第17話・金策RTA一時終了のお知らせ
荷台がエリアボスのドロップアイテムでパンパンになり、乗せられなくなったのでギルドの出張所まで戻ってきた。
「え、えっと? これって鉄の人形のドロップアイテムである人形鉄ですよね」
「そうですけど何か問題がありましたか?」
「見た感じ三十は超えているように見えるますが……」
「それだけ倒して来たのよ」
ギルドの職員さんが固まっている。
鉄人形は大きさが五十センチくらいで棒人間みたいな形をしており、ボスRTAをしたおかげで荷台の上に大量に積まれている。
「回収しすぎたかしら?」
「多分大丈夫だと思うぞ」
「ならいいけど査定に時間がかかりそうね」
「だろうな」
ギルド職員さんが応援を呼びに行き。
その結果、ゴリマッチョの職員さん五人が荷台を倉庫に引っ張って行った。
「ど、ドロップアイテムの回収ありがとうございます!」
「いえいえ。ちなみに査定はどれくらいかかりそうですか?」
「正確な時間は分かりませんので受付表をお持ちください」
「わかりました」
お金は後日引き渡しっぽいな。
そう思いながらギルド職員に受付表を渡されたので、そのまま手にしながら俺とアイシアは互いに視線を合わせる。
「じゃあ今日は帰るけど大丈夫よね」
「は、はい!」
「それではありがとうございました」
よし、これで荷物が軽くなった。
ドロップアイテムが乗った荷台がなくなった事で体が軽くなった感じがする。
そう思っていると満足そうな笑みを浮かべているアイシアが俺の左手を握った。
「これからどうするの?」
「まずはギルド支部に行ってスキルオーブの鑑定依頼を出したいな」
「うんうん、その後は?」
「特に決めてないからアイシアが行きたいところはあるか?」
「もちろん!」
なんか食い気味なんだけど?
キラキラした目を向けるアイシアに苦笑いを向けつつ、一息吐きながらギルド支部に向かう。
……タクシーに乗った時に運転手さんの生暖かい目に少し恥ずかしくなるのだった。
ーー
鯱川市の市街地にあるギルド支部。
ここに着いたのは十七時過ぎで多くの冒険者が集まる時間。
その為、俺とアイシアは互いに手を繋ぎながら鑑定を中心にやっている部署に向かった。
「お客様すみません。今日はどのような品を持ってこられたのですか?」
「今回はこのスキルオーブを鑑定して欲しいです」
「スキルオーブですか……。少しお時間がかかりますがよよしいでしょうか?」
「大丈夫ですし、別の日に取りに来てもいいですか?」
「もちろんです!」
2枚目の受付表をゲット。
今日は受付表に縁があると思いながら、
「確かに受け取りました! では明日から一週間後の四月十三日までが期限なのでお忘れ無く!」
「はい! 今日はありがとうございました!」
これで鑑定の受付が終わりだな。
そう思いながらロビーに移動すると不機嫌そうに座っていたアイシアに腕を掴まれる。
「やっと来たわね!」
「待たせたか?」
「うーん、少し待ったけど特に問題ないわ」
「そりゃよかったよ」
アイシアをあまり待たせたくなかったので、提出が早く終わってよかった。
自分の中でホッとしていると、頬を膨らませていたアイシアがギュッと少しだけ強めに俺の手を握る。
「これで今日のやる事は終わりかしら?」
「これ以上はやる事がないから自由だぞ」
「そう……ならいくわよ!」
「え、あ、ちょ!?」
今回は力強く握られてはないが、何故かアイシアの手から温かみを感じる。
その温かみがわからないので、俺は彼女が行きたい場所がどこかわからないまま連れ出されるのだった。
ーー
夜の十九時。
ギルド支部から出てアイシアに連れて来られた場所は鯱川市内に自然公園だった。
人通りがあまり少ない中、俺とアイシアは隣り合うようにベンチに座る。
「な、なあ、アイシア。ここに来て何がしたいんだ?」
「やっぱりダンナ自身は気づいてないみたいね」
「気づいてないって何が?」
「ハァ……。
「ッ! そういえばそうだったな」
ここ数年は誕生日なんて気にした事がなかった。
自分の中で盲点だったので、真顔のアイシアに言われて固まってしまう。
ただ当の本人は雲一つない空をチラッと見た後、呆れたようにため息を吐く。
「過去の出来事でダンナの心は凍ったのよね」
「それは……。俺の記憶から読み取ったのか?」
「あくまでアタシの分析だけど」
俺の記憶を知っているからここまで言えるのかよ。
真顔のままズバズバと真理をついてくるアイシアに俺はタジタジになる。
「それでアイシアは俺のクソみたいな記憶を見て何が言いたいんだ?」
「うーん、端的に言えばもう一人じゃないと伝えたいわ」
「へ? でも俺は……」
「アタシに対しては好きなだけ吐き出していいのよ」
「ッ!」
やばい感情がぐちゃぐちゃに。
今まで抑えていた物が湧き出すように、俺は抱えていた物をアイシアに吐き出してしまう。
「俺だってあったかい家族がいる奴らが羨ましかった。でもウチはそうじゃなかったから周りと違うと思っていた。自分は価値なんてないんだとそう思って我慢していたんだ」
「うんうん!」
「父親は仕事ばかりで母親はその金で豪遊して俺と結菜はほとんど放置されていた。そんな中でも生きないといけないから無理して頑張っていたんだよ! でもどれだけ頑張っても誰にも認められず学校ではハブられた!」
「ええ!」
誰にも吐き出せなかった思い。
目から涙が出て来て感情的になってしまうが、もう止められない。
「それでも十五の誕生日に
「本当に辛かったわよね」
「うん……。本当にどうしようもなくて自分が嫌になっていたよ」
もはや自分でも何を言っているか。
このまま何もない自分なんて何の価値もない。
そう思っているとアイシアが一つ咳き込んだ後、優しげな笑みを浮かべながら抱きついて来た。
「今までよく頑張ったわね!」
「え、あ……」
「少なくともアタシはキリヤと共に生きていくからずっと一緒よ」
「お、おう?」
なんか流れがおかしくなったような?
そう思いながらアイシアを見ると、整った顔立ちなのに口から垂れそうになっているヨダレ。
先程まで感情がぐちゃぐちゃだった俺だが、彼女の顔を見て冷や水がかかったように体が冷たくなった。
「アタシとキリヤは一心同体……つまり永遠に一緒なのよ!」
「あ、は、はい?」
「まあ、そんなわけでいただきます」
「ムグッ!?」
こ、このパターンかよ!?
今までのシンミリとした雰囲気をぶち壊れされた感じ。
俺はアイシアに長めのキスをされ、口の中に舌をねじ込まれる。
「むぐぐ!?」
結果はこうなるのかよ!?
とりあえず息がしたいので少しだけ離れて欲しいが、アイシアからガチホールドされて離れられない。
このまま窒息しそうになりながら、彼女が満足するまで付き合わされるのだった。
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