第6話・大食い女騎士&ポンコツーが現れた!

 筆記試験や面接などが一通り終了。

 俺とアイシアはギルドビルの四階にある食堂でお昼ご飯を食べていた。  

 ……いや、アイシアがめっちゃ食べているんたが?


「ダンナおかわり!」


「お、おう」


 ご飯は食べ放題だがオカズは有料。

 アイシアは定食三つとご飯を五回おかわりしており、その食欲に少し驚いてしまう。

 ただ本人は満足しているっぽいので、俺は苦笑いで追加のご飯を店員さんにお願いしておく。


「昼ごはんを食べ終わった後はどうするの?」


「結果待ちで遠くにいけないし、近くのショッピングモールに行きたいな」


「ショッピングモールってこの建物の隣にあるお店か?」


「そうそう」


 アイシアは着替えとか持ってなさそうだしな。

 俺はアイシアに服を買いに行くお伝えると、彼女は目をキラキラし始めた。


「コッチの世界の服を買ってもいいのか?」


「予算の都合はあるが大丈夫だぞ」


「! ダンナありがとう!」


「待て待て!? 流石にテーブルを乗り出すな!」


 鎧の重さでテーブルがミシミシ言っているぞ!?

 テンションが上がるのはわかるが、アイシアの喜びようが予想以上なんだが?

 女性はおしゃれが好きなんだと再確認していると、店員さんが追加のご飯を持ってきてくれた。


「どうぞー」


「ありがとう!」


 追加で大盛りのご飯が三杯と残ったオカズ。

 すでに量を食べているはずなのに、スピードを落とさずにアイシアはガツガツと食べ始めた。


「コッチはご飯が美味しいわ」


「そりゃよかった」


「ええ!」


 アイシアの頬がリスのように膨らんでいるな。

 ただ本人は幸せそうなので、俺も満足しながらお冷を飲んでクールダウンする。


「……食べるの早いな」


「流石にお腹が膨れてきたわよ」


「あんだけ食べて余裕と言われなくてよかった」


 フードファイターレベルで食べている気もするが。

 たらふく食べて満足げなアイシアを見て俺は乾いた笑いを浮かべる。

 

「とりあえず店を出るか?」


「ええ!」


 い、勢いがすごいな。

 お冷を飲んていたアイシアがコップを置いた後、俺の腕を掴んで引っ張っていくのだった。

 ちなみにお会計は四千円ちょいで、この程度で済んでよかったと心底思ったのは別のお話。

 

 ーー


 ショッピングモール・エアン西鯱川店。

 学生は春休み期間なので多くの若者が集まっており、カップルや同性の友人達とワイワイやっているみたいだ。

 その中で俺とアイシアは大量の紙袋を抱えながらソファーに座っていた。


「これで必要な物は買いそろったよな……」


「多分?」  


「その反応は少し怖いな」


 紙袋の中には大量の服が入っている。

 というか服だけで十万円くらい飛んで行ったので、昨日の稼ぎが軽く飛んで行った。

 でもまあ、アイシアがにっこりと笑っているので後悔はないな。


「コッチの世界は珍しい物が多いわ」


「アイシアが元いた世界がわからないけど、満足してそうでよかったよ」


「フフッ、一番はダンナと会えた事だけどね」


「うおぅ!? いきなり抱きついて来るなよ」


 アイシアの服装は白銀の鎧ではなくスポーティーな私服。

 前に抱きつかれた時は鎧の硬さしか感じなかったが、今は柔らかな感覚……。

 うん、気にしない方が良さそうだな。

 

