第6話 同棲
そして、放課後、いつものように秋根に愛に行こうとした。すると、「ちょっといいか?」と、一人の男子生徒に声をかけられた。
顔は知らないからおそらく別のクラスの生徒だろう。何の用か分からないが、もしかしたら
そして、少しだけビビりながらついて行く。すると、
「俺の秋根ちゃんを返せ!!」
と、そう迫真の顔で言われた。
「……いや、返せと言われても」
別に俺は奪ったわけじゃないし、そもそも秋根は誰のものでもない。
「俺はずっと好きだったんだよ。振られても振られても告白し続けたんだ。なのになんでぽっと出のお前が秋根ちゃんの彼氏になるんだ」
「ちょ、ちょっと落ち着け!」
「落ち着いてるよ!」
どう見ても落ち着いているようには見えないんだが。さて、それはさておき、どう対処するか。この漢字見てるとどう考えても秋根に良くは思われてなさそうな感じがする。……もしやこいつ厄介オタクタイプか?
「じゃあ、解決のためにここに秋根呼ぶ?」
「なんでそうなるんだよ! 俺は君と話してるの!」
「いや、俺は君のこと知らないし、あき……」
「俺は
クッソ早口。いや、それはいいんだけど、こいつ人の話聞けないタイプか?
まあ、とりあえず、
「じゃあ、俺はこれで」
そう言って、階段の方へと向かって全速力でダッシュした。
厄介なやつに絡まれたら逃げる。それだけだ。こういうタイプは、話に付き合えば付き合うほど、厄介になると決まっている。
「あ、待て!」
そう言われたけども、待てと言われて待つわけがない。
そして何とか振り切り、校門のへとたどり着いた。
「はあはあ、はあはあ、お待たせ」
そう、汗だくになりながら秋根にそう、告げる。
「うん。……って、どうしたの? 汗だくみたいだけど」
「これは、厄介なやつに絡まれたから」
「……それってもしかして秋塚くん」
「ああ」
知ってるのか。
「ごめんね、私もあいつにはうんざりしてる」
「いや、お前は悪くないだろ」
「ううん、これは私が招いたことだし」
「……そう言われたらなんとなくむかつくけど」
「なんで!?」
「だって、無自覚美人みたいじゃん」
「むう、そんなことを言う遊星くん嫌い!」
そう言って秋根は顔を俺の反対方向にプイっとやった。
「悪かったって」
そう謝ると、「いいよ!」と言って、秋根は俺の手をつかんできた。全く現金なやつめ。
「それでね、一ついい?」
「なんだ?」
「私たち同棲してみない?」
「はあ?」
いきなりぶっ飛んだことを言われ俺の頭はその状況を瞬時には把握できなかった。
それは当たり前だと思う。何しろいきなりこんなことを言われてしまったのだから。
「お前の両親は?」
「私の両親、そもそも今日本にいないよ」
「え? そんなこと言ってたか?」
「いってたじゃん、今日親いないって」
「え、あれそう言うこと?」
今日だけの話とかじゃないの?
「だからさ、同棲しよ」
「いや、そうは言われても、親がなんて言うか」
「知ってるよ、遊星くんが一人暮らしな事。……だから、お金の節約とかで許してもらえるんじゃない?」
「うぐ、確かに。だけどさ、別に同棲する必要はなくないか? だって一人暮らしするのも楽しいし」
「え? 私は遊星くんと一緒に暮らしたほうが楽しいけど。それに、そんなことを言うってことは……私のこと嫌いなんだ」
「いや、そうじゃねえよ」
論理を飛躍させすぎだろ。
「まあ、とりあえず、同棲しましょ?」
「ああ、分かった」
別に
そして、そのまま母親に向けて電話をする。
『あ、もしもし? お母さん』
『ん? 急にどうしたの?』
『いや、ちょっとお願いしたいことがあって……』
いや、よく考えたら年頃の息子をいくら知っている人ととは言え、同棲させるか? 俺だったらそんなことできない。一夜の過ちが起きるかもしれないし、男女と言う関係上、様々なトラブルが起きるかもしれない。そう思うと、そこからの言葉が出なくなった。
『どうしたの?』
お母さんから心配の声をかけられる。言うのもあれだし……
「遊星くんちょっといい?」
そう言った秋根によって電話が奪われる。
『あ、もしもし光枝さん。私、秋根なんですけど。…………あ、そうです。あの秋根です。数年前遊星くんと友達だった。それで、一ついいですか? 私達、同棲したいんですけど。え? 同棲って、あの同棲です。一緒に過ごすという意味の。……だめでしょうか、別に遊星くんを襲おうとなんて思ってませんから。それにそうしたら遊星くんが今住んでいるマンションも解約出来てお金が安くすむと思うんです。あ、広さですか? 私の今の部屋大きいので全然大丈夫ですよ。あ、いいんですか!? じゃあ、そう言うことで、よろしくお願いします』
「ということで交渉成立したよ。同棲してもいいんだって!」
え? もう成立した? 俺、状況全くつかめてないんだけど。
だが、流石は秋根だ。華麗に? 交渉成立させたらしい。しかし、うちのお母さんもうちのお母さんだ。もしかしての可能性を考えないのか?
まあ、とりあえず、これで秋根と二人暮らしすることが確定した。……いくら秋根とは言え、緊張するなあ。
「さて、運ぼ?」
「いや、流石にきついだろ」
「うーん、確かにそうだね。じゃあ、それは後で引っ越し業者に頼むとして、今は生活必需品だけ持って行こ?」
「だな」
そして俺の家に向かう。
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