第35話 ゲーセン
翌日は墓参りだ。
俺と母さん、父さん、優子、秋根の五人で向かう。
俺たちは夏に毎回言っているが、秋根にとっては初めてだ。
当然、じいちゃん以外には会ったことがないんだから。
墓へは、父さんの車で向かう。
「車乗るの久しぶりな気がするのです」
そう、秋根が上機嫌で言った。
本来、一人暮らしの高校生にとって車に乗る機会なんてほとんどないのだ。
とはいえ、車に乗る距離はそこまで長くない。
いうて、三十分以内で着くのだ。
だが、秋根はそんな車内で俺に肩をくっつけてきた。
いつもは徒歩通学だからこういうのもない。秋根も、だからこそ揺られる車の中で俺にもたれかかってるのだろう。
……というか、これ寝てない?
秋根がよだれを垂らしている。
「お兄ちゃんと秋根、いちゃいちゃしない!」
しかも、優子にそう言われた。
「いちゃいちゃしてねえよ!」
そう、秋根が起きない程度の小声で言った。
「着いた!!」
車が目的地に着き、「目的地周辺です。経路案内を終了します」というナビの機械音声が終わったあと、秋根が元気よく言った。
「寝てたじゃねえか……」
「寝てないのです。あれは、目をつぶってただけ。実際、優子がいちゃいちゃするなと言ってたのは聞こえてたから」
「なるほど……」
そこが聞こえてたら、寝てはなかったのか?
まあ、そこまで突っ込むことでは無い。
とりあえず父さんがバケツを用意してたからそれをもらい、秋根と二人で運ぶ。
ただ、秋根に半分持ってもらってる形にはなっている。
秋根の方が筋力が多いから仕方ないことではあるけど。
そして、墓につき、静かにそこで線香を供えたり、水をかけたりする。
俺もおじいちゃんのことは好きだった。手を合わせ、おじいちゃんに色々と伝える。秋根と再会したことや、亜kねと一緒にした様々なことを伝える。
そんな時、ふと秋根は何を歌えてるのかなと、雑念がよぎる。
隣をイラっと見ると、集中しているようだった。それを見ると、雑念をはらんでいることが恥ずかしく思ってしまった。
再び目をつぶった。
「遊星くん。色々と伝えられたのです!」
そう、お墓参りが終わり、車に戻る際に、秋根が言った。
「それはよかったな」
「うん!」
そう、元気で言った。
そして墓参りが終わった後、今日は優子を連れて三人で散歩をする。
だが、今日は少しだけ趣向を変える。そう、ゲームセンターだ。
そのゲームセンターは俺たちが昔一緒に遊んでた場所でもある。
そのゲームセンターは秋根の家の近くにあるものとほぼ同じだ。だが、少しだけ違う部分もある。
ゲームの内容が全体的に古い部分があるという事だ。
例えば期間ごとに新しいマシンが導入されるゲーム。例えば国民的アニメのゲーム機。
それはとあるキャラの戦力を模したカードを使いやっていくのだが、そのカードとゲームは定期的に新しいシリーズになり、システムが少し変わり、旧世代のカードが使えなくなるのだ。それに伴い機会も変わるので、旧世代のマシーンは消えるはずだが……
ここはもう全国のゲームセンターで使われていないような旧世代のマシーンをまだおいているのだ。
「あ、これまだあるのですか」
秋根がとある機会を指さす。それは三年前に新シリーズのゲームに変わったはずのゲームだ。
「あ、でも持ってない……」
「あるぞ」
俺はそのカードを手渡す。
萬次、戦力三六〇〇のカード、当時は結構な最強カードとして君臨していた。
「やります」
そう言って秋根は一〇〇円を投入してゲームを開始する。
そして画面に筋肉ムキムキの男が現れる。
そして、ボタンで技を選択し、その技を放つのだ。
そしてその技はボタンを連打するほど強くなる。
このゲームは新世代に入るとともに、連打ではなく、線をなぞる事で技を放つようになったりなどの変化が加えられていた。つまり秋根にとっても連打は懐かしいところだろう。
「楽しい! 遊星君」
秋根もご満悦のようだ。
「見て、倒したよ!」
「ああ、そうだな」
「ねえお兄ちゃん。秋根ってあんなにゲームにはまってたっけ」
「五年前もやってなかったか? 秋根あれで一〇〇〇円とか使ってたし」
ゲームセンターのゲームの前で一時間くらいパタッと動いてなかったし。
そう考えれば秋根にはオタクの才能がもうすでにあったということなのか。
秋根の家の近くのゲームセンターでこういうゲームをやってなかったのは、メダルゲームというここになかった未知なるものがあったからという事だな。
そして、秋根はゲームセンターのすべてのゲームをやり尽くさんとする勢いですべてのゲームにお金を投入していく。
ああ。いろいろ持ってきててよかった。
そしていよいよすべてのゲームをし終わった後、最後に残ったゲームに秋根はのめりこむ。それは秋根が好きだったゲームだ。
一ゲーム終わった後に、
「お前いつもやってたよな」
「そうだっけ?」
「それが一番好きだったじゃねえか。一時間くらいじっと夢中でやってたし」
「そうだっけ」
覚えていないらしい。
「そういえばさ、これ二人協力型だったよね」
ん?
「遊星君も一緒にやろうよ!」
そう言って椅子をパンと叩く秋根。
「私もやりたい!」
背後にいた優子がそう呟く。
「じゃあ、三人で交互にやろうよ」
その秋根の発言が優子にも受け入れられ、三人で交互にやり合う。
そしてそんなこんなで遊んでいたらもう五時になっていた。
「じゃあ、そろそろ帰るか」
「そうだね」
「そうね」
そして俺たちはゲームセンターを出た。
「え?」
秋根が突如止まる。俺は「どうしたんだよ急に」とぼやくが、すぐにその意味が分かった。驚きの表情を見せる秋根の前には北野来夏がいたのだ。
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