「別にいいじゃないー」


「俺はいいんだけど周りからの視線が生暖かいんだが?」


「気にしたら負けよ」


 確かにそうなんだけど気にしてしまうんだよな。

 冷や汗ダラダラになっていると、いじらしい笑みを浮かべているアイシアが勢いよく立ち上がった。


「他に行きたいところがあるんだけど大丈夫かしら?」


「ショッピングモール内ならいいぞ」


「ありがとう!」


 うおっ。

 アイシアに引っ張られる感じで腕を掴まれ、そのままショッピングモール内を連れ回される。


「ん? あの金髪と一緒に歩いているウルフカットの奴って冷血か?」


「ええ!? あの冷血が金髪の美女と一緒にいるの……」


 この時は知らなかったが、知り合いっぽい誰かに見られていた事で大変なことになるとは思わなかった。


 ーー

 

 ホテルに荷物を置いた後。

 結果を聞きに行く為、ギルドビルに到着……したのはよかったが。

 ロビーに集まっていた冒険者達が不思議そうな表情でコチラに振り向いた。


「あいつがギルド教官をフルボッコにしたやつか?」


「噂ではそうみたいだぜ」


「見た目は綺麗なのにお強いのね!」


「クールな雰囲気のまま踏まれたいわ」


「「「え?」」」

 

 ……え?

 なんかやばい発言が聞こえたが、俺とアイシアは受付カウンターに足を進める。

 ただそのタイミングで、見覚えのある冒険者チームに囲まれた。

 

「根暗ボッチが金髪美女と共にいるとはな」


「えっと、ポンコツーの皆さんがお揃いで何か用か?」


「あたしらはポンコツーじゃなくてブレイカーズよ!」


「伸ばし棒しかあってないヤンス!」


 相変わらずうるさい奴らだな。

 男女三人組のポンコツーがなんか怒っているが、この程度の突っ込みも流せないのかよ。

 煽りに対して煽りで返すと相手がキレ始めるたので、どうすればいいんだ?


「この迷惑集団は何者なの?」


「ただの賑やかし屋」


「「「誰が賑やかし屋だ!!」」」


「君ら以外に誰がいるの?」


「急にマジレスしてくるのはやめてほしいでヤンス!」


 三人の中で一番独特な喋り方をする茶髪で小柄な少年。

 残り二人も目立つ髪型をしており、コイツに対しては俺もイロモノ扱いしている。


「ちなみに俺に絡んできた理由はなんなの?」


「そんなのお前が金髪美女と一緒にいる事に驚いたんだよ」


「ついでにネタとしていじりだいと思ったわ!」


「その結果、めっちゃ目立っているでヤンスが……」


「コイツらはアホなのかしら?」


 す、すとれーと。

 図星を突かれたポンコツーことブレイカーズの三人は口を開けて固まった。

 うん、同期の相手だから容赦なく突っ込めるのはありがたいな。


「あ、アホで何が悪い!」


「開き直りやがった!?」


「ボッチの貴方よりも仲間とバカやった方が楽しいのよ!」


「そうでヤンス!」


 コイツらメンタリティがすごいな。

 そう思っていると、ポンコツーの三人は警備部隊に所属しているギルド職員に肩を掴まれていた。


「君達少し流石にしてくれないか?」


「「「え?」」」


 インパクトがあるな……。

 筋骨隆々のお兄さんとお姉さんがめっちゃいい笑顔をしている。

 その姿は色んな意味で濃くて、隣にいるアイシアも微妙な表情で固まった。


「あ、呼ばれているからまた後でな」


「ちょっ!? しれっと置いていくんじゃね!」


「君達?」


「「「ひいぃ!?!?」」」


 ま、巻き込まれなくてよかった。

 内心でホッとしながらアイシアと共に、ポンコツーから離れていく。


「芸人としては面白そうな奴らだったわ」


「ま、まあ……」


 でもまあ、アイツらの明るさで助けられている部分はあるからな。

 そう考えるとポンコツーに絡まれるのも悪くないか。


「意外と取りこぼしていたかもしれないな」


 自分が見ようとしなかった範囲。

 これがあるんだと勉強になったので、ポンコツーに感謝しながらアイシアと共に受付カウンターに向かうのだった。

 




 

 

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