久しぶりに再会した小学時代の友達に「再会記念に付き合わない?」と言われた件について

有原優

第1話 再会

「ねえ、遊星くんだよね」


 今日もいつも通りの朝が来ると思っていた。家のドアを開ける前までは……だが、どうやら今日は違うようだ。

 目の前に美少女が立っていたのだ。


「誰ですか?」


 朝に見知らぬ人に話しかけられる。

 全く持って予想外の事だった。しかも相手は俺の名前を知っている。こんなに恐ろしいことはない。


「私よ私! 覚えていない?」


 いや、俺俺詐欺みたいに言われましてもと言いたい。まず、名前を言って欲しい。


「誰ですか?」


 名前を言わないのなら俺の返事も変わらない。


「私よ秋根、秋根よ」


 だから二回同じ言葉を続けさせるなというツッコミをしたくなったが……その前に秋根と言ったらあの子じゃないか?


「もしかして竜胆秋根?」


 小学生の時のクラスメイトで明菜と言ったらもう一人しかいない。竜胆秋根、俺の小学校のクラスメイトで元気な子だった。


「そう、やっとわかったか」


 なんで上から目線なんだとツッコミたいところだが……


「それで急にどうしたんだ?」


 そこをまず聞きたい。秋根とは小五の時の彼女の転校以来一回も会っていないのだ。それがなぜ今なのか。


「制服見たらわからない?」


 そう言って彼女の制服を見る。同じ学校の制服だ。


「不思議だよね。一年も同じ学校に通ってたのに、全然あなたがこの高校に通ってたのに気づかなかった。まああなたは私が目の前に来ても分からなかったらしいけど」

「それは言うな。見た目が変わりすぎなんだよ。てかお前は何組なんだ?」

「三組よ」

「三組か、俺は七組だな」

「そっか」

「てかそろそろ行かないとやばいんじゃないか」

「そうだね。走ってこー」

「ああ」



「しかし慣れないわ」


 走りながら話しかける。


「何が?」


 キョトンとした顔を見せる。


「五年ぶりだろ。なんか顔とか変わってるから」

「美人になった?」

「ああ、なってるとも」

「やったー!」


 そう喜んだ顔を見せてくれた。


 そんな感じで話していると、学校に着いたので、二年の階に来た時にわかれた。

 そして時間が経ち、昼休みになった。



「遊星くん! 遊びに来たよ!」


 その瞬間俺と話していた友達の長谷部仁がギョロリとドアの方を見る。


「誰だよ、遊星」


 そう、? が頭の中で沢山浮かんでいるような顔で訊かれた。実際俺はどちらかといえばインキャな事もあり、女子の友達なんていない。だからこそ不思議な顔をしているのだろう。


「俺の小学校の時の友達」

「お前、こんなかわいい女子と友達だったのか?」

「ああ」

「へー羨ましいわ」

「というわけで行くわ」


 そして俺はそんな仁を放って、秋根のもとに行く。


「さてと一緒にお弁当食べよう!」

「ああ」


 そしてお弁当を広げる。


「いやー楽しいですなあ」

「早すぎるだろ」


 まだ弁当を広げて三分も経っていない。


「いやーそうでもないよ。私、少し前から計画してたから」

「ん? 今日たまたま会ったとかじゃ無いのか?」

「だって、たまに見かけるんだもん。でも声かけるのが怖くて今日になったの」

「あー、俺気づかなかったからなあ」

「あれショックだったわー」

「すまん」


 まああの変化で気づけというのがおかしいけど。


「まあいいけど。私としては今ここに一緒にいられるだけで嬉しいから」

「そうか、そう思ってもらえるのは俺も嬉しいよ」

「ありがとう」

「ところで、お前どうして引っ越したんだ?」


 そう、小学生の時に秋根は友達の俺にすら何も言わずに引っ越したのだ。

 何年も不思議に思っていた。なぜ引っ越したのか。

 もしかしたら俺のせいだったんじゃないかと思う時もあった。


「ああ、私ねいじめられてたの」

「いじめられてた? どういうことだ」


 そんな話は聞いたことがない。


「遊星くんに言ってなかったけど、来夏ちゃんたちにいじめられてて、逃げるように転校したの」


 確かに、谷来夏と、秋根は相性悪そうには見えたが、まさかいじめられていたとは。


「なぜそれを俺に言ってくれなかったんだ?」


 俺がそれを知っていたら何かできたかもしれないのに。


「遊星くんにそんなことを知られるの嫌だったの」

「なら先生には?」

「それは……先生に言っても来夏ちゃんたちに、いじめてたのか? って訊くだけだったの。だから、いじめてない。その一言で終わりだった」

「それは……許せねえ。今来夏たちはどこに住んでるんだ?」

「あ、いやもう良いの。というかもう過去のことはいいの。今を楽しむから」

「そうか、ならご飯を楽しむか」

「うん!」


 そしてご飯をパクパクと食べていく。その間も会話は途切れる事もなく続いて行った……


「あの?」


 それはご飯を食べ終わってすぐのことだった。


「帰る前に一ついいかな」


 と、秋根が言ってきた。


「なんだ?」

「再会記念に付き合わない?」

「は?」


 急に言われたので驚いた。付き合わない? 再会記念に。意味を理解しようとしても何一つ理解が出来なかった。


「だって私たち異性でしょ」

「ああ」

「ここは高校でしょ」

「ああ」

「じゃあ付き合おう」


 んでだよ!


「いや、その過程がわけわからねえんだよ、なんで再会したら付き合うってことになるんだ」

「もう、物分かり悪いなあ。私みたいな美少女が付き合おうって言ってるのだから、素直に付き合いなさいよ。高校じゃあ彼女持ちもステータスでしょ」

「まさかお前はそれが欲しくてっていう事か?」


 その彼氏持ちと言うステータスを。


「そんなわけないじゃない。まあともかく、せっかくなら友達よりも彼氏彼女っていうわけよ」

「ならまあよくわかんねえけど付き合ってやるか」


 別に俺はこいつ秋根を嫌いなわけではないし、何よりこのままだと引き下がる気配が見えない。ここは折れてやるのが筋だろう。

 それにだ、俺には人と付き合うという行為に対して憧れという感情を持っていないわけではない。


「やったー!」

「やったとか言ってそんなに喜ぶな」

「じゃあさ! 早速映画館行こうよ!」

「なんで映画なんだ?」

「カップルで行くとなったら映画館しかないでしょ、しかも恋愛もの!」

「お前まさか、映画館に誘うために告白したんじゃねえだろうな」

「なわけないじゃない」

「だよな」


 まさかカップルイベントを消費したいから告白したわけじゃないよな。


「さてと、じゃあ放課後に門の前に集合ね」

「ああ、分かった」

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