第31話・ダンジョンに凸
四月十日・日曜日の朝九時。
今日はアイシアに一日付き合うと言ってしまったので、少しビクビていたが。
彼女は白銀の鎧姿になりながら一言。
「腕が鈍らないようにダンジョンに行くわよ!」
「ん? お、おう」
最近は出かけすぎて鍛錬の時間は少なかったな。
そう考えるとちょうどいいと思い、俺も冒険者用の装備に着替えていく。
そしてアイシアが選んだのは
「ここを選んだ理由はなんだ?」
「比較的強いモンスターが出てくるからよ」
「あー、確かにな」
大体理解した。
そのおかげで他と比べてあまり人気がないダンジョン。
「ついでに人も少なさそうだし、鍛錬にはもってこいでしょ」
「そうだな! っと、ゲートも開いたし入るか」
「ええ!」
少し緊張するな。
冒険者カードをゲートにかざすと勢いよく開いたので、俺達は気持ちを切り替えながら中に入っていく。
「コッチの世界で入った三つのダンジョンよりも空気が重いわね」
「そりゃお前が上げた三つのダンジョンよりも危険度が高いからな」
「へえ、その言葉を聞いくと腕がなるわね」
「ハハッ、なら俺も負けないようにしないとな」
戦闘タイプが違うので比べる物ではないが。
まあでも個人的に負けたくない気持ち自体はあるし、気合を入れていくか!
そう思いながら進んでいると、第一層に到着したのでフィールドの雰囲気を見る。
「ここは別ダンジョンの草原エリアよりも草が長いわね」
「そうだな……」
草の長さは膝下まである。
そうなると動きづらく、近接タイプは足元がとられるかもしれない。
「あっ! 言い忘れていたけどアタシ達って単体では戦っているけど連携戦の練習はしてないわよね」
「そうだな。って、ここで連携戦の練習をするつもりか?」
「そのまさかよ!」
「お、おう……」
練習もしてないのにいきなり実戦かよ。
少しスパルタにも見えるが、アイシアへの負担も考えるとどっちもどっちか?
「てなわけで、アタシは防御重視で動くからダンナがメインで攻撃してね」
「りょ、了解」
「よし! なら改めて向かうわよ!」
テンションが高いな……。
アイシアが嬉しそうにしているが今はダンジョン内。
俺は周りを警戒しながら、彼女と共に奥に進んでいくのだった。
ーー
第一層と二層のモンスターはそこまで
そのまま第三層に向かう階段を降りると、緑肌のトカゲみたいなモンスターが襲ってきた。
「ホーリー・スラッシュ!」
「きょえっ!?」
アイシアがホーリー・スラッシュを発動。
光の魔力が宿った一撃が、五十センチほどの緑色のトカゲの顔面に直撃した。
「このエリアは不意打ち上等なのね」
「みたいだな」
「そうなるといつも以上に警戒が必要かも」
「だな。まあ、エリア的に第一層と変わらないのが救いだな」
「確かに楽な部分ではあるわね」
エリア風景がコロコロ変わる他のダンジョンと違い、草原が連続するのはある意味ありがたい。
なので俺とアイシアは警戒しながら奥に進んでいく。
「ちぃ、アイス・ランス!」
「きゅぇ!?」
「ッ! ダンナ、囲まれているわよ!」
「わかっている!」
警戒していたのに多くのモンスターに囲まれた。
自分の詮索能力はまだまだと感じ、鍛錬が必要なのを実感するが。
今の状況的に後悔する時間はないので、アイシアと共に緑肌トカゲの群れと戦っていく。
「「「きええぇ!!」」」
「うるさい!」「うるさいわ!」
「「「きょぇ!?!?」」」
とりあえずうるさい!
緑肌のトカゲが奇声を上げながら襲ってきたので、なんかムカつく。
というか、わりかし面倒なので範囲魔法を容赦なく使う。
「アイスレイン&アイスバレット!」
「「「きえぇ!?」」」
「おっと、ダンナには攻撃させないよ!」
「きえっ!?」
今回はアイシアに防御を任せても良さそうだな。
いつの間にか、アイシアの左腕には体を
ただ、どうやって装備を召喚したのかは謎だが……。
「別スタイルの
「ある意味では練習なのか?」
「その辺は細かく気にしなくてもいいわ!」
「お、おう」
突っ込みところは多いが今は戦闘中だし流そう。
俺は氷魔法で迎撃、アイシアはシールドで緑肌トカゲの攻撃を防いだらぶん殴っている。
うん、盾の使い方としてぶん殴る
「この程度の攻撃じゃあアタシの防御は突破できないわよ!」
「誰に言っているんだよ!?」
「そんなの
「真顔で返された……」
俺の常識の方がおかしいのか?
戦闘中なので氷魔法を放ちつつ、アイシアのボケに突っ込む。
すると彼女は楽しそうに笑いながら、腰から片手剣を引き抜く。
「防御もいいけどやっぱり攻めたいわね」
「ま、まあ、
「まあねー! それに連携の練習がメインだし、色々パターンを考えたいわ」
「同じく!」
連携方法のデパートリは増やした方がいい。
アイシアの意見に同調していると、彼女は飛びかかってくる緑肌トカゲを一撃で切り裂く。
「さてと、ドンドン増えるきたしぶっ倒していくわよ!」
「おう! って、なんかゲームのレベリングみたいだな」
「多分変わらないんじゃない?」
「やっばりか!」
俺がソロの時にしてない体験をアイシアと共にやっている。
いろんな意味で考え深い事なので、俺はテンションを上げながら次々と氷魔法を放っていくのだった。
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