第41話・ダンジョンの下見というレッツゴー

 学園の試練アカデミアス前のゲート。

 準備を整えたタイミングで地上から下見OKの返事が来たので、アイシアと共にゲート前に移動してきたが……。

 そこには明らかに重そうな金属防具に大きな斧を背負った見覚えのある男性が立っていた。


「やっと来たか!」


「えっと? なんで郷田先生がいるの?」


「そんなのお前らと一緒にダンジョンの下見に行くからに決まっているだろ!」


「……地上?」


「この攻めは後で受けるので今は流してください」

 

 うん、理解はできるが約束は違うくないか?

 俺の中で許せるか許せないかで天秤が傾いていると、探索用の装備を着た地上が申し訳なさそうに頭を下げる。

 その姿に言いたくなった言葉を飲み込み、落ち着くために息を吐く。


「下見に行くのはこの四人になるのかしら?」


「そうなります」


「監督役はオレがするから思いっきり暴れてこいよ」


「……もしかしてコチラの思惑が読まれてますか?」


「さあな?」


 郷田先生は脳筋だと思っていたが腹芸も出来るのかよ。

 そうなると少し厄介だと思っていると、ゲートを管理している係員の一人が駆け足になりながらコチラに近づいてきた。


「確認は取れました! ではお気をつけて学園の試練アカデミアスの下見をしてください」


「おう、お前らもお疲れさん!」


「は、はい!」


 コチラの計画が狂ったが、何はともあれダンジョン内には入れる。

 なら妥協で仕方ないと理解しながら、他の三人と共にゲートを潜っていく。

 すると、ジメッとした空気感が自分の体に駆け巡った。


「前に来た時よりもジメジメしているわね」


「本来はカラッとした空気なんですが……」


「それだけイレギュラーモンスターが何かやっているんだろうな」


「まあでも、ヤバくなったらオレがなんとかするから思いっきりいけよ」


「「「はい!!」」」


 本来はアイシアと共に下見だったが……。

 ただ実技専門の郷田先生がフルで戦ってくれるなら、もっと奥まで潜れそうだな。

 そう思いながら俺は気合いを入れながら、皆んなと共に第一層のフィールドに降り立つ。


「えっと? 地面の草が枯れてない?」


「前に来た時は普通に生えてたわよね」


 なんだこれ。

 前にボロロープと戦った時でも第一層の草は元気そうに生えていた。

 ただ今は完全に枯れているのか、茶色くなってフニャフニャになっている。


「ワタシは前に見ましたがおかしな光景ですね」


「オレも何回は見ているから慣れてはいるが……」


「これだけだとわからないので奥に向かうか?」


「元々そのつもりよ」

 

 だよな。

 カイトシールドを構えたアイシアが奥の方に視線を向ける。

 すると、ボロボロの包帯服にドロドロとした肌を持つ人型の敵が現れた。


「またアンデット系のモンスターかよ」


「あいつらが今回のイレギュラーモンスターです」


「どう見てもミイラっぽいわね」


「仮名でミイラ呼びするか」


 どうみても気持ち悪いな。

 仮名ミイラのモンスターがノロノロとコチラに近づいてきたので、俺は容赦なく魔法を放つ。


「アイスビット!」


「「「ガガガ!!?」」」


「さすがトップランカーですね」


「これくらいで流石と言われてもな」


「ここだから言えるがお前さんは魔法使いメイジの教員よりも普通に強いぞ」

  

 郷田先生……。

 貴方が突っ込んだらダメなのではと思いつつ、魔法を放ち続ける。

 すると攻撃を受けて地面に沈んだミイラがになって消えた。


「ッ! なんで紫色の煙じゃないんだ?」


「イレギュラーモンスターは赤色の煙になって消えるんだよ」


「色で判断ができるのね」


「ですです!」


 地面に落ちたドロップアイテムは赤い包帯と魔石。

 これだけなら他のダンジョンでも出そうだが、赤い煙の方がどうしても印象に残ってしまう。

 

「一筋縄では行かなさそうだな……」


 最初から分かってはいたが楽はしたかった。

 そう思いながら大きなカイトシールドを持つアイシアを先頭に、俺達は奥に進んでいくのだった。


 ーー


 第一層・第二層を超え、ボスエリアがある第三層に到着した。

 ただ前に来た時の自然が全くなく、荒れた地面が目に映る。


「魔力が明らかに濃くなっているわね」


「ッ! そうなるとイレギュラーボスがいるのか?」


「確定とは言えないけど可能性は高いわね」


「なら気持ちを更に引き締めながら進みましょう!」


「「「待て待て!?!?」」」


 なんで無策で突っ込もうとしているんだよ! 

 薙刀を構えながら進もうとしている地上の方を掴みつつ、俺は反射的に追加のツッコミを入れた。


「お前さっきイレギュラーボスは、正規クランのメンバーが束でかかってギリ倒せる相手と言っていたよな」


「そうですが?」


「それならなんで何も考えずに突っ込もうとするんだよ!」


「ワタシはなので……」


「「「はい?」」」


 ドユコト?

 確か地上は名家の直系で可愛がられる立場だったよな?

 そこで引っ掛かりを覚えていると、アイシアが何かに気付いたのか前を見る。


「ダンナ、遅かったみたいね」


「おいおい……」


 マジかよ。

 ふと周りを見ると半透明な結界が貼られており、俺達は完全に閉じ込められた。


「おいお前ら! なんとしても生き残るぞ!」


「言われなくても分かっているわ!」


「はい!」「……」


 池上からの反応は薄いが構っている場合ではなさそう。

 そう思いながら空中に浮かぶボロロープの上位互換みたいな赤いローブを強く睨んでいく。

 





 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る