第13話 キングカート
放課後、俺たちは校門の前に集合した。秋根とは初日以降初のデートだ。とはいえ、俺たちはまだ出会って三日しか経ってはいないのだが。
そして今日も俺が先に校門前に着いた。秋根を待つ事五分。秋根が軽く「ハアハア」と言いながら来た。
「お待たせ、ごめんね遅れて。実は今日も告白されたから」
「秋塚?」
「ううん。野球部の坂下先輩」
「そうか……って、坂下誠?」
「うん。そうだよ」
確か、うちの学校の野球部のエースだ。四番でエース。プロからも注目されているという話を聞いたことがある。
確か、彼の力で甲子園ベスト八まで行けたらしい。
「それで……告白は受けたのか?」
「もちろん断ったよ」
「え!?」
「えって、何? 私信用されてないの?
「いや、でもすごい人なんだろ?」
「でも、私のタイプは遊星くんだけだから」
そう言って秋根は毎度のごとくハグしてこようとしてたので、俺はそれを躱わす。
「なんで!?」
「これ以上公衆の面前でイチャイチャさせるな」
「えー」
「それより早くゲームセンター行くぞ」
そう言って秋根の手をつかむ。
「はーい!」
そう元気に秋根が走ってついてくる。悪ぶれることもなく。
だが、そんなエリート? の人じゃなく、俺を選んでくれたというのはうれしい限りだ。
そして歩く事一〇分、近くのゲームセンターに着いた。ここは、主にゲームセンターを主にしている場所で、カラオケやボーリング場、アニメショップなども併設されている。……よし! あとで見に行くか。
だが、目的はあくまでもゲームセンター。まず、ここに向かった。そこには様々なゲームが置いてある。メダルゲーム、キングカート、格闘ゲーム、子ども用アニメのゲーム、クレーンゲームなどなど多種多様なゲームがある。その中で秋根が真っ先に無かったのは、キングカートだった。
「これで勝負しようよ」
そしてそう言った。だが、
「家にもあるからいいだろ?」
つーか一緒にやったし。
「これは、家のやつとは違うじゃん」
「……まあそうだけど」
「いいじゃん!」
別にやりたくないわけでもないしな。そう言う訳で一緒にやることにした。
ルールとしては主に家庭用とほぼ一緒だ。だが、少しだけ違うところもある。それは……家庭用よりも難しいという事だ。理由は単純、車のハンドルが、本物のハンドルみたいに軽く重いのだ。それくらいなら普通はあまり変わらない。ただ、俺たちはまだ
そしていろいろと車の性能を決める。俺は加速の高いキャラにした。何しろ難しい分、加速が低くスピードが速いキャラだとミスのリカバリーが聞かないのだ。
ただ、秋根はのんびりと、最速最低加速のキャラを選んだ。
これは今日も俺の勝ちか?
悪いが今日は「そのキャラで本当にいいのか?」なんて言わない。真剣勝負っだからだ。
そしてレースが始まる。
まず、秋根が上手く車お動かして前に出た。すると、壁に当たるか当たらないかというところを上手く走って、早く恥りぬけた。確かに選ばれたコースは障害物が少ないコース。しかも、秋根はこのゲームセンターのキングカートに適応してる。……まさか家のやつよりもこちらの方が秋根にとってやりやすいとでも申すのか?
しかもこのゲームのアイテムは一発逆転系のアイテムがほぼない。つまり、テクニックでしか勝負できない。ただ、一〇〇の走りをお互いやってたらこっちが追い抜くことはほぼ出来ない。
となれば秋根のミスを頼むしかない。ただ、……直線とか多いからミスの可能性が低いんだよな。
「あれ、私遊星くんに勝てちゃう?」
「……」
うるせえ。
「まだ負けてねえよ」
カツには多少リスクを取らないといけない。そこでインコース攻めで少しでも早くする。インコース攻め、それはミスの可能性が高くなる。だが、この車は小回りが利きやすい。ミスする可能性も低いだろう。
そして、上手く距離を詰めていく。だが、最高速を維持している秋根には追いつく気配がない。
だが、信じれば勝てる。そう信じ、走っていく。
すると、秋根が壁にぶつかって「あ!」と言う。その瞬間秋根の車は急激にスピードを失う。
今だ!
俺はそう思い、追撃として秋根に妨害アイテムを投げかける。
「あ、ちょっと遊星くん」
そう秋根が言うが、もう遅い。そのすきに俺は秋根からだいぶ距離を取って、リードを広げまくる。
一方秋根はスピードが最高速に乗り切らないようだ・
そしてそのままゴールした。
「ああ! 悔しいいいいいい」
そう、秋根は叫ぶ。周りに迷惑をかけない程度の声量で。まあ、あと少しで俺に勝てそうだったから悔しいだろうな。だが、今日は本当にやばかった。まじで負けるかと思った。
「あのワンミスさえなければ勝ってたのに……」
頭を抱える秋根。正直かわいい。
「ねえ、遊星くん! もう一回しよ?」
「いや、だめだろ。お金がもったいない」
「もったいなくないよ。私がお金を出すからお願い」
「ええー、勝って終わりたいんだが」
「それは私も同じ! だからお願い。もう一回しよ?」
「うーん。やだ」
「やろうよ! お願いします!」
「嫌だ!」
「おーねーがーい!!!」
そう言った秋根は思い切り俺の腕を引っ張る。再び俺の体をゲーム機に再び持って行こうとして。
そしてそんな問答が数回続いたところで俺は諦めた。結局俺は秋根のお願いを断ることができないのか……
そして次のゲームではあっさりと負けた。まあ俺のモチベーションと秋根のそれとの違いだろう。
秋根が「いやったああああああああ」と叫んでいるのをうぜえと思いながら聞くのであった。
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