根暗な魔法使いが好感度MAXなメンヘラ女騎士を召喚したら灰色の青春が鮮やかになりました！

第34話・なんでこのタイミングで出会うんだよ！

　風紀部隊が所有するクランハウス内にある客室。

　そこで若干引いている地上から大まかな話を聞いた後、何とか状況をまとめていく。

「端的に言えば九条家の令嬢との試合と学園の試練（アカデミアス）への調査でいいんだな」

「ですです！　ただ後者の調査はワタシ達でも対処が出来ない場合、冒険者ギルドに依頼する事になってます」

「あのさ、問題が起きているならギルドに依頼を出した方がいいんじゃないの？」

「ワタシもそう思いますが、学園側は自分達で解決したいみたいです」

　その辺は派閥争いや弱みを見せたくないんだろうな。

　ただ調査隊が行方不明なら、すでに大きな問題だから素直に依頼した方がいい気もするが……。

「メンツを気にしても仕方ないのにね」

「全くですよ」

「名家出身のお前が頷いてもいいのか？」

「地上家としてではなくワタシ個人の意見なので大丈夫です」

「ならいいけど」

　本人が言うなら気にしなくてもいいか。

　これで確認も終わったので、改めて続きを話していく。

「しっかしあの冷血がワタシの心配をするとは思いませんでした」

「俺の方は気にしなくてもいいだろ」

「フフッ、わかりました」

　やっぱりコイツはやりにくいな。

　個人的にモヤモヤしていると、俺の隣に座っているアイシアが軽く息を吐く。

「ダンナをいじるのは置いといて、今日は何かやれる事はあるの？」

「お昼休みに令嬢の方にはコチラの情報をお伝えしますので、また放課後に来て欲しいです」

「了解」「わかったわ」

　これで話しは終わりかな？

　雰囲気的に話がまとまった感じがするので落ち着いた感じで一息つく。

「そろそろ教室に向かってもいいか？」

「あら？　今なら理由をつけて授業をサボれますよ」

「魅力的だが座学の成績を落としたくないからな」

「ほうほう」

　座学の成績は第II戦闘学科の中では真ん中よりも少し上程度。

　なので悪くはないがすごいいいわけでもないので、出来る限りは授業を受けたいんだよな。

「そんなわけで俺は教室に行かせてもらう」

「わかりました！　あ、ルーンベルクさんはどうされますか？」

「アタシはダンナについていくわね」

「なるほど、ではまた放課後によろしくお願いします！」

　よし、これで風紀部隊の客室から出れる。

　自分の中で喜びながら、ぎこちない笑みを浮かべるアイシアと共に客室から出ていく。

　そのタイミングでアイシアがコチラに呟く。

「今回の件、ダンナはどう思う？」

「うーん、令嬢の方はともかく学園の試練（アカデミアス）の方はかなりヤバそうだな」

「アタシもそこは同意見だし、問題の内容や大きさがキーね」

「……やっぱりそこだよな」

　出来る限り大きな事件は起きてほしくない。

　ただ地上から聞いた話ではほぼ確実に大きな事件が起きてそう。

　なので俺とアイシアは、互いにため息を吐きながらクランハウスから出ていくのだった。

　ーー

　午前の授業が終わり昼休憩。

　アイシアと共に食堂で昼ごはんを食べた後、中庭のベンチに座りながらノンビリと話していた。

　そう、ノ（・）ン（・）ビ（・）リ（・）と（・）話（・）し（・）て（・）い（・）た（・）……。

　つまり過去形なんだよな、コンチクショウ！！

「やっと見つけた。貴方が学園ランク五位の冷血とその相方かな？」

「一応そうだけど？」

　明らか濃い奴が現れたんだけど？

　一年生を表す赤いネクタイをつけた黒髪ショートヘアーで見た目がボーイッシュっぽい少女。

　彼女は腰に装備している刀の持ち手に右手を置きながらニヤッと笑った。

「挨拶もなしに声をかけてくるなんて躾がなってないわね」

「それはすみません。ボクは第Ⅲ戦闘学科・一年一組所属、九条澪（くじょうみお）だ」

「挨拶ありがとう。俺は第II戦闘学科・二年三組所属の氷室霧也だ」

「ダンナと同じクラスのアイシア・ルーンベルクよ」

「先輩方、よろしくお願いするよ」

　なんか地上とは別の意味で濃い相手だな。

　でもまあ、初対面でも言葉のやり取りがしっかり出来ている分、ありがたいな。

　自分の中でホッとしていると、九条の取り巻きなのかメイド服の二十歳くらいの女性が現れた。

「わたしは澪様のお付きをしている田辺と言います」

「あ、はい。よろしくお願いします」

　なんかシレッと挨拶されたので返してしまった。

　ロングスカートのメイト服姿の田辺さんに気を取られつつ、改めて九条さんの方を見る。

　うん、九（・）条（・）っ（・）て（・）確（・）か（・）……。

「あのメスガキが言っていた九条家の令嬢って貴女なのね」

「メスガキが誰かはともかく、ボクが九条家の令嬢だよ」

「ついでに今年の入学試験のトップです」

「ほうほう。おまけの情報ありがとうございます」

「いえいえ！」

　もはやアイシアの中で地上の呼び名がメスガキになっている件。

　ただ今はメスガキに突っ込める空気感じゃないので、俺は真顔で言葉を返す。

「それで九条さんは俺達に用があって声をかけたんだよな」

「ボク達を助けた相手の顔を見たかったからね」

「へえ、それで貴女にはどう見えたの？」

「単純に面白い試合が出来る事はわかったよ」

　察するのが早すぎない？

　相手の洞察力が鋭いのかポンコツなのかはわからないが、なんによ面倒な相手のは変わりないな。

「その辺は楽しみにしてなさい」

「そうさせてもらうよ！」

　なんかアイシアと九条さんの相手に火花が散ってないか？

　この状況に俺は置いてけぼりになりながら、後に控えるランク戦（試合）で気が重くなるのだった。