第10話・こんな偶然ってあるか!?
あ、あの、アイシアさん?
今ので十回目のボス戦ですが、満足されてない?
ボス結界の外でアイシアVSボスの戦いを観戦中しているが、本人はまだまだ余裕がありそうだな……。
「これで終わりよ!」
「グオォ!?」
あ、終わったか。
ボスの再
なので俺はドリンクをアイシアに渡しながらドロップアイテムを拾っていく。
「ご馳走様〜。ダンナ、まだ時間はあるかしら?」
「そろそろ切り上げてもいいか?」
「了解!」
三時間半くらいボスと戦闘していたのにアイシアはあまり疲れてなくね?
内心でアイシアの体力に突っ込んでいると、一緒にドロップアイテムを拾ってくれた。
そのおかげで早めに終わったので、俺達はボス部屋から出ていく。
「荷物は重そうだけど大丈夫?」
「まだ持てる範囲だから気にしなくていいぞ」
「わかったわ」
本音を言えばきついが荷物持ちは俺の仕事。
道中の戦闘は基本的にアイシアに任せつつ、俺は気持ちを切り替えながら歩みを進めていく。
というか、回収したドロップアイテムの量的に軽く五十万円くらいはいきそう。
「ゴブリンの群れを見つけたわ!」
「お、おう……」
訂正。
アイシアに振り回された結果、追加のドロップアイテムを回収。
その結果、草原エリアを出る頃には背負っているカバンがさっき以上にパンパンになっていくのだった。
ーー
ここは短めの木が生い茂るエリアで空気も少し湿り気があり、あまり長居したくない場所。
なので足早に離れたかったが、少し遠くで女性特有の甲高い悲鳴が耳に届いた。
「キャアア!!」
「この声は聞き覚えがあるわね」
「お、おう。とりあえず何が起きているか見に行こう」
「そうね」
どこかで聞いた声。
そう思いながらアイシアと共に悲鳴が上がった場所に向かう。
するとトレントと呼ばれる木の化け物みたいなモンスターが、赤髪の少女をいたぶるように攻撃を仕掛けていた。
「だ、誰か助けて……」
「ッ! どうするダンナ?」
「本人は助けを求めているしいくぞ!」
「了解!」
今回のパターンならいける!
冒険者のルールで助けを求められない限りは基本的にヘルプは推奨されてない。
その理由は何個かあるが、今は考えている場合じゃないのでカバンを地面に置いて氷魔法を唱える。
「アイスチェーン!」
「「「トレッ!?」」」
トレントの気持ちは理解できるが、ダンジョンではなく趣味でやるべきだろ。
全く違う内容を考えつつ、俺が発動したアイスチェーンがトレントの目下から出現。
氷の鎖がトレントの体に巻きつき、相手は動けなくなる。
「きゃぁ!」
「貴女、大丈夫?」
「え、は、はい」
勢いよく尻餅をついた赤髪の少女。
彼女の体はボロボロだがアイシアの手を掴んで立ち上がっているから動けるみたいだ。
「コイツらは貰っていいかしら?」
「も、もちろんです!」
確認した瞬間にアイシアが腰から片手剣を引き抜き、氷の鎖に拘束されているトレントを倒していく。
その時のアイシアは淡々と作業している感じで、少し怖く感じてしまう。
「ダンナー! 援護助かったわ」
「いやいや、それよりも彼女は大丈夫か?」
「意識はあるし大丈夫そうよ」
そりゃ良かった。
とりあえず生き残ってくれて良かったと思いつつ、拾ったカバンから回復ポーションを取り出す。
「あ、貴方達はいったい?」
「俺達の正体よりもまずは傷を手当てした方が良くないか?」
「か、回復ポーションをもらってもいいのですか!?」
「別に問題はないぞ」
もしもの時に用意していた回復ポーション。
お値段は一本三万円ほどで、お高めではあるが保険として用意していた。
その保険が使える時が出てきたので、赤髪の少女に回復ポーションを渡す。
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ。とりあえず落ち着くまで休憩した方が良さそうだな」
「ならアタシは周りを警戒しておくわね」
「頼んだ」
アイシアに警戒を任せ……あれ?
