本名と買い物と我を忘れると

「どこから話せばいいかなぁ……そうだね、名前からにするか。アタシの本当の名前はメイフェミール・ヴィムデだよ」


 そう言いメイミル……メイフェミールはティオルとパルキアから目を逸らした。


「でも、なぜ偽名を使って見習いとして隊に入ったのですか? そんなことをしなくてもコネで入れたと思いますが」

「ティオル様、あのお父さまが認めてくれる訳ないです。それにどこの学園にも行かせてくれなかったんですよ」

「……どういう事だ? 普通なら学園に入れて教養を身に着けさせるのが普通じゃないのか。まぁオレの家は貧しかったから、それができなかったけどな」


 パルキアにそう言われメイフェミールは俯き言葉を選び話し始める。


「そうだよね。でも家から出ることさえ認めてくれなかった。だから嫌で、ううん……それだけじゃない。好きでもない人と結婚させられそうになったの」

「そういう事ですか。ですが……そうだとしても、なぜ兵団に?」

「師匠の噂を聞いてたし……ちゃんと実戦で学びたかったから」


 そう言いメイフェミールは真剣な表情でティオルをみた。


「女好きだという事をですか? 確かに女性には手取り足取り優しく接しますからね」

「…………あーえっと、なんの実戦を考えてるんですか!?」


 メイフェミールは顔を赤くして、アタフタする。

 そばで聞いていたパルキアは変な妄想をしてしまい顔が茹蛸のように赤くなっていた。


「フフッ……冗談ですよ。そうですか……あの鬼のように厳しかったダギル元隊長がねぇ。こんなにも娘に甘いとは……」


 そう言いティオルは溜息をつきメイミルをみる。


「甘いのかなぁ。と云うか……お父さまが鬼のように厳しかったって本当なの? 家ではお母さまにペコペコしてたけど」


 それを聞きティオルとパルキアは目が点になった。


「外と中では違うと云う訳ですか……想像したら、ハハハハハ……笑いが……」

「クククッ……確かに、駄目だおかしい」


 ティオルとパルキアはそう言いながら涙目になっている。

 それをみてメイフェミールは、なぜかつられて笑っていた。


 ★☆★☆★☆


 ここはカンロギの町の商店街。

 その街路をルミカとセリアーナとマルルゼノファとシャルルカーナは話をしながら歩いている。


「便箋と頼まれた食料とかも買いましたし……あと何か買う物はありますか?」

「ルミカ先生……すぐ戻った方がいいですよね?」


 そうセリアーナに問われルミカは、どうしようかと考えた。


「そうねぇ……すぐに戻らなくても見張りが三人も居るし大丈夫かな」

「それなら店をみて歩きませんか?」

「セリアーナ、それいいわね。私もお洒落な店とかみて歩きたいわ」


 そう言いシャルルカーナは目を輝かせている。


「俺は武器とか装備品をみたい」

「分かったわ。但しみんなでみて歩きましょうね」


 そうルミカに言われ三人は、コクッと頷いた。



 ――場所はべマルギの町に移る――


 ここは冒険者ギルドの中だ。周囲には多種な種族の冒険者が居て話をしている。

 ハルリアとカールディグスとピュアルはここに来ていた。


 そして現在、三人は受付カウンターの前にいた。

 ハルリア達の目の前には黄色で緑のメッシュが入った髪の女性が、ニコニコして立っている。このギルドの受付嬢らしい。


「あら、ピュアルじゃない」

「ヒナギクサン、オヒサシブリデス」

「そうね。元気だった?」


 そう言い受付嬢はピュアルに問いかける。


 この受付嬢はヒナギク・ボタン、二十五歳だ。


「ウン、ボクハゲンキダヨ」

「それなら良かったわ。トンナナの村が軍に襲われたって聞いて心配してたのよ」

「シンパイシテクレテ、アリガトウ。ソウダネ、ムラノミンナハ……」


 そう言いピュアルは思い出してしまい俯いた。


「ピュアル、話しているところ悪い。この綺麗な女性を紹介してくれないか?」


 ハルリアはそう言い、なぜか口説きモードに入っている。

 だが、この姿では無意味としか云えない。


「……あら? 可愛らしいわね。もしかして男性よりも女性が好きとかかしら、クスッ……」


 そう言われハルリアは我に返り顔を赤くした。

 その後カールディグスに怒られる。

 そしてハルリアとカールディグスは、ヒナギクにここに来た理由を話した。

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