第28話・ショッピング!!

 四月九日次の日・土曜日の朝。

 俺とアイシアは制服姿で大型のシッピングモール・エアンの建物内に入っていく。

 するとアイシアは目をキラキラとさせながら周りを見ていた。


「ここがダンナが行きたかったお店なのね!」


「そうそう! まあ、まずは適当に回るか?」


「いいの!」


「まずはどんなお店があるか見たいだろ」


「それもそうね!」


 アイシアに合う服を買いに来た。

 それを伝えたいが少し恥ずかしくて言えないので、俺は頬が若干熱くなりながら目をキラキラとさせている彼女の方を見る。

 

「とりあえず服屋でもどうだ?」


「いいわね! あ、一つ忘れていたわ!」


「何を? って、いきなり抱きつくなよ……」


「ムフフ、別にいいじゃない」

 

 いつもの如くアイシアが俺の右腕に抱きついてきた。

 そのおかげで周りのお客さんに生暖かい視線を向けられたので、恥ずかしくなりながら言葉を返す。


「だ、抱きつくのはいいが限度は考えてくれよ」


「もちろん!」


「本当にわかっているのか……?」


 その反応は少し不安になるんだけど?

 なんとも言えない空気化の中、俺のアイシアはショッピングモール内を歩き始める。

 すると近くにフルーツドリンク屋があったので、アイシアの視線がお店に引っ張られていた。


「あそこってどんなお店なの?」


「フルーツを使ったスムージーとかを提供しているお店かな?や


「ふーん。少し飲んでみたいわね」


「なら買いに行くか?」


「うん!」


 元気がいいな。

 勢いのあるアイシアの頷きに温かい気持ちになりながら、俺はお店に向かいおすすめのドリンクを頼む。

 その時に若い店員さんにも生暖かい目を向けられた感じがするのはご愛嬌。


「お待たせしました!」


「ありがとうございます!」「ありがとう!」


 あんまり飲んだ事がなかったし楽しみだな。

 俺が頼んだのはグレープのスムージーでアイシアが頼んだのはオレンジのスムージー。

 店員さんにお金を払った後、スムージーを受け取って近くのソファに座る。


「さてさて! このスムージーとやらはどんな味がするのかしら?」


「なんかキャラが変わってない?」


「そこは気にしないでよ」


 今のテンションが恥ずかしかったのはアイシアの頬がピンク色になった。

 その姿を見て可愛いと思いながら、自分の手に持っているグレープ味のスムージーを飲んでいく。

 

「んー! 美味しいわ!」


「そうだな。って、俺のスムージーも飲んでないか?」


「アタシと何回もディープキスをしているのに今更気にするの?」


「た、確かに……。いや、理解はできるが納得できないんだけど?」


「気にしたら負けよ!」


 なんかゴリ押しされた感があるが、アイシアが嬉しそうだから問題はないか。

 そう思いながら互いにスムージーを飲み干すまで、俺達はノンビリとくつろいでいくのだった。


 ーー

 

 ……服関係だけで十五万ほど吹き飛んだ。

 ご飯とスープのおかわり自由のトンカツ屋で、俺は苦笑いを浮かべた。


「ダンナ、おかわりを頼んでもいいかしら?」


「好きなだけ食べていいぞ!」


「やったぁ!」


 長椅子に置かれた大量の紙袋。

 それを見ながら頭が痛くなっていると、トンカツ定食・ソース・味噌・大根おろしの3種類の定食を追加。

 しかもご飯は特盛で頼んでおり、違う意味でもインパクトがある絵面になっている。


「ここの食事も美味しいわね」


「そりゃよかった!」


「フフッ、ダンナも少し復活したみたいね!」


「ま、まあ、この紙袋の量を見て固まってたんだよ」


「あー、なんかごめん」


 別に問題はないんだけど。

 ただ自分で考えていた量を軽く超えた事で違う意味で疲れただけ。

 なので少し申し訳なさそうにしているアイシアへなんとか言葉を返す。


「俺の考えが甘かっただけでアイシアは別に悪くないぞ」


「ほ、ほんと?」


「ああ! ただ荷物が多いから昼ごはんを食べ終わった後は適当にブラブラと歩いていいか?」


「もちろんいいわよ!」


「助かる」


 流石にこれ以上は荷物が持てない。

 追加の買い物は別の機会にして、まだ入ってないショッピングモールのお店に行きたいところ。


「それでダンナはどこに行きたいの?」


「うーん、映画館とかはどうだ?」


「映画って?」


「それは見てからのお楽しみで」


 映画の説明は説明するよりも実際に見た方がいい。

 頭をコテンと傾けたアイシアを見ながら、俺は満足しながら味噌カツを一口食べる。


「よくわからないけど楽しみにしているわね」


「おう、そうしてくれ」


 ただトンカツ屋からはまだ出てそうにないが……。

 少ししたタイミングで店員さんが追加のトンカツ定食を運んできた。

 そのおかげでアイシアはキラキラと目を輝かせながら、フードファイターみたいにがっついていく。


「よ、よくそんなに食べられるよな」


「これくらいは普通よ!」


「普通か……。いや、そんなわけあるか」


 真顔でボケたアイシアに思わず突っ込む。

 すると彼女はクスッと笑い、さっきよりも明るい笑顔を浮かべた。


「でしょうね! まあでもアタシが大食いなのをダンナは否定しないわよね」


「別に俺に迷惑はかからないし、大食いフードファイターも珍しいがいるだろ」


「フフッ、そう言ってくれるのはありがたいわ」


「別に気にしなくてもいいと思うが……」


 明らかヤバい事や俺に迷惑が掛からなければいい。

 自己中みたいな発言になっているのは自分でもわかるので、少しだけ頭が痛くなる。

 ……ついでに追加のトンカツ定食を見て、換金したお金を持ってきてよかったと思ってしまう。


「すみません! 追加でエビフライ定食とカキフライ&カニクリームコロッケ定食をお願いします」


「は、はい!」


「……容赦がないな」


 ガッツリと食べているな。

 トンカツ定食三種類を食べ終わったアイシアは二度目のエビフライ定食とカキフライ&カニクリームコロッケ定食を頼んだ。

 てか定食だけでも六食プラス二食の追加で、並のフードファイターを超えている気がする。


「会計がいくらになるんだろう……」


 一万円くらいになればいいな。

 自分の中で冷や汗を流しながら食事を楽しむアイシアに視線を向けるのだった。


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