第21話・使える物は使っていこう!
寮に装備と冒険用の鞄を取りに行って
大体一時間後に戻ったが、まだ救出されてないのか現場には緊張感が増していた。
「てかよくよく考えればどうやって入るか考えてなかったわ」
「おいおい、一番大事なところだろ」
「テヘッ」
あざとらしいポーズをされたが見た目が整っているので可愛く見える。
自分の中でいろんな事が思い浮かび気持ちが揺らいでいると、現場の対処をしている地上と目が合う。
「氷室さん、もしかして救出を手伝ってくれるのですか?」
「いや、そんなつもりは……」
「とりあえず現場を見ないとわからないわね」
「なるほど、ちょうどワタシ達も潜るつもりだったので一緒に行きますか?」
「ダンジョンに入る時だけはお邪魔するわ」
なんかドンドン話が進んでないか?
そもそも今回の件で興味を持ったのはアイシアで、俺はスルー前提だったのだが?
ただ俺の意見はアイシア達に流されてしまい、何故か一緒に
ーー
探索許可証を警備員さんに確認された後。
俺とアイシアは地上がつれている風紀部隊と共に向かおうとしたが、チームメンバーが難しい顔をしていた。
「お前のチームには求められてなさそうだな」
「まあ、貴方の態度的に当たり前では?」
「だろうな……」
「あ、悪いけどアタシとダンナは自由に動くわね」
「え?」「「「へ?」」」
あー、確かにソッチの方が動きやすいな。
白銀の鎧姿のアイシアが真顔で放つ一言に風紀部隊のメンツの顔が固まる。
そんな中、
「え、えっと? なぜ別々で行動するのですか?」
「そんなの貴方達がダンナを嫌っているからでしょ」
「あ、はい……」
「「「班長!?」」
「てな訳で時間がなさそうだからアタシ達は先に行くわね」
少し怒ったような雰囲気を放つアイシア。
彼女に腕を掴まれて俺は引っ張られるように
「班長、冷血達をいかせてもよかったのですか!?」
「ワタシ達の目的は九条家の令嬢を救出する事です。なので彼らをいかせても問題ないはずですよ」
「それは……。ただ責任問題を問われる可能性もありますよね」
「その時はその時です」
風紀部隊の隊員達が戸惑っているが、地上は真顔で頷いてた。
その言葉を聞きつつ、俺とアイシアは小さめな声で会話を始める。
「しっかし上手くやったな」
「でしょまあ、あのリーダーは若干勘づきかけていたみたいねや
「確かに何か察してそうな雰囲気なのは俺も感じたな」
「そうよね」
ただの頭の硬いやつじゃない。
地上の新しい場面を知れたので儲け物と思いながら、進んでいくと第一層のフィールドが見えてきた。
「これで戦えるわね!」
「もしかして
「もちろん! 後は運良く令嬢を助けられたら貸しが作れるからよ」
「な、なるほど……。意外と考えているんだな」
「流石に無策で突っ込まないわ」
それはそう!
アイシアの発言に同意していると、モンスターの姿が見えたので気持ちを切り替える。
「なんか芋虫っぽい相手が出てきたわよ」
「あー、ここでよく出るグリーン・キャタピラーだな」
「ここって虫系のダンジョンなの?」
「いや、いろんな種類のモンスターが出てくるランダムダンジョンだぞ」
「そ、それならよかったわ」
もしかしてアイシアは虫系が苦手なのか?
そうなると少し可愛いなと思っていると、アイシアは真顔で光魔法を唱えた。
「ホーリー・ランス」
「ぴいぃ!?」
「お、オーバーキルすぎないか?」
「確実に倒したかったのよ」
「お、おう……」
前言撤回、ほぼ確実に虫系が苦手だな。
中級レベルのホーリー・ランスを使わなくても倒せたはずなのに、容赦なく使っていくアイシア。
その姿に若干引くが、今回はあまり時間がないので半ば無視しながらダンジョンの奥に進んでいく。
ーー
ここまで来たがモンスター以外に見たのは警備隊の方々とかで令嬢達の姿は見当たらなかった。
なので最初のエリアボスのフィールドがある第三層まできたのだが。
「前にきた時よりも空気が重いな……」
「ダンジョンなんてこんな物じゃないの?」
「確かに空気が重いのは
「アタシは初めてだからその辺はわからないわ」
確かに俺の記憶があるから知っていても来るのは初めて。
そこで認識の差が生まれるのは仕方ないか。
「とりあえず警戒しながら進むぞ」
「了解。あ、それなら
「た、頼んだ」
「フフッ、任せなさい」
すごいやる気だな。
まあでも適材適所で
なので心の中で割り切りながらアイシアと共に第三層を進んでいく……。
「ん? あんなモンスターっていたっけ?」
「何かあったの?」
「ああ。この第三層はラビット系やウルフ系とかが多かったんだけど……」
「今はアンデット系のモンスターがいるわね」
モンスターの生態系が変わったのか?
だとしても明らかにモンスターの種類が変わる事はほとんどないはず……。
そう思っていると錆びた片手剣を持つガイコツ兵の群れがコチラに近づいてきた。
「ダンナ、考えるの後にした方がいいわよ!」
「ああ! とりあえずガイコツ兵を迎撃するぞ!」
「了解! ホーリー・シャワー!」
「アイス・ランス!」
「「「ギャガヤ!?」」」
数が多くないか?
範囲魔法でガイコツ兵の群れを倒したと思ったら追加が現れた。
しかもさっきの倍くらいの群れで、俺は思わず目が点になってしまう。
「これって無限ボーナスかしら?」
「確かに無限ボーナスだな……。てか、今の状況を楽しんでいるのかよ!」
「多少はね!」
ニコニコと笑いながらガイコツは嫌倒していくアイシア。
その姿にドン引きながらも、俺は自分の仕事をするために次々と氷魔法を放っていくのだった。
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