第30話・和気藹々なのはいいが……。
アイシアに振り回された結果、荷物が多くなったので俺が借りている学生寮に置きに行った後。
ちょうど夜ご飯時だったので、食べ放題がある焼肉店に入店した。
「夜もたくさん食べるわよ!」
「すごい気合ッスね」
「お、おう……」
昼食で大量の揚げ物を食べたのに、夜も焼肉で大丈夫なのか?
ふと疑問に思っていると、嬉しそうな笑みを浮かべたアイシアがタッチパネルを使って大量のお肉を頼み始めた。
「ちょっ!? そんなに頼んで大丈夫なんスか!」
「まずは軽めに頼んだつもりなんだけど?」
「こ、これで軽め?」
「アイシアはテレビに出ているフードファイターレベルで食べるんだよ」
「そうなんスね……」
見た目は金髪美人でモデル体型をしているアイシアが大食いとはあまり思わないよな。
最初に見た時は俺も驚いたので、当時を思い出しながら一つ頷く。
「俺が言葉で言うよりも実際に見た方がいいか」
「ッスね! あ、ここはダンナのオゴリッスか?」
「そのつもりだけどお前は図太いな」
「図太くなかったら芸能学科でやっていけないッス」
なんか闇が見える言い方なんだけど?
爆山さんの目にハイライトがなくなり、俺はなんともいえない気持ちになる。
ただそのタイミングで真顔のアイシアが雰囲気を軽く変えてくれた。
「ふーん、芸能学科も大変なのね」
「色々大変ッス! てかおふたりは芸能に興味があるんスか?」
「いや無い」「あまり無いわ」
「即答!?」
いやだって今の流れでうなずきたくないもん。
言葉遣いが変になった気もするが、俺とアイシアは首を横に振って否定した。
「俺は歌ったら踊ったりするよりもダンジョン探索をする方が向いているんだよ」
「アタシは婚約者だしダンナを支えたいの」
「ほんとラブラブッスね」
「そりゃもちろんよ!」
すとれーと。
アイシアの言葉に頬が熱くなっていると、店員さんがお肉や野菜などを運んできた。
なのでタイミングがいいと思い、今度は俺が話を変えていく。
「俺達の方は大体こんな感じだけど爆山さんは何かあったのか?」
「うーん、ウチの方はイベントはないッスよ」
「ほうほう」
コチラみたいにイベントの連続にはなってないのか。
刺激が少なく感じるが、安できるので羨ましく感じてしまう。
そう思っていると、お肉が焼けてきたので三人で食べ始める。
「うん、美味しいわね!」
「ッス! この塩だれタンとか特にいいッス!」
「俺はまずサラダからだな」
「女子ッスか!?」「かわいいわね!」
最初にサラダから食べても問題ないだろ!
理不尽にも感じる突っ込みに不貞腐れていると、アイシアがトングを使い追加のお肉を焼いていく。
「ダンナが可愛いのはいつものことだから」
「おお、そうなんスね!」
「そうそう! 他にも色々話せる事はあるけどダンナに嫌われたくないからまた今度ね」
「その時を楽しみにしているッス!」
「お、お前ら……」
マジで恥ずかしい!?
さっき以上に頬が熱くなっていると、やらしい笑みを浮かべていたアイシアが真顔寄りに戻った。
「ダンナをイジるのはこれくらいにして、面白い情報はないの?」
「ダンナ達は戦闘学科だから知っているかもッスが、黒鉄学園のダンジョンで事故があったみたいッスね」
「数日前に大勢の警備隊や風紀部隊が入り口前に集まっていたやつか?」
「それッス!」
実際は関係者だが今は黙っておく方がいいな。
そう思っているとアイシアからアイコンタクトが飛んできたので、コチラが軽く頷くとウインクが飛んできた。
うん、これで理解されたのか?
「アタシらも現場を見ただけであまり知らないのよね」
「そうなんスね! ならウチが知っている範囲で話すッス!」
「頼んだ」
真顔のアイシアが腹芸をしている。
いつもは脳筋っぽいのに腹芸が出来ているので、俺は少し驚きながら冷たいウーロン茶を飲む。
「ウチが知っている範囲だと、新入生で入学した名家の令嬢と取り巻きがダンジョンで遭難したのが発端みたいッス」
「それでダンジョンの入り口に武装した人達が集まっていたんだろ」
「ええ! ただそこから警備隊と風紀部隊がダンジョンの中に入って令嬢達を救出したみたいッスね」
「ダンジョンで遭難して無事に助かるのは運がいいわね」
「ウチもそう思うッス」
ボス部屋を占拠していたボロローブのやり方を思い出していると、アイシアが興味深そうに爆山さんの話に耳を傾ける。
「それで事件は解決したのか?」
「
「まだ続きがあるのね」
「知り合いの情報学科からの筋ッスけど、
荒れている?
ダンジョン内は基本荒れている物では、と思ってしまうが?
ただ流れ的には少し違うっぽいので、情報集めの為に話の続きを聞く。
「それってどう荒れているの?」
「例えばッスけど、事件が解決してもダンジョン内にいるモンスターがアンデット系らしいッス」
「
「ウチもそう思っていたんスけどね……」
つまりボロローブを倒しても出現するモンスターはアンデット系のまま。
そうなるとダンジョン自体が転換期なのか、何かしら追加の問題が起きているのか?
「なんか大きなトラブルが起きそうだな」
「まあでも、何が起きるかは楽しみでもあるわ」
「お、おう……」
「アイシア殿は本当に元気ッスね」
今もガタガタと大量のお肉や一品物を食べるアイシア。
その姿に固まりつつ、俺は焼けたお肉をご飯と共に食べてていくのだった。
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