第27話・とんでもないアタリを引いたような?

 浅川先生と打ち合わせをした後。

 適当に買い食いしながら素材換金やることとかを終え。

 今日の本題であるギルド支部に鑑定依頼した二つのスキルオーブを取りに行く。


「ダンナはどんなスキルが欲しいの?」


「うーん、使うって意味では欲しいスキルはあまりないな」


「なら当たり以外は売却?」


「とりあえずクソスキルじゃなければ持っておきたい」


「へえ、ダンナが何を考えているか楽しみね」


 おそらく俺の考えはアイシアに読まれてそうだな。

 スキルオーブは内容次第だが基本的に百万円高値だし、それ以上も普通にあり得る。

 なのでロビーのソファに座りつつ、いつも通りの雰囲気でアイシアと話していく。


「まあ、理由の一つに単純にお金ならさっき受け取っただろ」


「あー、それもそうね」


 ついでに半年くらい前に短剣術のスキルオーブを使ったし、今回は保留で良さそうだな。

 なのでそう考えつつ、ニコニコと笑っているアイシアに言葉を返す。


「てか、これ以上お金が手に入っても使い所が難しいんだよ……」


「確かに金銭感覚が狂わないようにするには大金をあまり持たない方がいいわよ」


「だろうな」


 大体はアイシアの言う通りなんだよな……。

 一応売却するのも手だが、さっき鋼鉄の山脈アイアント・マウンテのギルド出張所に寄ってきてRTAの報酬である五十万弱を受け取ってきた。

 そのおかげでお金に余裕が出来たので、取っておきたい側面もある。


「ねえダンナ、明日は休みだしどこかに出かけない?」


「それはいいな! あ、でも明日はアイシアと一緒に行きたいところがあるから俺が場所決めしてもいいか?」


「もちろんいいわよ!」


 よし、これでアイシアの私服一つの問題が解決できる!

 そう俺の中でホッとしているとアイシアが何かに気づいたのか、俺の肩に自分の顔を軽く置いた。


「フフッ、明日は楽しみにしているわね」


「お、おう……」


 やばい、服を買いに行く以外は何も考えなかかった。

 一瞬でホッとした気持ちから焦り始めたタイミングで、電光掲示板が新しい数字を展示した。

 そこには俺達の番号もあったので、一旦気持ちを切り替えていく。


「と、とりあえず行くか」


「ええ! なんのスキルが入っているか楽しみね」


「そこは当たりであって欲しいな」


「そうねー!」


 当たりのスキルが来てくれ。

 心の中で祈りながら、ルンルンなアイシアと共に鑑定カウンターに向かっていく。


 ーー


 冒険者ギルド・鯱川しゃちかわ支部、鑑定カウンター八番。

 相手は三十代前半くらいの男性で、俺とアイシアは近くの椅子に座りながら職員さんの言葉に耳を傾ける。


「氷室様から提出された二つのスキルオーブの鑑定結果が出たのですが……」


「えっと、スキルの中身で何か気になる事でもあったのですか?」


「気になると言うよりも、スキルの内容に戸惑ってます」


 難儀なんぎなスキルでも入っていたのか?

 どんなハズレスキルが入っていたのか気になっていると、職員さんがスキルオーブ&鑑定書が乗ったトレイをテーブルの上に置いた。


「一つ目のスキルオーブの中には『硬化こうか』のスキルが入ってました」


「ふむふむ。レア度的にはあまり高くなさそうですね」


「確かにで見れば低めですが、壁役タンカーを中心に人気があるスキルです」


「確かに前衛なら欲しい能力ね」


 安定して使いやすい能力スキルか。

 ただ魔法使いメイジの俺には合わないスキルなので、前衛フロントアタッカーのアイシアに使うか聞いてみるか? 

 自分の中でどうするか考えつつ、職員さんが続きを話してくる。


「硬化スキルの説明は入りますか?」


「いえ、大丈夫です」


「わかりました。では二つ目のスキルオーブの説明に入りますね」


「よろしくお願いします」


 一個目のスキルオーブは色違いのストーンボールからドロップした物。

 コチラはレアモンスターだが、通常種は第一層で見かける相手なのでおかしなスキルは入ってなくてよかったが。

 問題はボロローブからドロップした方だよな……。


「コチラのスキルオーブ内に入っていたのは『漆黒魔法ダーク・マジック』です」


「……厨二病みたいな名前ですね」


「わたしも鑑定士からお聞きした時に同じ事を思いました」


「ちなみにその漆黒魔法ダーク・マジックってどんなスキルなの?」


「ギルドのデータによりますと、希少レア魔法の中でも上位に位置する強力な能力スキルみたいです」


 職員さんの言い方が曖昧あいまいだな。

 ただ漆黒魔法ダーク・マジックなんて聞いた事のない魔法なので気になりながら、冷や汗を流している職員さんに質問してみる。


「名前はわかりましたが、どんな能力なのかや売却値がいくらになるかの予想はありますか?」


「申し訳ありありませんが前者はわたしもわからないです。ただ過去の公式オークションで五百万円を軽く超えていたみたいです」


「「……へ?」」


 ご、こひゃくまんを軽く超えているだと!?

 当たりとはいえスキルオーブ一つで一千万とか頭がおかしいのかよ!?!?

 驚きの言葉に俺とアイシアは固まっていると、職員さんが渋い顔になりながら一つ頷いた。


「確認しておきたいのですが、鑑定したスキルオーブ二つはお持ち帰りされますか? それとも売却又はオークションに出しますか?」


「え、えっと、とりあえずお持ち帰りでお願いします」


「わ、わかりました!」


 とりあえず追加でスキルオーブを入れるケースを買おう。

 職員さんに一つ三千円するスキルオーブのケースを二つお願いしておく。

 

「ダンナの顔が真っ青になっているわね……」


「値段を聞いて驚いただけ」


「誤魔化すつもりなのに本音を言ってない?」


「お前に嘘を言ってもバレるだろ」


「そりゃね!」


 ここは素直に言った方がいい。

 自分の中でアイシアへの対応がある程度はわかってきたので、その動きに合わせていく。

 そして彼女と話していると、職員さんがケースを持ってきてくれたのでスキルオーブを中に入れる。


「気をつけてお持ち帰りください」


「わ、わかりました」


 鑑定代とケース代を払った後。

 俺とアイシアは互いにぎこちなくなりながらギルド支部の建物から出ていくのだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る