第3話 お風呂
「ここが新しい私の家です!」
そこにあったのはそこそこ大きい家だった。
「ここに引っ越していたのか」
「そうよ。大きいでしょ」
そして家の中に入っていく。
「うわあ、でかいな」
「引っ越した理由のもう一つがお父さんの事業が成功したからもあるからね。新生活を送ろうかなっていう目論見もあったわけなのです」
「言ってくれよ、それは」
「だってもういじめられててどうしようもなかったから」
「そうか、てかマジで大きいな」
観た感じ俺の家の二倍はありそうな家だ。少し羨ましくも感じる。
「ここに住んでもいいんだよ」
「同棲?」
「そう」
「早過ぎるだろ、それは」
「さてと、早速一緒にお風呂に入ろう!」
「はい?」
確かに一緒にお風呂入るシーンがあった。だが、本当に実行するのか?
「それは違うだろ。流石に全部はやらなくていいんだぞ」
「私がやりたいの」
「お前のことまともな目で見れなくなるぞ」
「いいよ、エロい目で見てくれても」
「俺が困るんだよ」
てか、秋根はそれでいいのか?
「だったらもう入る気にさせてあげる」
そして秋根は制服のブラザーのボタンを一つずつ取っていく。こいつ、完全に脱ぐ気だ。完全に裸体になるつもりだ。
「お前やめろ」
「やめません」
俺の必死の制止もむなしく、秋根の服はどんどんと脱がれていく。そして完全な裸体が姿を現した。
「何を考えてるんだ本当に」
目を必死に閉じながら言う。
「大丈夫! 遊星くんがお風呂に入ったら大丈夫だから」
そう言う問題じゃねえ。
「てかお風呂炊けてないだろ」
だってさっき帰ったばかりだし。
「今の時代スマホで出来るの」
「計算済みかよ。分かったよ」
そして俺もまた服を脱ぐ。これだけ見たらどっかのエロ漫画サイトの広告に出て来てもおかしくないな。
「遊星くん髪の毛洗ってあげる」
「おう、ありがとう」
「よーしよしよし」
と髪の毛を洗ってもらう。気持ちいい。髪を洗ってもらうこと自体は嫌じゃないし、よくよく考えたら一緒にお風呂入るのなんて何にも恥ずかしいことはない。ただ、目のやり場に多少困るだけだ。
「気持ちいい?」
「ああ、気持ちいいよ」
それは当然なので、嘘偽りのない言葉だ。
「えへへ、それは良かった」
思えば小学生の時は当然ながらこういうようなことはしてこなかった。いや、する方がおかしいけどな。小学生の時の秋根だったら、そんなことをする勇気などどこにも無かっただろうのに。
「かわいいねえ、雄星くん」
そう言って、背中をさすられる。
「何をするんだよ!」
「よしよししただけだよ」
「いや、セリフやセリフ」
「いいじゃない。私なりの愛をあげてるの、感謝してよ」
「愛をあげるってなんだよ」
「愛が足りないとかよく言うでしょ。なんか虐待とか」
「言うか? それ」
「別に揚げ足取らなくても良いじゃん。えい!」
と、今度は頭をわしゃわしゃされる。
「俺はガキか?」
「ガキだね」
「やめろよ!」
とは言うものの体を直視できないと言うハンデから上手く抵抗ができない。
「秋根?」
「なんです?」
「もう上がって良いか?」
「後一時間!」
「のぼせるって」
といってい無理矢理外に出ようとしたが、速攻で止められる。
「私の許可無く外に出るのはダメ!」
「なんでたよ。ほんま」
「楽しみもうよ! 遊星くん」
そう言って、後ろから優しく抱きしめられる。背中には柔らかい感触がある。
「これするのが、夢だったんだー」
「そう.……なのか?」
「うん。抱きしめたかった。寂しかったよ、遊星くん」
「ならなぜ会いに来なかったんだ?」
「……言いたくない」
「ならいいけど」
そして俺たちは、そのままお風呂で二人で五いろいろとしゃべった。その間当然お風呂から無理やり脱獄しようとしたが、全部秋根に止められた。のぼせてたというのに。
そして結局三十分はお風呂に浸かっていた。……一時間よりはましだな。
「気持ち良かったねお風呂」
そして上がった後、秋根が笑顔で言った。
「俺は少しお前のことが嫌いになったけどな」
「なんで?」
「考えたら分かるだろ」
あんだけ風呂に入らされたらな! 俺は早風呂派なんだよ!
