とんでもない誘いと発言

 ハルリオン達は水色の髪の男の話を聞いていた。


 この男の名はロイビノ・セジブ、二十五歳。リュコノグル国の王立騎士養成学園の教師である。

 因みに騎士養成学園とは、その名の通りなので……やっぱり説明を省く。


 そして、ロイビノが説明し終える。


(ロイビノか、名前と噂ぐらいなら聞いたことがある。騎士としては、かなりの手柄を立ててたはずだ。最近、名前を聞かないと思っていたが……教師にな)


 そう考えたあとハルリオンは口を開いた。


「なるほど……騎士学校の教師か。そんで、迷子になったペットのバットキャットを探すため森に入った」

「はい、檻籠から逃げ出し森に……。それで、みつけたまでは良かったのです。まさかバットキャットが、フレイヤウルフを攻撃するとは思いもよらず」

「確か……その時アタシが通りかかって剣で攻撃したの。そしたらね、攻撃して来たんだよ。酷いよね」


 そう言いメイミルは、プクッと頬を膨らませる。


「……それで逃げてたってことか。てかなぁ、酷いじゃねぇだろう! フレイヤウルフは、攻撃した相手を襲う……前に教えたはずだぞ」

「てへ……そうでした。アハハハ……」

「ハハハ、じゃねぇ。ハァ、まぁいい。それで、そのバットキャットは?」


 そうハルリオンが問うとロイビノは、来た道を振り返り森の方を指差す。


「恐らく、まだ森の中に居ると思うのですが」

「まだ……って!? 探さないとまずい。バットキャットは、魔物や魔獣よけとしてペットにもなる。だが、元々魔獣だ。それに魔獣や魔物をみると攻撃するだろう」

「ええ、そうですが大丈夫でしょう。気が済めば、私の所に戻って来ますので。それよりもお嬢さん、若いのに物知りですね。学園に招待したい……ただ、言葉遣いが難点かなぁ」


 そう言いロイノビは、至って冷静である。


「随分と余裕だな……て、いうか。オレがどんな話し方しようと、お前には関係ないだろう!」

「いえ、そんなに可愛らしいのに……言葉が汚いのはもったいないと思いますよ」

「か、可愛い……。オレは、別に……」


 そうハルリオンは言いかけた。

 するとカールディグスは、ハルリオンの目の前に立ちロイノビを凝視する。


「これはハルリア嬢が、とんでもない失言をしてしまい申し訳ありません。そうそう……僕は、カールディグス・ルビアと申します」

「これはこれは、ご丁寧に……。それで彼女とは、どういったご関係かな?」


 そう言いながらロイノビは、カールディグスをジト目でみた。


「ハルリア嬢は、僕の婚約者ですよ。ですので、手を出さないでください」


 それを聞いたハルリオンは、否定しようとする。だがルミカに口を塞がれて、メイミルに体を押え込まれ阻止された。

 しかしなぜかハルリオンは、二人を払い除ける訳でもなく……却って喜んでるようだ。


(……まぁいいか。それに、ずっとこの体勢のままで居たいんだが)


 こんなことを考えてるとも知らずルミカとメイミルは、更に体を使いハルリオンを押え込む。

 ハルリオンの脳内は……やはり敢えて言わないでおこう。


「し、ハルリア。今は黙っていた方がいいかと」

「そうそう……ルミカの言う通りですよ。カール様に、何か考えがあるのかもしれませんし」

「う、ううっん――……(わ、わかった――……)」


 そう言いハルリオンは頷いた。

 二人は言っていることを理解していない。だが、頷いたためハルリオンを解放する。


「ほう、婚約者ねぇ。そうは、みえませんが」

「みえないとは? そもそも、それはどうでもいいこと」

「確かに……そうですね。ですがハルリアさんには……是非、我が学園に来て頂きたい!」


 それを聞きカールディグスは、ジト目でロイノビをみた。


「それは騎士候補生としてですか?」

「ええ、勿論です。実は、女騎士団を強化したいと。そのためハルリアさんに入って頂きたいのですよ」


 そうロイノビが言うと、ハルリオンは呆れ顔になる。


「オレが入って強化できるとも思えんが。女騎士候補生か……」


 そう言うとハルリオンは思い考え始める。


(女ばかりか……野郎よりはマシだな。それに、見放題か……)


 そう脳裏に浮かべるとハルリオンは、ニタアッと笑みを浮かべた。


「ハルリア、どうしたのですか? いきなり笑ったと思ったら、ヨダレが出てますけど」


 そうルミカに言われハルリオンは、慌てて手でヨダレを拭う。


「いや、なんでもない。それよりも、学園に行く件……」


 そうハルリオンは言いかける。


「いえ、イケません! ハルリア嬢には、これから我が屋敷に来て頂き……花嫁修業をして頂くのですから」


 そう言いカールディグスは、顔を赤らめた。


「な、何を言って!?」


 ハルリオンがそう言うもルミカとメイミルに口を塞がれる。


「それはそれは、ですがハルリア様はまだ十五歳ぐらいにみえます。ですので、礼儀指導なども学園で行えますが」


 そうロイノビに言われカールディグスは、返す言葉に困った。

 その後もカールディグスとロイノビの言い合いは続く……。

 そしてそれをハルリオンは、呆れながら聞いていたのだった。

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