第33話・なんでまた呼び出されるんだよ!

 恐獣の広場ジュラック・エリアスの第三層・ボスエリアで鍛錬&連携の練習をみっちりやった四月十一日次の日

 今日は月曜日なのでアイシアと共に黒鉄学園へ登校したが……。

 なぜか教室ではなく風紀部隊の詰め所がある、無駄にデカいクランハウスに連れてこられた。


「いきなりお呼び立てしてすみません」


「本当にいきなりだったわね」


「返す言葉もありません」


 ほんと面倒なんだけど?」

 黒鉄学園の門前に到着した瞬間、いきなり地上を含む風紀部隊に囲まれた。

 その結果、野次馬には騒がれるし情報学科の奴らはいい顔で写真を撮っているわ。

 

「真顔で言われてもね……」


「元々ポーカーフェイスは得意です」


「ソユモンダイじゃなくて」


 自分で思うのは恥ずかしいが、学園ランク5位が風紀部隊に連行される。

 ある意味ではアウトな気がするので、頭が痛くなってしまう。


「ワタシに深く突っ込んだところで何も出てきませんよ」


「だから真顔で言うなよ……」


「ではどんな反応をすればいいのですか?」


「それアタシ達に聞くの?」


「冗談です」


 何だこいつ?

 というか前に会った時と雰囲気が違うような?


「おいおい。まあ、突っ込むのは面倒だし俺達を呼び出した理由を聞いてもいいか?」


「もちろん。てか、理由もないのに貴方達を呼び出さないですよ」


「ねえダンナ? このムカつくアマのケツを引っ叩きたいんだけど?」


「気持ちはわかるが今は落ち着いてくれ」


「フフッ、コチラの問題を解決したら好きなだけ叩いてもらっても構いませんよ?」


 マジでコッチを挑発してきてないか?

 そろそろ帰りたくなってきたが、客室の外には風紀部隊の隊員がいるので出られなさそう。

 なので俺は真顔のままの地上を見てため息を吐く。


「その言葉、忘れるなよ?」


「もちろんです」


「フフッ、腕がなるわね」


「え? な、なんか威圧感がすごい気が?


「それはお前の自業自得だ」


 とりあえず地上へのお仕置きは確定した。

 なので俺は少しスカッとしていると、流れを戻そうとしたのか地上は軽く頷いた。


「お、オホン。改めて、おふたりは数日前に起きた遭難事件を覚えてますか?」


「確か名家の令嬢が遭難した事件だよな」


「ええ、貴方がワタシに手柄を押し付けた件ですね」


「そうそう! で、何か発展でもあったのか?」


「なければ呼ばないですよ」


 少し疲れた感じで首を振るなよ。

 コッチだって月曜日の朝から呼び出されて疲れているのに……。

 微妙に納得ができないので、若干ムカついていると目を細めたアイシアが呟く。


「それで何が起きたの?」


「ルーンベルクさんはせっかちですね」


「後で覚えておきなさいよ」


「楽しみにしてます」


 女の戦いをしている気がする。

 そう思いながら、俺はテーブルの上に置かれた冷たいお茶を飲みクールダウン。

 そのままふたりが睨み合う仲、冷静に言葉を発する。


「流れ的に学園の試練アカデミアスか令嬢関係で問題が起きたのか?」


「……どっちもです」


「「へ?」」


「いま氷室さんが言った二つの問題が起きました」


 ドユコト?

 真顔のままだが何回も瞬きを繰り返す地上。

 彼女は心底面倒そうな気持ちになっているのか、若干視線を伏せた。


「意味がわからないんだけど?」


「だと思うので一つずつ説明しますね」


「お、おう」


 一限目のチャイムが鳴り終わった後。

 微妙な空気感の中で地上は頭が痛いのか、額に手を置きながら芯の説明を始めた。


「まず名家の令嬢問題なんですが、自分が負けたモンスターを倒した人を探しているみたいです」


「そんなの風紀部隊が倒しましたでよくないか?」


「ワタシもそうしたかったんですが、学園ランク的にその令嬢の方が上なんですよ」

 

「ちなみにその令嬢と貴女のランクはどれくらいなの?」


「ワタシが学園ランク九十二位で九条家の令嬢が三十四位位ですね」


 そんなわけがあったのか。

 学園ランクは上位二百位がランカーの呼ばれている生徒。

 大体は上級生が入るが、新入生がランカーに入るのは相当すごいな……。


「貴女の話は理解したけど、何でアタシ達を探しているの?」


「自分が倒せなかった相手を討伐した奴に試合を挑みたい、と言ってました」


「ふーん、それは面白そうね」


「お、おい、まさか……」


「そういうタイプは好きよ」


 やっぱりか!

 さっきまで不機嫌そうだったアイシアがいきなりニヤッと笑った。

 というか確実にやる気になっているような?


「ではワタシ経由で本人をお伝えしてもいいですか?」


「試合の件も伝えてね」


「わかりました」


「おおう……」


 口を挟む前に決まってしまった。

 てか、流れ的に地上に押し付けた手柄がバレる可能性も?

 やばい方面に考えていると、ニコニコとしたアイシアが俺の右手を握った。


「面白いことになったわねダンナ!」


「そ、そうだな」


「氷室さん、お疲れ様です」


「うん、お前は後で泣かせてやる」


「やれるものならやってみてください」


 そのしたり顔を涙でぐちゃぐちゃにしてやる。

 俺は男女平等なので容赦はしない。

 内心でそう思っていると、地上は一つ咳き込んだのでそのタイミングで言葉を返す。


「一つ目はわかったが、二つ目の問題は何なんだ?」


「おふたりが令嬢達を救出した後、学園の試練アカデミアスに調査が入ったんですよ」


「ほうほう。それで調査の結果はどうだったの?」


「実は中に入った調査隊が帰って来ないんですよ」


「「……え?」」


 それってかなりやばくないか?

 斜め上の回答が返ってきたので、俺とアイシアは思わず固まってしまう。


「そんなわけで準備が整い次第おふたりに手伝ってほしいです」


「お前な。明らか危ないところに突っ込めるわけないだろ」


「それはそうですが……」


「うーん、でも面白そうね」


「なんで!?」


 な、何でやる気になっているんだ!?

 色んな意味で突っ込んでいると、アイシアは含みのある笑みを浮かべた。


「元々アタシ達も首を突っ込んだんだし、最後までやらないといけないでしょ」


「ぐっ、それを言われると弱いな」


「でしょ! それに問題を解決したら貴女のケツを好きだけ叩いてもいいのよね」


「え? あ、もちろんです」


 まだその話は続いていたのか。

 まあでも俺もムカついているから地上を反省させるにはちょうどいいかもな。

 そう思いながら硬直している地上を見つつ、さっきと同じくスカッとした気持ちになった。

 

 

 

 




 

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