剣術、対物の試験③

 ここは女子の控室。

 ハルリアはセリアーナと話をしていた。


(……なんだ……この鋭く突き刺さるような視線は?)


 そう思いハルリアは周囲をみないよう探る。


(一人だけだな……でも、どういう事だ?)


 そうこうハルリアは考えている。


「ハルリア、そういえば五番よね。終わったら待ってて」


 そう言われハルリアは頷いた。


「ねぇ、貴女……ちょっと目立ちすぎじゃない?」


 濃いめの青で編み込みをしている女性が、そう言い二人のそばに近づいてくる。


「あのぉ、それって失礼じゃないかしら」


 そう言いセリアーナはその青い髪の女性を睨んだ。


「あーえっと……喧嘩ならやめましょう」

「喧嘩? そんな訳ないでしょ。と、いうかぁ……私は貴女に言っているのよ」


 青い髪の女性はそう言うとハルリアを指差した。


「ワタシ? それってどういう事でしょうか」

「さっきの対戦試験のことよ。どんな卑怯な方法で勝ったのか分からないけど……そんなに、目立ちたいのかしら」

「ちょっと待って……ハルリアが不正をしたって云うの?」


 そうセリアーナが問うと青い髪の女性は、ジト目で二人をみる。


「そうじゃないとでも云いたそうね。でも……女性が男性に勝つなど……それも、あんな簡単に倒せる訳ありませんわ」

「それって……」


 そうセリアーナが言いかけた。


「待って、セリアーナ」


 そう言いハルリアはセリアーナの発言を遮る。


「ハルリア……」


 セリアーナは心配に思いそう言いハルリアをみた。

 それに気づきハルリアは、軽く頷く。そして青い髪の女性を、キッと睨む。


「そうね……そう思われても仕方ないわ。ですが、女性は男に勝てない……それって偏見でしかありません」

「偏見? 何を馬鹿げたことを言っているの。腕力の差で、明らかに男の方が強いに決まってますわ」


 そう青い髪の女性が言うとハルリアは、呆れた顔になる。


「そうですね……腕力なら男性の方があります。ですが、女性でも男性に勝つ方法はありますわよ」

「男性に勝つ方法? 本当にあるのですか」


 青い髪の女性はハルリアのその言葉に興味を示した。


「ええ、それは剣技よ」

「剣技……剣の技で、勝てる。じゃあ、貴女は剣技で勝ったという訳なの?」


 そう青い髪の女性に問われハルリアは頷く。


「剣技……って云うほどではありませんが。日頃から対人戦での練習を重ねていれば、自ずと相手の動きが分かってくるの」

「では私も、多少なりと強くなれるでしょうか?」


 さっきとは態度を変え青い髪の女性はそう問いかける。


「ええ、貴女次第では多少どころか強くなれますわ」


 そうハルリアに言われ青い髪の女性は涙を流し喜んだ。


「ああ、それが本当なら……兄を見返すことができる」


 そう言い青い髪の女性はハルリアの手を握る。

 ハルリアは手を握られデレている。


「お兄様に勝ちたいのですね。普通に、ピーを蹴ればいいと思いますが」


 そうハルリアが言うとセリアーナと青い髪の女性は、目を点にして顔を赤らめた。


「あ、そうでしたわ。申し遅れましたが……私は、シャルルカーナ・ヴィクトノス。……よろしくですわね」

「あ、私はセリアーナ・サフランよ……よろしくね」


 そう二人が挨拶していたがハルリアは、一瞬言葉に詰まる。


「あ……ワタシは、ハルリア・アルパスですわ。……よろしくお願いします」


 そう言い頭を下げた。


「えーっとシャルルカーナは、もしかしてマルルゼノファの……」

「ハルリア、ええ……そうよ。マルルは、私の双子の兄なの」


 それを聞きセリアーナは、驚き仰け反る。


「じゃあ、今まで……私たちが一緒に居たことも知ってましたよね?」

「そうね……セリアーナと話している所もみてたわ」

「もしかして、勝ちたいお兄様ってマルルゼノファですか?」


 そうハルリアが聞くとシャルルカーナは首を横に振った。


「二番目の兄、アイノスベゼルですわ。いつもマルルに、酷いことを言うのよ」


 そう言いシャルルカーナは、ムッとした表情になる。

 そしてハルリアとセリアーナは、その後もシャルルカーナの話を聞いていたのだった。


(まさか……マルルゼノファに双子の妹が。バドルフ様は、シャルルカーナのことを一度も話したことがない……どういう事だ?)

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