第39話・また揉め事かな?

 黒鉄学園内にある訓練所の結界フィールド内。

 そこではアイシアに叩きのめされた澪さんが地面に転がっていた。


「思った以上に容赦がないな……」


 最初はアイシアを舐めていたのか、澪さんは俺の時と同じく居合いを放ったが。

 次の瞬間にはなぜ澪さんが後方に吹き飛んだ。


「躾のなってない小娘にはお仕置きよ」


 この一言を放ったアイシアは強化魔法をフルに使い、澪さんをフルボッコ。

 その結果、俺の時よりもボロボロな彼女が地面に転がった。


「これはお嬢様がまた入院しそうですね」


「お、おう……。てか主人がボコボコにされても問題ないのか?」


「そろそろ躾が必要と思ってましたからちょうどいいです」


「あ、はい」


 観客席で俺の隣に座っている田辺さんの真顔が怖い。

 ……雰囲気的に田辺さんを敵に回したくないな。


「いつもやっているお尻ペンペンは最近は効果が薄かったので、ルーンベルク様にお仕置きしてもらえてよかったです」


「なんでその話を俺にするんだ?」


「氷室様はお嬢様の師匠なのでお伝えしようと思っただけです」


「さ、さいですか……」


 マジでどう答えればいいんだよ。

 突っ込みずらい会話なので反応に困っていると、地面に沈んでいる澪さんの体をアイシアが勢いよく掴んだ。


「な、何を!」


「そんなの追加のお仕置きに決まっているじゃない!」


「ちょっま!?」


 アイシアは澪さんのスカートを捲った後、スパッツと下着を……。

 うん、これ以上はやめておこう。


危ない描写アウト判定


 よ、容赦がないな。

 フルボッコにされた挙句、魔力の籠った平手でお尻ペンペン二千回を受けた澪さん。

 彼女のガチ泣きしながらうずくまっていたが、ここで冷たい視線を浮かべたアイシアが一言。


「ウォーミングアップはこれくらいがいいかしら?」


「えっ?」


「とりあえず覚悟しなさいね」


 アイシアはさっきまで四つん這いになっていた澪さんを肩に抱えた。

 もちろん澪さんは暴れるが、アイシアは力強く抱えながら一言。


「それだけ元気があるなら本気でやっても良さそうね」


「ひ、ひいぃ!?」


 その一言でガチ泣きする澪さん。

 ただアイシアは真顔のまめ彼女を控え室の方に向かっていく。

 その姿に俺と田辺さんは思わず固まっていた。


「わ、わたしが澪様にやっているお尻ペンペンよりも厳しいですね」


「とりあえずノーコメントで」


 澪さんはご愁傷様。

 この後、澪さんがどうなったかはあまり語りたくない……。

 そんなわけで二人の勝負が終わるまで、俺ら田辺さんに話を振るのだった。


 ーー


 フルボッコにされた澪さんが治療学科の生徒に担架で運ばれた後。

 付き添いで田辺さんも離れていったので、俺と電話である人物を呼び出す。


「主人に呼ばれてバクガル参上でゴザル」


「ソッチのキャラで行くのか?」


「いや今はプライベートなので素でいくッスよ」


「貴女の口調の変化はややこしいわね……」


 ほんとそれ。

 そう思いながらジュースを飲んでいる爆山さんが不思議そうに口を開いた。

 

「それでウチをカラオケボックスに呼び出した理由はなんスか?」


「担当直入に伝えるが、俺が入院していた時の学園はどうだった?」


「……学園の状況を知りたいならアイシア殿に聞けば良くないッスか?」


「表向きはそうだけどアタシは情報学科にがいないのよね」


「ソユコトッスか」


 コチラが呼び出した理由がわかったみたいだな。

 向こうがどう動くか警戒していると、彼女は真顔のままジュースが入ったコップをテーブルに置いた。


「す」


「「す?」」


「すみませんでしたッス!」


「「……」」


 初手テーブルの上で土下座かよ!?

 驚きの行動に俺とアイシアは目が点になりながら、早口で捲し立てる爆山さん。


「実はキリヤさんとアイシア殿が婚約者と情報学科にリークしたのはウチッス!」


「それは特に問題ないわよ」


「え? じゃあおふたりを隠し撮りして写真を売っていたのは?」


「それはギルティ」


「ひいぃ!?!?」


 何やっているんだコイツは!?

 元々予想していた反応とは別の内容が出てきたので、驚きを通り越して固まってしまう。

 そんな中、アイシアが怒っているのか絶対零度っぽい視線を爆山さんに飛ばす。


「他には何があるのかしら?」


「と、特には!」


「そう? ならお仕置きは後にして情報確認ね」


 アイシアに止まる理性があってよかった。

 一旦ホッとしていると、半泣き状態の彼女が頭を上げた。


「た、助かったッス……」


「落ち着いているところ悪いがコチラの質問には答えてもらうぞ」


「もちろんッス!」


 変わり身が早いな!?

 シレッと部屋のソファーに座り直した爆山さんに呆れるが、それはそれとして改めて質問していく。


「最初に聞きたいのはここ一週間で何か問題は起きたか?」


「うーん、ウチはそこまで知らないッスけど情報学科の友人が変な事を言っていたッスね」


「変な事?」


「前にキリヤさん達へ学園の試練アカデミアスで起きた事故の話をしたッスよね」

  

「一応覚えているわ」


 表向きは警備隊と風紀部隊が解決した話だよな。

 前に聞いた話を思い出していると、爆山さんが不安そうに言葉を続けた。


「ッス! その学園の試練アカデミアスでまたトラブルが起きたみたいッス」


「それってどんなトラブルなの?」


「聞いた話によると、ダンジョン内に入った調査部隊が壊滅したみたいッス」


「「……」」


 その情報は前に地上から聞いた記憶がある。

 なので俺とアイシアは互いに視線を合わせた後、一つ頷き無言のまま内容を聞いていく。


「ここまでならまだいいんスけど、探索許可証を持つ学生が問題を起こしたんスよ」


「また何か起きたのか?」


「強引にダンジョンへ入ろうとして入り口の警備隊に捕まったみたいッス」


「それはアタシも聞いたわね」


 俺が入院している中でそんな事が起きたのか。

 でもまあ、予想の範囲内なので気持ち的にホッとしていると……。

 いきなり爆弾を落とされた。


「この問題には続きがあって、学園側の対応が異様に焦っていたんスよ」


「それってドユコト?」


「聞く話によるとダンジョン内にイレギュラーモンスターが現れたみたいッス」


「それってかなりやばくないか!?」

 

 イレギュラーモンスターは通常のモンスターとか格が違う相手。

 しかも状況によってはダンジョン内を荒らす事から、大体は危険度が高いモンスターとして扱われている。


「しかもウチが集めた情報的に今回のイレギュラーモンスターは強敵の可能性が高いッスね」


「なるほど……。それで学園側の人間はアタフタしていたのね」


「マジかよ」


 色んな意味でやばい。

 そうなると地上に呼び出されるかもしれないので、その事を視野に入れながら爆山さんの話を聞き続ける。

 ちなみに話が終わった後に爆山さんはアイシアから厳しいお仕置きをされてガチ泣きしました。






 

 



 

 

 

 


 


 

 

 


 





 

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