一つこの近くで行きたいところがあったとの事。

 せっかくなので、朝ご飯を食べた後、俺と秋根の二人で行くことにしたのだ。

 ちなみにどこに行くのか聞いたところ、何も教えてくれなかった。


「いやー。ここに来るのを忘れてたのです」


 そこは大きな一軒家だった。という事は誰かと会うのかな。


「お前、他に友達いたっけ」

「ええ、まあ学校の友達ではないのです」


 学校の友達じゃない?

 どういうことだ。

 秋根は疑問に思う俺を横目に秋根はインターフォンを押した。


 ピンポーン




 誰が出てくるのか予想すらできない。

 秋根と仲良かったやつ……本当に全く心当たりがないな。


「誰ですか?」


 そこには二〇代前半くらいだと思われる女性がいた。

 訝しげに秋根と俺を見ている彼女。

 秋根が家を間違えたが、秋根の変化に適応できてないだけなのか。


「私です、秋根です」

「秋根?」


 彼女はじっと明峰を見つめている。そしてじっと目を凝らしている。まるで品物を見定めするかのように。

 そして、しばらくたった後、「秋根ちゃんの知り合い?」


 そう、彼女は口にした。


それに秋根ががっくりとした後、慌てて説明をする。自身が秋根であるという証拠を見せながら。





「いや、ごめんね。変わってたから分からなかった」


そう言って、頭を下げる家主。


「いえいえ、私がかわいくなってのがいけないのです」

「これ、本当に秋根ちゃん?」


 そりゃ、疑うよなという話だ。何しろ、変化が激しすぎるのだから。

 陰キャからまさに陽キャへの変貌。

 初対面じゃ、同一人物とは思わない。

 ……今思ったらあの時の俺、受け入れるの早すぎるだろ。


「それで、あの後どうだったの? まるっきり見なくなったんだけど」

「私転校してました」

「転校してたの!?」


 それも知らなかったのか。

 秋根、本当に全員に内緒で転校したんだな。


「え、いつ?」

「五年前だから、小五の時です」


「なるほど……」


 信じられないといった顔だ。


「それで、こんな性格が変わってたの?」

「ええ。だって、前と同じじゃ、またいじめられるから」


 虐めの話は知ってるのか。


「それで、」俺は口を開く。「どういう関係なんだ?」


 そろそろ気になるところだ。何しろ、俺はこの人を全く知らない。俺は基本学校では別のクラスだったが、それ以外の時は結構一緒にいたはずだ。

 そんな俺が知らないというのも妙な話だ。


「それはね、近所のJKだよ」


 彼女が口を開いた。

 いや、JKという年齢じゃないと思うんだが。


「おっと、そう言えば自己紹介すらしてなかったや。私は白川瑞樹。秋根ちゃんと弾に遊んでた一般JKよ」


 一般JKってどういうことだ。JKに一般以外あるのか?


「今はOLやってるけどね。新卒で入った会社が若干ブラック気味で大変なのよ」

「そうなのですか?」

「ええ、だって毎日九時くらいまで会社に残らなきゃノルマが達成できないんだから」


 白川さんは白川さんで大変なんだな。


「それで、君は?」

「私の友達よ。遊星君! 十六歳!」

「そうなの……中学以降の友達?」

「いや、小学時代からの友達だ。まあ、転校してたから再開したのもここ数か月の話だけど」

「ふーん。友達じゃなくて、彼女でしょ」

「そうだな」


 そして、話を聞いていくと、秋根が小三の時に、初めて会って、それからたまに遊びに来てるらしい。

 そこで、俺にも言えないようなことを呟いていたらしい。

 という事はいじめは結構前から起こってたんだな。これは恥ずかしいことをした。

 そして、それから、修一くらいのペースで会っていたと。

 白川さん自身も、小さい子が好きらしく、癒しになってたという。それを聞いたらロリコンを疑ってしまうが、きっとそう言う事ではないのだろう。

 そして、連絡先もまともに知らない。小学生とJKの友情劇が始まったという。


 言葉にしてみたら犯罪集がするが、同性だからセーフか。


「それで、連絡先交換しましょう!」

「いいよー。てか、秋根ちゃん手に入れたんだ」

「ええ。だって今はこれが手放せないのですから」


 そう言ってスマホを天に掲げる。

 確かに今はネット社会。スマホがなかったらクラスからはみ出されてしまう。


「これがあれば、私は無敵なのです」

「そ、そう」


 白川さんが引いている。


「まあ、それは置いといて、これのおかげで中学時代垢ぬけることが出来たのですから」


 そこに、インスタのアカウントが見えた。


「おい、待て。お前インスタやってたのかよ」

「そう言えば言ってなかったのです。ほら」


 そこに、二万フォロワーのアカウントがあった。

 なんで俺はそれを知らなかったのかよ。


 一応俺もインスタをやっていないわけでは無い。ただ、周りに合わせて入れているだけで、ほとんど登校なんてしていない。


「それで、なんで教えてくれなかったんだ?」

「うーん。いう機会がなかったから、この際にって。それに最近動かしてなかったから言う必要ないなって」

「俺にも優子にも教えないってひどいぞ」

「ごめん」


 少なくとも三ケ月はあったはずなのに。


「まあそれは良いか」


 そう言って俺はインスタで秋根のアカウントを調べる。すると、秋根のアカウントが見えたのでフォローをする。


「あ、フォローしましたね。ずるいです。プライバシーの侵害なのです」

「いや、お前がアカウント見せてただろ」

「まあ、そうなのですけど、許可くらいとってほしいものです」

「じゃあ」


 一旦フォローを外し、


「フローしてもいいか?」


 そう、フォローボタンの上に手を置きながら言う。


「いいのです!!」


 良いのかい。

 俺は秋根のフォローボタンを押す。


「しかし、遊星君もフォロワーそこそこいるじゃないですか」

「いや、半分くらいスパムだよ。本当の意味でフォロワーと言えるのは中学時代の知り合いと、優子と、仁くらいかな」

「なるほどなのです。……優子ちゃんもやってるの?」

「ああ、」

「フォローするのです」


 そして、秋根は優ちゃんというアカウントをフォローした。


「それで話がそれたのです」


 そう言って秋根は白川さんとラインの交換をする。ついでに俺とも。

 そして、しばらく話していたが、


「てかそろそろ」


 もう、二時だ。そろそろ帰らなくては。

 元々四時にここを経つ予定だから、その最終準備をしなくてはいけない。


「というわけでそろそろ戻らないといけない」

「分かったわ。じゃあ、今度帰省するときにまたね」

「うん! 瑞樹さんも仕事頑張って!!」


 そして俺たちは家に戻った。


 そして最終の挨拶をすました後、電車に乗る。


「てか、優子もついてくるんだな」


 そのまま実家に戻るのかと思ってた。


「だって、私は秋根ちゃんといたいし。……あ、お兄ちゃんじゃないよ」

「うっせえ」

「まあでも、実家にいるよりも家にいる方が気楽だし」

「お前って、家族と嫌な思いっでもあんの?」

「ないけど」


 そう、軽い口調で言い放つ優子。


「だって、秋根ちゃんと遊ぶの楽しいからねー」

「俺は?」

「お兄ちゃんはそこそこ」


 おい、と突っ込みたくなる。

 相変わらず俺には優子のことがよくわからん。

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