第19話・また面倒なやつが出てきたな……
黒鉄学園の中庭にあるダンジョン・
ここではくすんだ金髪で目つきが悪い二年の男子生徒が、小柄な一年の生徒の胸ぐらを掴んで怒鳴っていた。
「せっかくおれ達のクランに誘ってやったのにその態度はなんだ?」
「ひいぃ!? ぼ、僕はいろいろ回って判断したいのに……」
「そんなの知るか!」
内容を聞いている限り横暴じゃないか?
てかこんな目立つところでよく問題を起こせたな。
そう思いながら遠目で見ていると、風紀部隊のバッチをつけた生徒達が現れた。
「貴方達、何をやっているのです?」
「ッ! もう風紀部隊が来やがったか!」
これだけ目立っていたら風紀部隊も飛んで来るだろ。
学園内の警備や問題が起きた時の対処や鎮圧をする風紀部隊の一人が、ツンツン頭の肩を掴む。
だが当の本人は納得できないのか、風紀部隊の手を振り払って逃げた。
「逃がさないですよ」
「ッ!? ぐうぅ!」
ツンツン頭を捉えようと一人の女子生徒が土魔法のサンドバインドを発動。
固い土が鎖になり、逃げようとしたツンツン頭を拘束した。
「ふ、ふざせるな! おれは正しい事をしたんだぞ!」
「その確認は執務室で聞きます。ついでに絡まれていた貴方も来てくださいね」
「わ、わかりました」
今回の風紀部隊のチームリーダーっぽい茶髪でポニーテールの少女が指示を出し。
他の風紀委員は、テキパキと状況の確認を進めていく。
「アタシ達の出番はなかったわね」
「いや、そうでもないみたいだぞ」
「へ? ああ、茶髪の女子生徒がコッチを睨んできているわね」
「そうそう」
俺も面倒なやつに目をつけられているんだよな……。
少し頭が痛くなっていると、ツンツン頭を他の風紀委員に任せたリーダーが鋭い目になりながらコチラに近づいてきた。
「なんでここに冷血がいるのですか?」
「俺だって学園の生徒だから範囲内なら問題ないだろ」
「そうではなく! 貴方みたいな不真面目な実力者が今回の件を止めなかったのか聞いてます!」
「止めるのはお前らの仕事で俺には関係ないだろ」
「ッ! そ、そうですか!」
ったく、こいつとはソリが合わないんだよな。
俺は内心で面倒くなっていると、少しだけ雰囲気を重くしたアイシアが相手を睨んだ。
「風紀委員か何か知らないけどダンナに突っかかりすぎじゃない?」
「すみませんが彼と話しているので邪魔しないでくれますか?」
「邪魔って!」
「ムカつくのはわかるが今は抑えてほしい」
「だ、ダンナ……もう、仕方ないわね」
アイシアを止める事はできたが。
目の前でコチラを睨んでくる相手に、俺は冷たい視線を向けながら言葉を返す。
「それで風紀委員のエリートである
「相変わらず嫌味ったらしい言い方ですね」
「嫌いな相手に訳もなく絡まれているからな」
「奇遇ですね。ワタシも貴方みたいなタイプは嫌いですよ」
ほんとコイツはタチが悪いな。
そう思いながら地上の方に視線を向けると、向こうも不服そうにコチラを見てきた。
うん、相変わらず敵意がこもっているな。
「何でこんな時だけ意見が合うんだろうな?」
「知りませんよ。てか、貴方はダンジョン前に来て何をやろうとしたのですか?」
「相方とベンチに座ってクールダウンしていたんだけだ?」
「へえ? ボッチなのに相方がいる……え?」
自分でも思うがおかしいよな。
コチラの発言に地上が固まった後、俺の隣にいるアイシアを見て視線を戻した。
「も、もしかして貴方の隣にいる金髪美少女が相方なのですか!」
「そうだけど? おい、なんでそんなに食いつくんだよ!?」
「そりゃ貴方を知っている者からすれば驚きますよ!」
「確かに否定できない!」
「自分でも認めましたね!?」
そりゃボッチな俺がアイシアと一心同体になるなんて思わなかったわ!
自虐するように心の中で突っ込んでいると、頬を膨らませたアイシアが一つ頷いた。
「話に入るけど貴女は風紀委員でいいのよね」
「え、はい! ワタシは戦闘学科二年で風紀委員のチームリーダをしている
「アイシアよ。それで、風紀委員が今は問題を起こしてないダンナに詰め寄るのはおかしくないかしら?」
「えっと、ダンナって氷室さんを指しているのですか?」
「当たり前でしょ!」
あ、地上が固まった。
てか周りに集まった生徒達からも何かヒソヒソ話をされているので、目立っている気がする……。
俺は少し恥ずかしくなってしまうが、復活した地上から強く睨まれた。
「氷室さん、貴方はいくら払って彼女を手に入れたのですか?」
「学園の風紀を守る風紀委員が悪意がこもった言い方をするなよ……」
「あ、すみません。ただ気になったので質問しました」
「ねえダンナ。彼女って変人なの?」
「へ、変人……」
気づいてなかったのかよ!?
アイシアに図星を突かれた地上は力無くうずくまった。
その姿に野次馬達が驚いたのか、興味深そうにコチラを見続けていた。
「あの頭が硬い地上さんが泣きかけているぞ」
「冷血の相方ってレスバも強いのね」
「でもタイプだからオレもいじめられたいなー」
「変態がいるぞ!?」
……もう何でもありなのかよ。
このままだと収集がつかない気がするので、俺は頭が痛くなりながらギリギリ立ち上がった地上に提案を出す。
「ここだと目立つから移動するか?」
「そ、それがいいですね……」
「あらもう終わりなの?」
「ごめんなさい、許してください」
一発で地上の心をへし折るとは。
アイシアのレスバが鋭いと思いつつ、俺はコンビニで買った荷物を持ちながらため息を吐くのだった。
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