第44話 花火
そしてしばらく楽しむも、少し気がかりな事がある。
それは、朱音ちゃんの事だ。
彼女は一歩引いてしまっている感じがする。
その原因は明確だ。
俺たちの輪に入れていない。
優子がいるとはいえ、俺と秋根と優子は結構仲が良く、また俺と秋根はほとんど朱音ちゃんと喋ったことは無い。
というよりも、秋根の方にそんな気遣いなんてできていないが正解だろうか。
先程も、秋根と喋れるように促したつもりだったが、その肝心の秋根が俺にしか俺中心の人物なせいで、すぐに俺のもとに行こうとする。
じゃあ、優子と二人きりにさせたらいいと思うが、それも難しい。
何しろ優子が俺たちの輪に入ってしまうからだ。
最悪優子と朱音ちゃん、俺と秋根のコンビに名tぅたらいいと思うが、その場合仲良くなることなんてできないし。
ああくそ、いい解決策が思いつかない。
どうしたらいいんだよ。
「遊星くん、何か困り事?」
「ああ、そうだ」
もう言っちゃおうか。
「朱音ちゃんが俺たちの輪に愛れていないような感じがするんだ。何解決策とかはないか?」
「うーん、どうしようか。じゃあ、私が話しかけまくります」
「おう」
いきなり俺が思っていた解決策を言ってくれた。
助かる。
問題は秋根が上手くやれるのか心配だ。
しかし、秋根は秋根で、今のコミュ力は俺よりもはるかにあるはずだ。
さて、お手並み拝見と行こうか。
「ねえ、そのメイクどうしたの? どこのやつ使ってるの?」
「えっと、化粧水で整えて、唇にも軽くこれ塗ってます」
「おお、なるほどね。眼鏡はコンタクトなの?」
「はい、少し怖かったですけど、頑張りました」
これならひとまずは大丈夫そうか。
「お兄ちゃんやるねえ」
「これは秋根のおかげだろ。俺はただ、促しただけだ」
「でも、秋根ちゃんって不器用な不器用なところがあるでしょ? だから大丈夫かなって」
「でも大丈夫だったわけだ」
「秋根ちゃんを見くびりすぎてたね」
「そうだな。というかそもそもあいつはいつまでも昔の昔のあいつとして見てたらいけないしな」
今はコミュ強だし。
「それ言えてるね」
「そうだな」
いつもは気を付けているつもりだが、今日は秋根の成長を無視した感じになってたかもしれない。
ただ、
「あいつは成長しているが、俺と再会したことで、変に子供っぽいところはあるけどな」
「それは言えてる。お兄ちゃんがラノベの道に引きずり込んでたし」
「まあな、それでなのです口調になったしな」
秋根と一緒にいて本当に色々と変わったな。
「というかそろそろ花火の時間じゃない?」
「確かにそうだな」
そろそろ移動しなければ。
くそ、話し込みすぎて気付かなかった。
「おーい、そろそろ花火に行くぞ」
「え、もうこんな時間? 朱音ちゃんと話してて築かなかった」
それを聞いた朱音ちゃんは心なしか嬉しそうだった。
そしてその後、俺たちは花火を見るために中心部に向かう。
だが、人が明らかに多い。
コミケレベルで人が多い。
こうなってしまったら歩くのでさえ大変だ。
これじゃあ、中心部はとんでもないことになってるだろうな。今からでも億劫だ。
歩いていくと、川沿いに出た。
人が多いが、一応スペースが軽くある。
ここが一番見やすいポイントだろう。
そこに入ると、軽く息を整える。
そして、買っておいたソーセージやポテト等々をみんなでつまみながらその時を待つ。
「そう言えば、朱音ちゃんに訊きたいんだが」
「どうしたの?」
「学校での優子のエピソードをもう少し聞きたい」
あの日は正直あまり聞けてはいなかった。
ほとんどさわりだけと言っても過言ではないだろう。
俺にはその先が気になるのだ。
「えっと、効きたいですか?」
「ちょっと、朱音。それ以上は許さないわよ」
優子が顔を真っ赤にして止めようとしている。
「じゃあ、言います」
「ちょっと」
