第15話 アニメショップ

 俺たちは、外に出て、アニメショップへと向かった。俺がそこに行きたかったからというのもあったが、直接の理由は昨日ラノベの魅力に気づいた秋根がそこに行きたいと言ったのだ。


 そこにはアニメフィギュア、少年漫画コミックス、アクリルスタンド、アクセサリ、そしてラねべだ。秋根の目的はまさにこのラノベだそうで、じっくりとラノベコーナーを見る。


 そして秋根は早速買い物かごにラノベを数冊ずつ入れていく。そのせいか、すぐにかごに何十冊も入る事となった。


「お前、入れすぎだろ」


流石にツッコむ。もうすでにやばい量となっている。


「えーいいじゃん。だって、昨日二冊読んだじゃん。だったら一〇冊以上買わないと、すぐに読み終わっちゃうじゃん」

「そう言ってもなあ……俺の持ってるやつあるからいいだろ?」

「そう言っても遊星くん二〇冊くらいしか持ってないじゃん。だったら補充するのもいいでしょ?」

「補充って……」

「大丈夫! 遊星くんにも上げるから」

「あげるからって……そう言う問題か?」

「えー遊星くんも新しいの欲しいでしょ? 無料でもらえるなんて好条件だし、断る手はないと思うけどなあ」


 くそ、確かにそう言われたら止めることなどできない。


 そして秋根はさらにどんどんと入れていく。


 中を見ると、ラブコメだけではなく、異世界系の作品も入っている。俺つえー系や、悪役令嬢もの、追放もの、外れスキル物などなどだ。


 これはもう全ジャンル網羅しようとしているのか?

 と思ってしまう。あくまでも買うのは秋根の自由だし、秋根が言っていた通りむしろ俺にとって阻止しない方が得ではあるのだが。


 そして、見ているだけではあれなので、俺は俺でほしいものを探しに行く。


 これは秋根の付き添いなどではないし、俺が来たくて来たというのもあるのだ。


 とはいえ、フィギュアは先程大量に貰ったということもあり、物欲が無くなっている。


 んーせめて欲しいのはアクリルスタンドくらいか?

 とはいえ、あまり買うとお金も無くなってしまうんだよな。

 えーと……


 そして、悩んだ結果一つだけアクスタを入れた。一つだけなら予算的にも大丈夫だろう。


 そして今度はラノベコーナーへと戻る。


 お金のことを考えたら中古本店へと行けばいいのだが、最新刊などはここへと行かないと手に入らないのだ。


 そして、一冊最新刊が出ている本を手に、秋根の方へと向かう。


「これだけでいいの?」

「ああ」

「私みたいにドバーと買えばいいのに」

「そう言う訳にもいかねえだろ。それが出来るのは金持ちのお前だけだ」

「ふーん。私と同棲しているわけだから、遊星くんもお金持ちになってると思うんだけど」

「それどういうこと?」

「つまり、遊星くんが欲しいのは私が奢ってあげるってこと」


 なるほど。


「でも、それに乗っかるわけには行かない。だって、秋根に悪いし」

「私は全然気にしないよ。だって、遊星くんに貢ぎたいし」

「貢ぐってお前なあ。とにかく、俺はこれだけ買うから」

「遊星くん。その性格損するよ?」

「大丈夫だ、それは」


 そして秋根は最期に二冊本をかごに入れ、二人でレジに並ぶ。


 しかし、秋根のかごの中には相変わらず沢山の物が入っており、その量は俺が最後に見た時よりも遥かに増えている。


 普通にこれ一万円単位でかかるんじゃないか? 大金持ち羨ましい。


「今からでも私に奢られてもいいのよ」

「だめだ」


 俺がうらやましそうに見ていたのがばれたのか。

 だが、ヒモになんかなったら絶対金銭感覚バグる。それは嫌だ。


 むむむ、我慢だ。


 そして会計が始まる。秋根の持っているラノベのバーコードがどんどんと読み込まれ、そのたびにおよそ七九二円が追加されていく。


 そしてそれが何個、何十個も加算されていく。七九二、一五八四、二三七六、と言った感じで値段がどんどん増えていく。


 そして半分くらいタッチされた時点で、お金は八〇〇〇円を超えていた。これは、金銭感覚がおかしくなっていく。八〇〇〇円もあればゲームのカセット一つ買ってもおつりが出る。


 しかもすごいことにこれで全部ではない。恐るべきことだ。


「なあ、秋根」


 少し距離が離れているので少し大きめの声で言う。


「どうしたの?」

「お金大丈夫なのか?」

「ぜんぜーんダイジョブ」


 これで全然大丈夫と言えるのすげえな。流石秋根だ。

 そして、結果値段は2万二七三〇円だった。普通に高すぎておかしい。これは例えるとかなくても普通にえぐい。普通に学生には信じられない値段だ。


「なあ」

「ん?」

「怒られたりしないのか?」


 お金の使い過ぎとかで。


 もし俺が同じことをやったら、ほぼ確実に親に怒られてしまうだろう。


「大丈夫だよ。お金持ちだから。今の私の預金残高百万超えてるし。……遊星くんも素直に奢られたらよかったのに」

「いやそれはだめだ」


 そして俺の会計へと進む。二つで二一九二円だった。俺にしたらこれでもかなり買ったと言いたいくらいだ。

 ゲームセンターでも少しお金使ったしな。


 そして、袋詰めコーナーへと向かう。すると、秋根が必死に袋に入れていた。ほとんど本だからかさばるわけではなさそうだが、明らかに重くなる。……もしかして俺荷物持ちしなきゃならない?

 これは少し嫌だなあ。


 とはいえ、観てるだけではなんか嫌なので、秋根の手伝いをしていく。秋根にはシンプルに感謝された。


「じゃあ帰る?」


 店を出た直後に秋根がそう言った。今は五時半変えるには十分な時間だ。


「そうだな」

「まあ、できればカラオケとかも行きたいんだけどな」


 確かにこの娯楽施設にはカラオケやボーリングなどの娯楽施設がある。そこで遊びたいという気持ちがある。


「でもまだ今度だな。それは」

「うん……そうだね」


 そう秋根が名残惜しそうに言う。


「大丈夫だ。今度の土日にでも行こう」

「うん!!」


 そして俺たちは帰る。我らが家へと。


 そして案の定というかなんというか、結局俺が荷物を持つことになった。とんでもなく重かった。


 こんなに買った秋根を恨みたいくらいだ。

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