「ふーん。まあいいや。次はこれよ!」
と、コントローラーを持たされた。話聞けよ! てか、
「何をするつもりだ?」
「普通にゲームよ」
びびった、まさかまた変なことするんじゃねえだろうなって思ってたぜ。
「分かった。やろう!」
と、コントローラーを受け取りゲームをする。
カートレースだ。またエッチな感じのことをするのかと思っていたから少し意外だ。だが、変にベッドに連れていかれるよりかは一〇〇倍良い。
「さてと行くわよ!」
と、秋根がコースを選ぶ。
「そう言えばお前ってこのゲームどれくらいできんの?」
「私? そうねえまあ普通以上には」
「何だよその答えは。わかりやすく言えよ」
「そんなこと言われたってさあ……難しいよ」
「難しいって言われてもさ、実力がどん何なのか知りたいんだよ」
「うーん、NPC相手にギリギリ一位取れるレベルかな」
「ならおんなじくらいか」
「だね」
そしてレースが始まる。
「負けないよ」
「ああ、同じく」
負けられない戦いだ。なんとなくこいつに負けるのはプライドが許さない。勝たないとだ。
「行くよー!」
と、レースが開始される。俺がまず最初にスタートダッシュに成功し、距離をつけるが、明菜もすぐに追いついていく。
「やるなあ」
「まあね」
と、もうNPCたちを追い越して一位二位争いになった。
「私ねえ……」
「何だ?」
「これが夢だったんだよ。遊星くんとやるの」
「そういや、小学生の時はゲームとかやったことなかったな」
「まあ、こんなには仲良くはなかったしね。まあ今はこんなに仲いいけどね」
と、秋根は俺にもたれかかってくる。
「ちょっ、お前妨害工作かよ」
「えへへ、どうかなあ」
「そう言うのは良くないぞ。実力で勝たないとダメだろ」
「別に妨害工作じゃないよ、私はただ遊星くんにもたれたいだけですからあ」
「もっと心配だわ」
「そんなこと言って、画面に集中しないとだめよ」
「分かってるって」
と言いながらハンドルを左に曲げる。
「落ちたらよかったのに」
「お前悪いな」
「だって仕方ないじゃん。私だって勝ちたいし」
「へえへえそうですか」
そしてレースは三週目……最終週に入った。
「このまま逃げ切ってやる」
「それはどうかなあ」
「いや、逃げ切って見せる」
と、さらにスピードを上げる。
「そう簡単にいくのかな?」
と、秋根も落ちていたアイテムを取り、急加速をして俺の車に近づく。
「さすがにそう簡単には逃げられないな」
やばいな、後ろにつけられている。怖い。
「これはどうかな?」
と、インコースの崖ギリギリでドリフトをする。
「ついていけますよ、どこまでも」
と、秋根も俺の車を追い、ギリギリを成功させる。
「お前、NPC相手にギリギリ勝てるの嘘じゃね?」
「遊星君もじゃない」
「大丈夫だ。俺はじゃあお前と一緒くらいだなと言っただけだ。俺は嘘をついた訳じゃない」
「屁理屈言わないでよ」
「それよりもそろそろレース終わるぞ、そろそろ追い上げなくていいのか?」
実際もう三分の一位しか残ってない。
「大丈夫、これがフルだから」
「だったら俺に勝てねえだろ」
「勝つよ!」
そしてそのままレースが終わった。
「勝てなかったじゃん」
「勝つつもりだったの。仕方ないじゃん。上手いんだから」
「俺がか?」
「それ以外ある?」
「無いけどさあ、俺はオンライン対戦だったらボロ負けだぞ」
「話をすり替えてるじゃん。私は最後までミスらなかった遊星君が上手いって言っただけだし」
「そうか」
「さて、そんな話は置いといてもう一試合やろ!」
「そうだな」
そして結局秋根が勝つまで四試合ほどやる羽目になった。
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