コミュ障の俺が赤髪の少女と話すよりもアイシアに任せた方が良かった気がする。
ただ回復ポーションを飲み切った相手が、不安そうに視線を向けてきた。
「や、やるしかないか。えっと……」
「ぐずっ、すみません」
「落ち着くまで待つから大丈夫だよ」
「あ、ありがとうございます!」
自分の言葉遣いが少しおかしくなっているような?
アタフタと戸惑っていると、画面が割れたスマホが落ちてたので拾った。
「なんでライブ用のスマホが落ちているんだ?」
「あ、ああ!?」
「うおっ!? いきなりどうした!」
え、えっと?
半泣きになっていた赤髪の少女が勢いよく立ち上がり、俺が拾ったスマホを奪い取った。
というよりも先程以上に絶望してない?
「ら、ライブ途中だったのに……」
「ライブ? って、君は今朝ダンジョン前で配信していたDライバーか」
「えっ!? 今朝の配信を見てくれていたの?」
「ち、近い!?」
「あ、ごめんでゴザル!」
キラキラとした瞳で見てきたんだけど?
赤髪の少女が輝く視線を向けてきたので、俺は目を逸らしながら言葉を返す。
「とりあえず自己紹介をしないか?」
「そ、そうでゴザルな」
衣装がボロボロだから困るんだけど?
そう思うが予備の装備はないので目を逸らしたまま、互いに自己紹介をしていくのだった。
ーー
赤髪ツインテールの少女・バクガルこと
先程よりは落ち着いた彼女はポロポロと涙を流しながら話してきた。
「まずは助けていただきありがとうでゴザル!」
「いえいえ、助けられて良かったわ」
「ッ! き、綺麗でゴザル」
「え、えっと?」
爆山さんがアイシアを見て頬を染めてない?
百合百合とした空気にアイシアが戸惑っているので、俺は深呼吸をした後に改めて口を開く。
「と、とりあえず! 君はソロのDライバーでいいんだよね」
「一応は! ただ、吾輩は黒鉄学園の芸能学科に通っている見習いDライバーでゴザルが」
「ん? 芸能学科ってソロでダンジョンに潜れるのか?」
「許可が出たら入れるでゴザル」
そこは戦闘学科と同じなんだな。
ただ基本的に芸能学科は戦闘学科よりも戦う能力が低めなので、ソロで潜っているのは初めて見たな。
「そうなると戦闘力は低くないのかしら?」
「わ、吾輩は戦闘力は上位レベルでゴザルよ!」
「へえー。でもトレンドにボコられていたわよね」
「そ、それを言われると弱いでゴザル……」
なんでソロで潜っているんだ?
自分の事を棚に上げつつそう思っていると、クールな雰囲気を出していたアイシアが息を吐いた。
「ダンナとは違う意味でアホね」
「否定はできないな……」
「ご、ごめんなさいでゴザル」
マジで言い返せない。
アイシアからの冷たい視線を感じながら、ガクガク震えている爆山さんに視線を戻す。
すると爆山さんは気合を入れるためなのか、自分の頬を勢いよく叩いていた。
「改めてでゴザルが、助けていただきありがとうございます!」
「別にいいけどピンチな冒険者を助けた場合はどうなるんだっけ?」
「冒険者のルール的に助けた相手から報酬をもらう事になっているな」
「そうよね!」
「え、えっと……。出来れば容赦して欲しいでゴザル」
やべぇ、アイシアの目がガチだ。
俺は若干引いていると、アイシアがニッコリと笑いながらジリジリと爆山さんに詰めていく。
その結果、報酬の代わりに何故か爆山さんが俺達のパシリになりました。
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