第40話・緊急の呼び出しをされてもな……。
爆山さんから話を聞いた二日後の四月十八日・月曜日の朝。
一週間ぶりに黒鉄学園に登校してきたが……。
「なにこの
「いきなり呼び出してすみません」
「前も言ったが呼び出しじゃなくて連行だろ」
「どっちも大して変わりません」
「だいぶ違うとわよ……」
先週の月曜日と同じく校門付近で風紀部隊の隊員に囲まれた後。
そのままなんの説明もなく
「まあまあ、細かい事は置いといて本題に入りましょう」
「細かくはないけどな」
「ダンナ、このメスガキに突っ込んでも仕方ないわよ」
「それはそうなんだが……」
コイツと話す時は何故かムカつく。
その理由はわからないが、少なくとも相性が良くないのはわかる。
なので俺は気持ちを落ち着けるため、テーブルに置かれた冷たいお茶を飲む。
「クールダウンしたところで話に入りますが、おふたりは今の
「さあ? でも俺達を呼び出したってことは何か起きたんだろ」
「ええ、その通りです」
向こう側としては騒動がおさまって欲しそうだが。
まあでも、俺達を呼び出したって事はそうも言ってられないんだろうな。
自分の中で結論づけていると、不機嫌そうなアイシアが言葉を放つ。
「それで何が起きたの?」
「端的に言えばイレギュラーモンスターの出現と調査隊の壊滅ですね」
「アッサリと言っているがヤバくないか?」
「正直に言えばその通りです」
素直に認めやがった!?
渋そうな表情を浮かべる地上に内心で突っ込む。
「それで調査隊が壊滅した理由がそのイレギュラーモンスターでいいのかしら?」
「間違ってはないですが、生き残った調査隊の報告ではイレギュラーボスがいるみたいです」
「「……はい?」」
おいその情報は知らないぞ!?
イレギュラーボスは通常のボスよりも格段に強い相手で、正規の上位クランの凄腕冒険者が束でかかってなんとかなるレベル。
そんなボスが
「ちなみに正規クランへの依頼は出したのか?」
「それはまだ……」
「学園側ってバカなのかしら?」
「ワタシも同意見です」
流石にバカだろ!
このまま被害が拡大すると、黒鉄学園に大きな被害が……。
「それで学園側はどういった対応をする気だ?」
「いま集まっている戦力で鎮圧させようとしてます」
「その戦力はどれくらいなの?」
「ワタシも把握してないですが、補給部隊を含めても千人いくかどうか……」
第Ⅰ〜Ⅲ戦闘学科の生徒数は三学年揃えて五千四百人くらい。
その生徒全員&支援したとして、戦闘経験が浅い生徒が戦えるかは未知数。
それなら数を絞るのは悪くはないが、どうも嫌な予感がしてしまうな。
「小規模な
「ワタシもそう思います」
「ついでに突っ込むけど、その千人は捨て駒じゃないわよね」
「……」
「反応的に
おいおい……。
捨て駒戦術なんてすれば黒鉄学園がメディアの槍玉に上がるぞ。
ただ突っ込まれた本人も悔しそうに拳を握り締めながら俯いた。
「今回の件は上が決めた事ですのでワタシにはどうしてもないです」
「そう……。ならアタシとダンナも手を貸さないわよ」
「ッ!? 約束を破る気ですか!!」
「破るもなにも報酬を出す気がない相手に戦う理由はないわよね」
「で、でも!」
捨て駒とわかった以上、付き合うつもりはない。
アイシアはキッパリと地上にそう伝えると、彼女は顔を歪ませながら立ち上がった。
「感情論で言われても無理な物は無理よ」
「な、なら、貴女は何が欲しいんですか!」
「そんなの生き残って依頼を達成したいのよ」
「……へ?」
あー、今のでアイシアの狙いが大体わかった。
自分の中で「なるほど」と頷いていると、彼女がチラッとこっちを見た後に言葉を続けた。
「報酬は前に言っていた貴女へのお仕置きと大きな貸しを作る事よ」
「え、えっと? 貴女の言い分的に今の話だと依頼を断るつもりなんですよね」
「
「ツッ!? で、では!」
フフッと不敵に笑うアイシア。
その姿に俺は苦笑いを浮かながら、嬉し泣きしそうな地上の方を見る。
「追加でお金をもらうが、この三つの報酬でいいなら条件付きで引き受けるぞ」
「も、もちろんです! って、条件とはなんでしょうか?」
「アタシとダンナふたりでダンジョンへ下見に行きたいわね」
「ええ!?」
やっぱりアイシアには俺の言いたい事を読まれていたか。
そう思いながら彼女の話を聞いていると、条件を言われた地上が口を開けながらソファに座り直した。
「地形の下見は必要だと思うんだけど気のせいかしら?」
「そ、それはわかりますが今の
「でしょうね! でもアタシ達は入学トップのメスガキ二号に勝っているから大丈夫よ」
「え、えっと? メスガキ二号って九条家の令嬢ですか?」
「そうそう!」
とりあえずイレギュラーモンスターの種類を知ってから戦う方がいい。
「と、とりあえず許可が出るように頑張ってみます!」
「わかったわ!」
「さてと、そうと決まれば俺達も準備するか」
「そうね!」
まだ来てばっかりだが寮に装備を取りに行かないとな。
まだ許可は出てないが、そこは地上に任せて俺達も動き始めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます