第20話 すごろく

 用意されたゲームは、パーティゲームのすごろくゲームモードだった。


 このゲームは単純なゲームだが、色々とアイテムがあり、そのアイテムを駆使したりできるほか、ミニゲームマスもあり、かなり人気なゲームだ。


 しかもこれに秋根のなのです口調縛りが追加されるのだから、面白いこと間違いなしだ。


「面白そうだな」

「うん!」

「おい、秋根」

「うんなのです」


 早速ぼろが出始めているが、大丈夫なのか?


「じゃあ、私このキャラね」

「じゃあ俺はこれ」

「私はこれ……なのです!!!」


 結構ギリだったな。


 ……ギリギリセーフと言ったところか。そして、ゲームが開始されていく。


 まず俺が先行でサイコロを振る。三だった。そのマス目通りに進む。すると、ゲーム内通貨が一〇枚貰えた。これでアイテムを買ったりできるという訳だ。


「じゃあ、次は私!」


 優子が振る。すると三だった。それを見て優子は「えぇ……」と明らかにいやそうな顔をする。兄と同じマスは嫌か、そうかよ!


 そして同じマスなので、決闘が始まる。同じマスになった人同士は戦わないといけないという事らしい。


 そして、ミニゲームの内容は、どんどんと立てる場所が少なくなる床の上で、相手よりも長く立っていたら勝ちという事だ。ちなみに押し合うのもありだ。


「遊星くん頑張って……なのです」


 そう、秋根が俺を応援する。やはりまだなのです言葉はぎこちない。


「私を応援してもいいのにさ。秋根」

「私は遊星くんの彼女ですから! なのです」


 まるで語尾に音符でもつきそうな言い方だ。そして俺は秋根の応援を力にして、優子に勝った。もちろん優子は負けて悔しそうな顔をしてた。

 そして勝利報酬として、優子の所持金の半分をもらい、優子に二マス後ろのマスに行ってもらった。


「次は私なのです!」


 そう言って秋根もサイコロを振る。そして出た目は六だった。


「やったのです!!」


 そして、秋根のコマが六マス目に進むさまを楽しそうに見ていた。

 ……秋根の語尾。まったく俺が慣れる気配がない。なんか、別の人になったみたいだ。

 秋根なのだが、秋根じゃないみたいな……。


 そして、数ターン進み、均衡状態を維持していた。俺と優子は一マス差で、秋根は俺よりも五マス先にいた。

 接戦の中相手が少しリードしてる局面だ。秋根はいいマス目が出るたびに「やったのです!」的なことをいうから正直軽くムカついてはきている。


 もしこれが「やった!」だけだったらそこまでムカつかないのだろうけど。


 このゲームは色々ややこしいゲームだが、結局は先にゴールした方が勝ちなのだ。

 いい加減秋根を抜かさなくてはならない。


 そして俺がすごろくをふると、五が出た。秋根との決闘だ。しかも中盤ということもあり、負けたときのペナルティがお金強奪プラス六マス戻るなのだ。もし勝てたら秋根にリードすることができる。


「遊星くん、勝負なのですっ!!」

「ああ。望むところだ」

「絶対に勝つのです!」


 とか言っている中、優子は大爆笑している。


「優子。何が面白いのですか?」

「やっぱりなれないってこれ」

「何が慣れないのです?」

「それよそれ」

「そんなに面白いのですか?」

「うん」

「おい! 秋根。もう始まるぞ」

「分かったのです!」


 そして決闘が始まる。今回は単純な戦いだ。ボタンを連打することで進むキャラをいち早くゴールまで運べと言った感じだ。つまり連打力が勝負のカギとなる。


「がんばるのです!!」


 ごめんやっぱ面白いわ。


 だが、秋根はがんばるのですと言った割には、思ったよりも連打力は低かった。そのおかげで、俺が悠々とゴールまで先に運ぶことが出来た。


「やった!」

「悔しいのです……次は負けないのです」


 そして今度は優子がサイコロを回す。すると一だった。

 今度は秋根と優子の戦いだ。

 決闘内容は再び連打力勝負だった。

 序盤、優子がリードを保っていた。これはまた秋根が負けることになるな、と思っていた。だが、途中で「むむむ! 負けないのです!! 私は負けられないのです!!」と言った時に流れが変わった。優子が爆笑してしまい、ボタンを押す手が緩んだのだ。


 そのせいで、秋根の逆転勝利を許した。


「やったのです!」

「ごめん秋根、殴らせて」

「なんでなのですか?」

「そう言うところ」


 そう言って優子は秋根を猫パンチで一〇発程度叩いた。

 まあ、気持ちは分かる。もはや番外戦術とでも思ってしまう。


 そしてゲーム自体はそのまま進んでいく。


 今度は俺が優子との決闘で負けたり、秋根がサイコロマス二倍アイテムを使ってリードを作ったり、秋根が決闘マスでボコられたりして、戦いは過熱していった。もはやカラオケの休憩中のゲームとは思えないくらい盛り上がっている。……その理由に秋根のなのです口調は絶対に入っているな。

 

 このゲームの中で、秋根はだんだんとなのです口調になれてきているようだった。ぎこちなさがなくなってきている。

もうなのです検定二級くらいは行きそうだ。……俺は何を言っているのだろうか。


 そして、すごろくも大分最後らへんになってきた。俺と秋根が一つ違いで並んでいて、ゴールまで後三マスのところにいて、優子は更に三マス遅れているという形になっている。だが、秋根には一発逆転アイテム、マス目二倍サイコロがある。まだまだ油断できない局面だ。

 ちなみにルールとして、同じターンに二人以上が同時にゴールした場合、サイコロ目のあまり数が多い方が勝ちとなる。つまりここから先は運ゲーだ。

 まず俺がサイコロを振る、すると五が出て、ゴールを果たした。


「むむむ、遊星くんが先にゴールしたのです。私も負けないのです!」


 そう言って秋根もサイコロを振る、すると五だった。


「お前」

「ふふふ、勝負なのです」


 そう、同率ゴールの場合は、出たサイコロの目で、順位が決まるのだ。


「私のことも忘れないでよ!」


 そう優子もサイコロを振る。マス目二倍サイコロだ。もしも五以上が出ると、優子の単独一位となってしまう。三以下が出ろ! そう祈る。


すると四が出た。二倍で八だ。


「ん? これ」


 俺の予感はすぐに当たった。三人が同じマスに来たのだ。


「えっちょっと!」

「まじか」

「戦いなのです!」


 そして最終勝負が始まる。その勝負内容は競争ゲームとなった。ルールはシンプル。だが、障害物が多い中それらを全部避けなければならない。その点で難易度は高いのだ。

 さて、秋根はゲーセンのキングカートはかなりうまかったが、今回はどうか。


「私、たぶん得意なので絶対に負けないのです!」


 そう手を握り拳にする。


「俺も負けないぜ」

「私も! 少なくともお兄ちゃんには負けないからね」

「望むところだ」


 そしてレースが始まる。

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