第29話 テスト、そして海

 そしてそれからも毎日秋根はコスプレをして俺の勉強を見た。

 ある時はメイド、ある時は鎧(エロめの)、ある時は、プリンセスの衣装、ある時は制服と、多種多様なコスプレをしてきた。もしや、それが本当の狙いのように感じるほど。

 だが、実際、勉強の支えになっているのが困る。

 俺も、そういう事なんだなと感じた。


 そして、その結果。テストで平均六十八点を取るという快挙を成し遂げた。


「遊星お前すげえじゃん」


 そう、仁が言った。


「お前こそ数学八十六点だろ、すげえって言っても謙遜にしか聞こえないんだが」

「そう言われてもなあ。すごいと思っているのは事実だぜ。だって、お前前まで赤点ぎりぎりだったじゃん」

「まあ、それはそうだが」


 確かに実際俺は四十点ぎりぎりとは言わないが、数教科が四十点後半となっており、安全圏ではない点数だった。


「まあでもあいつには感謝しなきゃならんな」

「あいつって、竜胆さんのこと?」

「ああ、本当にありがたいな」


 そして、放課後。今日はテスト返しだけのため、授業が早く終わった。そのため、十二時半に校門前で待ち合わせだ。


「お待たせ、遊星くん」

「今日はお待たせと言うほど待っていないけど」

「そう、ならよかった。……そうだ! 遊星くん点数どうだった?」

「かなり点とれたよ。そう言う秋根は?」

「ふふふ、じゃーん!」


 そして、秋根が見せたテストには一〇〇の文字があった。しかもそれが世界史とかならまだ分かるのだろうが、それは数学Bの解答用紙だ。


「やっぱりお前は凄いな」

「でしょ? もっと褒めてくれてもいいのですよ」

「それは癪だ」

「えー。ほめてよ。僕、褒められるの好きだな」

「もっと褒めたくない」

「僕、褒められたいのです」

「キャラがおかしいから」


 そしてそんなくだらない話をしながら家に帰る。

 そして家に帰ると、


「じゃあ、着替えて出かけよう!」


 そう、大きな声で秋根が言った。


「今なんつった?」

「出かけるのですよ。海に」

「海に?」


 そして、成すがまま秋根に海に連れていかれえた。秋根曰く今日は水着とかなく、ただ、海でちゃぷちゃぷがしたいかららしい。

 そして、「本番の時は凄くエロい水着を着てくるから楽しみにしていて欲しいのです」と言われた。

 男子高校生が皆女子の水着に興味があると思うな。……悔しいことにあるのだが。


 そして海に着くと、秋根が手を差し出してきた。


「何だ?」

「手を繫ぐのですよ。手をつないで一緒に走るのです!」

「その行為に何の意味があるんだ?」

「楽しいという意味!」


 そのまま俺たちは手を繫いで砂浜を歩く。


「ねえ、遊星くん」

「何だ?」

「夏休みいろいろしたいよね」

「そうだな」

「まず一番は優子ちゃんに会いに行くことでしょ。それと遊星くんの良心にも会いたいしね」

「そうだな。……てか、秋根の両親は帰ってくる予定とかあるのか?」

「予定? うーん。分かんない」

「会えたら会いたいな」

「そうだね」


 そして、砂浜から海に入り、はだしで海水を堪能しながら、これからの予定を話し合うのであった。


 そして家に帰ると、一人の少女が家の前で待っていた。

 優子だ。


「なんでここにいるんだよ」

「お兄ちゃんこそ、何で出かけてるのよ。おかげで、家の前で1時間くらい待ってて、恥ずかしかったんだから」

「連絡位しろよ」

「また、サプライズだったの」


 全く、この妹は。報連相ほうれんそうを知らないのか。


「まあ、それは自業自得ってことでいいけど、もしかして優子も学校終わったのか?」

「うん。だからここにいる訳だし」

「つまりお前もここに暮らすってことか」


 また面倒くさいことになりそう。

 そんな俺の顔を見てか、「いいじゃない。優子ちゃんが来るの大歓迎だよ」と、秋根が言った。


 そして、今日もみんなでお風呂にはいったり寝たりした。


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