第35話・入学トップ相手って……
放課後・第三訓練場のドーム。
観客席には大勢の生徒達がフィールドの中央に立っている俺を興味深そうに見てきた。
「学園ランキング五位の冷血VS入学トップの成績で入った名家の令嬢が試合するとはな」
「Dフォンのお知らせで見た時はびっくりしたぜ」
「でも面白そうな試合になりそうね!」
胃が痛い。
百歩譲って試合するのはいいが、なんで観客を集める必要があるんだ?
そう思っていると、観客席で余裕そうに座っている地上がしたり顔で笑っていた。
「氷室さん頑張ってください」
「……後で覚えていろよ」
おそらくだが裏で何かあったんだろうな。
というか差出人が学園公式になっていたから、アイツが何か絡んでいる可能性は高い。
「ダンナー! アタシも精一杯応援するわ!」
「お、おう……」
今度はアイシアの声援が届く。
その声に少し戸惑っていると、対戦相手である九条さんが現れた。
「もしかして武者震いをしているのかな?」
「そうじゃなくて帰りたいだけだ」
「氷室先輩はストレートだね」
この状況なら大体のやつは帰りたいだろ。
俺は別に客寄せパンダになるつもりがないのでガン無視したいところだが……。
『さあ始まります学園ランク戦! 実況は情報学科二年・舞浜がお送りして、開設はランキング四位で生徒会副会長をしている真岡先輩に来てもらいました!」
『よろしくお願いします』
このタイミングで実況まで挟まるのかよ。
しかも解説の生徒副会長の声に若干トゲがあるのは気のせいか?
『さてさて、今回の試合ですが……。新入生トップがランキング五位の冷血に挑戦状を叩きつけたみたいですよ!』
『あの冷血に勝負を挑むなんて彼女もすごいですね』
『おや? 真岡先輩は去年の闘技祭で冷血と戦っておられますよね』
『そのお話をしますか……』
去年の闘技祭での出来事はあんまり思い出したくないんだけど?
ただ解説の女子生徒・舞浜さんはテンションが上がっているのか、無駄に高いキンキン声で話を続けた。
『わたしが記憶している限り試合自体は真岡先輩が勝利しているんですよね』
『
『えっと? それはどいうことですか?』
『少し言いすぎましたね。とりあえず今回の解決をしていきますね』
『わ、わかりました!』
とりあえず話が流れてよかった。
この話をされると違う意味で面倒なところがあるからな……。
「氷室先輩は何をやらかしたの?」
「あんまり言いたくないな」
「ふーん。なら僕が買った時に聞かせてもらうよ!」
『おっと! 新入生が冷血に啖呵を切った!』
「「「おおお!!!」」」
うるせぇ!?
観客席にいる奴らの盛り上がりが
「入学早々にトップランカーと戦えるのは楽しいね」
「お前も
「そうだけど?」
「素直に認めやがった!?」
アイシアといい
色んな意味で残念さを感じていると、九条さんが訓練用の刀を構えた。
「さてと、
「初めのサグリとしてはいいと思うぞ」
「それはよかった」
「……やる気だな」
なんでそんな嬉しそうなんだ?
てか、よかったと言った瞬間に魔力放出するなよ。
九条さんが黒い雷のような強力な魔力を放出している。
「ボクの魔力放出を浴びても顔色一つ変えないなんてね」
「俺は
「え? 氷室さんはメイジだったの!?」
「なんか問題でもあるのか?」
こちとら武術スキルは後付けした短剣術のみだぞ!
しかもモンスター戦は基本的に氷魔法で方がつくので、近接戦闘は対人でしか訓練してないんだよ!
「対人戦のランキングで後衛の
「今更か!?」
「新入生だから知らないんだよ」
「お、おう……」
情報ゼロで戦いを挑んできたのかよ。
流石に突っ込みところ満載だが、今回は俺もあんまり知らなかったからお互い様か?
「微妙にすれ違っているわね」
「けしかけたのはワタシですが、グダグダな気がします」
アイツらも好き勝手言いやがって……。
アイシア&地上の突っ込みに頭が痛くなっていると、訓練場のスピーカーから声が響く。
『よくわかりませんが、おふたりの準備が整ったみたいですね』
「どこが!?」
『僕もこのまま言葉のやり取りよりも実際に試合を見たい気持ちはあります』
「流されてない……」
俺の味方はゼロなのか?
というか、俺のメンタルはボロボロなんだが!
流石に突っ込みどころが多すぎるから処理が追いつかない。
自分の中でアタフタしていたら、審判エリアに立っている教官がマイクを持ちながら叫んだ。
『これより学園ランキング五位の氷室霧也VS新入生トップの九条澪の試合を始めます。ルールは公式で、どちらかが戦闘不能になるか降参するかで決着になります』
「ん? なんかフィールドにバリアが貼られたよ」
「学園結界が作動したんだろ」
「学園結界って観客席届く攻撃を防ぐバリアだよね」
「後は対戦中の死人を出さないようにするセーフティでもあるぞ」
なんか説明口調になったような?
自分で自分に突っ込んでいると、九条さんはニヤッと頬を緩めた。
「それなら
「お、おう……」
なんかさっきよりも魔力放出が強くなったような?
嬉しそうにしている相手にドン引きながら、俺は腰から短剣を引き抜き試合に備えるのだった。
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