優子が朱音ちゃんの口を塞ぎに行く。
「私も聞きたいのです」
「秋根ちゃんまで!?」
「いいじゃん。聞かせてよ」
「むむむう、なんでよ。だったら私も二人のことを暴露するからね」
「私は別に構わないのです」
「うぅ。悔しい」
優子はその場にへたり込む。
どうやらもう諦めたようだ。
「学校での優子ちゃんエピソード行きまーす!!!」
その言葉に優子は向こうを向いて、耳を塞いでしまった。
そして、「これはいじめよ……いじめ……」と呟いている。
若干申し訳なさはあるが、それよりも話を聞きたいという気持ちの方が勝っている。
悪いな優子。
「まずこれ言っちゃおうか」
それにしてもテンション高くなったな。
「優子ちゃんはね、学校で常にドキドキシーンを探してるの。例えばね、この前クラスの植木誠君が笹原瑞樹ちゃんの荷物が重いとき、さらっと持って、「運んでやるよ」と言った時に、優子ちゃんがハイテンションで「これ、もう少女マンガじゃない????」と大興奮した時とか、クラスメイトの結城恵奈ちゃんの席が昼ご飯時に取られていて、困ってるときに、植木誠君が、「この子、困ってるだろ」と言って席を占領していた子をどかした時とか大興奮してたね」
「うわあああああああ、やめてええええええ。私はせめて、影薄くありたかったの。個性出したくなかったの。だって、秋根ちゃんもお兄ちゃんも結構濃くなってるし。その中で私は普通でありたかったの」
「大丈夫よ。すでに優子ちゃんは変人だから」
「止め指さないで、朱音ちゃん……」
優子面白い。
ん、つーか。何気に俺も変人扱いされてね?
俺は秋根とかに比べたらそこまで変人じゃない気がするんだが。
「それとか」
「はいっ、ストップ。もうその話終了。もう間もなく花火が揚がるからさ」
「そうだな。……優子、カップルみたいに手を繋ごうか?」
「お兄ちゃんと手をつなぐなんて嫌。……てか、早速ネタにしてるじゃん。もうなんで!?!?!? それに、私が好きなのはカップルするよりもカップルを見る方なの」
「じゃあ、俺たち見てて楽しいんじゃん」
「いや、イチャイチャが過度過ぎてみていられない。こんなの恋愛じゃない」
「なんだよそれ」
意味が分からない。
俺たちがしていたのは恋愛じゃなかったのか。
「それにね、私は恋愛漫画は付き合うまでが一番いいと思ってるの。付き合った後は、正直蛇足よ。告白―んが最終回一話前あたりで来て、最終回はその後談でいいとおもっえtる」
「思想過激過ぎるだろ」
全く。この妹は。
その瞬間花火が打ち上がった。
「うわあ綺麗」朱音が言う。
「だな。綺麗だ」
「綺麗なのです」
そして俺は秋根に手を伸ばす。
その後もバチバチバチバチと、花火がどんどんと打ちあがっていく。
正直業火だ。
人並みの感想ではあるが、空の芸術という感じだ。
何だろうか、真っ暗なキャンパスにどんどん色が塗られて消えてを繰り返している。
とにかくきれいだ。
「なあ、秋根」
「なに?」
「みんなでここに来れてよかったよ」
「それはこちらのセリフでもあるのです」
そんな興奮も止まぬまま花火は打ちあがり続け。ついに花火が終わった。
「はあ、すごかったな」
「はい、すごかっです!!」
朱音ちゃんが笑顔でそう返す。
「花火っていいものだなあ」
「そうね。あまり二人がいちゃついてなかったし」
「うるせ、いちゃつき過ぎたら悪いのかよ」
そこから帰り道優子がうるさかったのは言うまでもない。
俺たちのエピソードも朱音ちゃんに暴露されたし。
ただ、朱音ちゃんが楽しそうだったからいいのだが。
久しぶりに再会した小学時代の友達に「再会記念に付き合わない?」と言われた件について 有原優 @yurihara12
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