第3話・ギルドでの出来事とホテルでの一幕
襲いかかってくるゴブリンを含むモンスター達はアイシアが無双してカタがついたが……。
「さっきも言ったけどゴブリンの群れを瞬殺ってどんだけ強いんだよ」
「フフッ、今のは片鱗くらいでしかないわ」
「ま、マジかよ」
余裕そうに片手剣をしまうアイシアに思わず突っ込む俺。
そんなこんなで嬉しそうな彼女と共にダンジョンから出た後。
出口近くにあるギルド出張所でドロップアイテムの換金とアイシアのことを職員さんに報告。
ただ、コチラを担当したギルド職員がアタフタしており、上層部に報告すると同時に今の対処方法を伝えてきた。
「も、申し訳ありません。今日は処理できないです」
「わかりました」
そりゃ契約精霊は希少だから仕方ないよな。
自分の中でそう納得していると、ギルドがお高めのホテルの部屋を予約してくれた。
なのでご好意に乗じてありがたくホテルに泊まれたのはよかったが……。
「う、動けない」
なんでアイシアが俺のベットにいるんだ?
目を覚ますとグウグウと眠っているアイシアにホールドされていた。
しかも彼女の服装は昨日の鎧姿はなく、ホテルに置かれている寝巻きなので女性特有の柔らかさを感じてしまう。
「や、やばい」
このままだと色んな意味でやばい気がする。
頭の中で色々考えていると、俺にのしかかるように抱きつくアイシアが小さい声で呟きながら体を起こし始めた。
「うーん」
やっと起きてくれたか。
ホッとしながら動く準備をしていると、半目でヨダレを垂らしたアイシアがコッチを見ていた。
「いただきます!」
「へ?」
ちょっ、待て待て!?
アイシアの反応に戸惑っていると、昨日と同じく唇を奪われる。
「むむぅ!」
ドユコトだよ!?
あまり頭が回らない中、彼女が満足するまで俺の口内が蹂躙さていくのだった。
〈
アイシアが目を覚ましてから一時間後。
身支度と朝食を食べ終わったので、ソファに座りながら部屋の中にあるテレビの電源をつける。
『皆様おはようございます。早速ですが、四月三日のホットなトップニュースを放送していきます!』
朝の八時から始まるモニンエイト。
このニュース番組はよくあるアナウンサーとコメンテイターが、会話のキャッチボールをしていくタイプ。
「トップニュースは大人気Dライバーの話か……」
「なあダンナ、なんでDライバーってこんなに目立っているの?」
「答えるのに難しい質問だな」
単純に人気だから。
動画投稿サイト・Dチューブで活動しているのがDライバー。
彼女達はダンジョン攻略の動画からメディアの露出もしており、学生のなりたい職業でもほぼ上位に入るほど人気がある。
その事をアイシアに伝えると、彼女はフフフと意味深な笑みを浮かべた。
「コッチの世界も面白そうなのか多いわね」
「ん?」
「なんでもないわ」
「わ、わかった」
少し引っかかるがまあいいか。
俺は気持ちを落ち着かせる為に、テーブルに置かれている水を飲む。
そのタイミングで興味深そうに目を輝かせたアイシアが口を開く。
「ダンナー、今日はどうするの?」
「とりあえずギルドの事情聴取だな」
「なんか面倒そうな案件ねー」
「俺も同じ事を思った」
シンシアの萎えたような表情を見て俺も頷く。
てか報告すらめんどかったのに、事情聴取と言われてダルくないわけがない。
内心で気が重くなっていると、アイシアが呆れたようにため息を吐く。
「なら報告なんてガン無視して遊びに行きたいわね」
「気持ちはわかるが、行かないとさらにめんどくなるぞ……」
「そ、そうよね」
マジでだるいな。
アイシアと共に額に手を置きつつ、ダルい体を動かすように準備を整えるのだった。
ーー
鯱川市の市街地にあるギルド支部のロビー。
十五階建ての大きなビルで、奥には冒険者が訓練とかできる施設がある。
そのため多く冒険者が集まり、昼夜問わず賑やかな場所……。
「なんか目立ってない?」
「そりゃ白銀の鎧を着たモデルレベルの女騎士とか目立たないわけないだろ」
「それって褒めているわよね!」
「部分的にな」
子犬のように可愛いが、周りからの視線がきつい。
アイシアが嬉しそうに俺の腕を組んできたので、ほどほどに受け流していく。
ただ、周りにいる冒険者の一部はコチラに嫉妬の視線をぶつけてきた。
「うおっ!? あの金髪の美人すごくね!?」
「外国のモデルかな?」
「な、なんか、女として負けている気がするわ……」
結構濃いな。
大体はアイシアに向けた言葉で、言われている本人は涼しい顔でスルーしていた。
いや、頬が少し引き攣っているので気にはしてそうだな。
「アタシの見た目ってこの世界では特殊なのかしら?」
「日本人としてなら特殊かもな」
「そうなのね……。ダンナはアタシの事をどう思うの?」
「すごい可愛いと思うよ」
「ッ!! ありがとう!」
うおっ!?
アイシアが屈託のない笑みを浮かべながら抱きついてきた。
そのおかげで倒れかけたが、なんとか持ち堪えながら彼女の頭を撫でる。
「このままダンナを食べたいわ」
「待て待て!? ここはギルドだから自粛してくれ!」
「ちぇー、仕方ないわね」
あ、危ない……。
背中に冷や汗が流れていると、今の状況を見ていた冒険者の視線が更に強くなってきた。
「金髪美人に迫られるなんて羨ましいぜ!」
「てか、あの塩顔の根暗は確か冷血だよな」
「れ、冷血ってソロ専の学生探索者だったわよね」
「冷血は腕はあるけど人間関係が嫌いな冒険者のはず」
またそのあだ名で言われるのかよ。
冷血と聞いて頭が痛くなっていると、先程まで笑みを浮かべていたアイシアが不機嫌そうに頬を膨らませた。
「ぶっ潰そうかしら?」
「や、やめてくれ……」
ギルドで問題事を起こしたくない。
そう思いながら頬を膨らませているアイシアと共にギルドの受付に向かう。
「な、なんとか受付カウンターに着いた」
「フフッ、ここからが戦なのよね」
「ある意味ではな……」
突っ込むのに疲れた。
まだ午前なのにここまで疲れるとは思わなかったんだが?
軽めに息を吐いていると、手が空いてそうな三十代前半くらいの男性職員さんと目が合ったのでソチラに向かう。
「すみません。事情聴取を予約していた氷室ですがお時間大丈夫ですか?」
「氷室様です。申し訳ありませんが確認しますね」
「わかりました」
多分大丈夫なはず。
男性職員さんは少しズレていたメガネを掛け直し、カウンターに置かれているタブレットを使い検索を始めた。
「確認した結果、今日の十時で予約とられてますね」
「ですです」
今は四月三日の午前十時前。
時間的にはちょうどいいはずなので、男性職員さんに係の人を呼んで来てもらう。
その結果、係の人はすぐに飛んできてビルの三階にある会議室に連れて行かれるのだった。
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