第20話・なんで呼ばれたんだよ……
黒鉄学園内にある風紀委員が集まる詰め所。
そこの客室で俺とアイシアはソファに座りながら風紀委員のチームリーダーである地上と向かい合っていた。
「改めてお聞きしますが氷室さんはダンジョンに入らずに揉め事を傍観していたのですか?」
「うーん、気分で」
「気分!? あんだけギラギラとしていた貴方が気分で野次馬をしていたの!?」
「揉め事に関しては下手に突っ込むよりもお前らに任せた方がいいだろ」
「それはそうですが……」
コイツ、俺の事を勘違いしてないか?
そう思いながら突っ込んでいると、コンビニで買ったどら焼きを食べていたアイシアが飲み込んだ後に口を開く。
「地上さんから見てダンナはどう見えているの?」
「どうとは?」
「例えば性格ややり方とかね」
「……その辺は少し言いにくいです」
「別に貴女の主観でいいと思うわよ」
アイシアさん、意外と切り込みますね。
冷静っぽいアイシアの発言に俺は驚きつつ、地上が何を思っているのか気になる。
すると地上は口に手を置いた後、呆れたようにジト目をコチラに飛ばしてきた。
「氷室さんの戦闘力が極めて高いのは素直に羨ましいです。ただ性格がひん曲がっているので優秀な能力を上手く使えているとは思わないですね」
「そう……。でも本人の能力だからある程度は自由に使っていいんじゃない?」
「ッ! 優秀な能力を持つ人はそれだけ責任があるんですよ!」
「ふーん。それはあくまで貴女の考えで強制する物じゃないわよね」
そこに切り込むか。
俺と二人でいる時の甘えた雰囲気ではなく理詰めで追い込む感じ。
アイシアの言葉に対して、地上は納得できないのか勢いよく立ち上がった。
「あ、貴女! さっきからワタシに対して当たりがキツくないですか!?」
「アタシは疑問に思ったから質問しているだけよ」
「ぐっ! それで続きの質問は何なのですか?」
おお、何とか抑えたな。
ソファに座り直した地上の両腕はブルブル震えており、怒りを抑えているように見える。
ただどう見ても客室の空気が悪くなっているような?
「アタシも姫と呼ばれてきたけど貴女みたいに都合のいいように押し付けてくるのは嫌になるのよ」
「お、押し付け!? ワタシはそんな事はしてないですよ!」
「ダンナにこうしろと言っているのも押し付けじゃないのかしら?」
「ッ!?」
今の状況的に優勢なのはアイシア。
ただ地上の顔が真っ赤になっているし、これ以上踏み込むと爆発しそうだな。
そう思っていると、部屋の外からドタドタと誰かが走ってきて客室のドアを勢いよく開けた。
「今は面談中ですよ!」
「申し訳ありません! ですが緊急事態が発生しましたので地上班長にお伝えに来ました!」
「緊急事態って何が起きたのですか!」
「実は九条家の令嬢とお付きの生徒が
「……へ?」
九条家って日本にある名家の一つだったはず。
そこの令嬢がダンジョンで遭難したってドユコト?
「話はわかりませんので現場に向かいながら聞きます!」
「ハッ! お客様には申し訳ないですが退出をお願いします」
「あ、はい」
違う意味でイベントが起きたな。
なんとも言えない空気になりながら、俺とアイシアは客室から出ていくのだった。
ーー
黒鉄学園内にあるダンジョン・
関係者と思われる警備隊の人達が集まっており、現場には緊張の張り詰めていた。
その中で俺とアイシアは野次馬根性で状況を確認していく。
「新入生の九条家の令嬢達の行方はわかるか?」
「Dフォンの
「くそっ! このまま彼女が死んだら九条家からなんと言われるか!」
ここまで問題になるなら名家のお嬢様がダンジョンに潜るなよ。
内心でそう突っ込んでいると、アイシアはエクレアを食べながら呆れたようにため息を吐く。
「なんでここまで大問題になっているの?」
「相手が名家出身だからだろ」
「その名家って貴族みたいな物でいいのよね」
「あー、少し違うが大体そんな感じだな」
「なるほど……。なら少し面倒なのはありそう」
一般家庭出身よりも名家出身のやつの方が優遇されている。
そこに関しては俺も思うところはあるが、考えるのは面倒なので流していた。
「なかなか難しいが関わるだけしんどいぞ」
「でしょうね。あ、警備隊が突入するみたい」
「相手が相手だから動きが速いな」
「そうみたいね。てか暑苦しいわ!」
「同じ事を思った……。まあでも緊急事態だから仕方ないだろ」
いつもよりも更にテキパキしている警備隊の方々。
彼らは準備を整え、真剣な表情になりながら
「フフッ、それでダンナはどう動くの?」
「どう動くってドユコト?」
「そんなの決まっているじゃない!」
「おまっ!? まさか首を突っ込む気か」
「さあね? でもイベントに巻き込まれるのも面白そうよ」
確かに面白く……いや、紛らわされるな。
心が揺れそうになっているとアイシアが屈託のない笑みを浮かべた後、ゴミが入った袋をゴミ箱に捨てた。
「ついでに食べ終わったし食後の運動にもちょうどいいわよ」
「……わかった。ただ準備はしてもいいか?」
「もちろんよ!」
こうなったらやるしかないよな。
ただ、いま着ている制服は防刃の素材で作られているがそこまで防御力はない。
そのため、俺は戦闘用の装備に着替えるためにアイシアと共に学園近くにある自分の寮部屋に戻るのだった。
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