剣術、対物の試験④

 ハルリアはセリアーナとシャルルカーナと話をしていた。

 その後、控室にいる女子がハルリア達の周囲に集まってくる。そして、しばらく話をしていた。

 するとノックされ扉が開く。その後、女性教師が中を覗きながら五番と言う。


「あ、呼ばれたわ。それでは、失礼しますね」


 そう言いハルリアは席を立った。


「ハルリア、頑張ってね」

「頑張らなくても大丈夫よ、セリアーナ。ハルリアなら余裕ですわ」


 そうシャルルカーナが言うと周囲に居る女子たちは、ウンウンと頷く。


「あーそうね……ハハハ……」


 ハルリアは苦笑する。そして、部屋を出ていった。


 それを確認するとセリアーナとシャルルカーナは、再び女子たちと話を続ける。


 ★☆★☆★☆


 ここは対物試験をする場所。

 ハルリアは呼びに来た女性教師とここにきた。

 現在ハルリアは、スタート地点に立っている。


(どんな仕掛けがされているんだ。恐らく仕掛けは、トラップ魔法の類だろう。そうなると……地面に仕掛けてあるとは限らない)


 そう思考を巡らせながらハルリアは、コースの先を見据えた。

 するとスタート地点に居る教師が「スタートっ!!」と言い放った。

 それを聞いたハルリアは、その合図と共にスタートする。それと同時に剣を抜いた。


(どこからくる?)


 そう思いハルリアは、走りながら辺りを警戒する。


「……!?」


 すると背後に無数の針が現れ、それは物凄い勢いでハルリアを襲った。

 それに気づきハルリアは、避けながら振り返り剣で叩き落す。

 しかし休む暇なく、両脇から炎の塊が無数に現れハルリアへと向かっていく。


(クッ……オレを殺す気か?)


 そう思いながらハルリアは、その炎の塊も難なく避ける。


(……オレならなんとか避けられるが……まさか、他の受験生も同じ試験内容なのか? だったら死ぬぞ……)


 そう思考を巡らせハルリアは、あらゆる攻撃に対処しながら走り抜けていった。


 ★☆★☆★☆


 ここはコースの内側。その中央には、ダギル学園長とロイノビがいる。


「……す、凄い……最初はこの内容でクリアできるのかと思いましたが」

「ロイノビ、ある確信を得たくてな。ハルリアのみ、他の受験生とは違うメニューにした。だが、やはり似すぎておる」

「それは、ハルリオン様にでしょうか?」


 そうロイノビに聞かれダギル学園長は頷いた。


「ここまで似るものだろうか? もし、ハルリアがハルリオンの子供だとしてもだ」

「それなら書いてある通り、弟子だからなのではないでしょうか」

「いや、それでもだ。癖性分まで、似るとも思えん」


 それを聞きロイノビは考える。


「そうなると……学園長からみて、そこまでも似ているという訳なのですね」

「ああ、ハルリオンは……ほぼ自己流だからな」

「自己流? それは、どういう事なのですか」


 ロイノビは言っている意味が分からず困惑した。

 そう騎士や兵士になる者は、殆どがどこかの学園か養成所を出ているからだ。

 ただ、傭兵や誰かの弟子だったりでなる者もいるが希である。


「ハルリオンは、傭兵から成り上がった」

「傭兵……まさか……じゃあ、誰からも剣を習っていないのですか?」

「さあな、そこまでは分からん。…………ハルリオンは……英雄と云われたあの黒龍族との戦いの時に、傭兵として雇われた者だ」


 そう言いダギル学園長は、その時のことを思い出していた。


「じゃあ、その時に学園長の隊に入ったのですね。ですが、なぜ聖剣士と言われているのでしょう?」

「そのことか……それは簡単だ。ハルリオンの使う剣技や魔法から、その称号が付いたからな」

「なるほど……それ程に、凄いという事ですね」


 それを聞きダギル学園長は頷く。


「ハルリアは、千メートル……簡単にクリアしそうだな」


 そう言いダギル学園長は、再びハルリアを見据える。


「ええ、そうですね。学園長、先程のハルリアに対して気にしていることとは……まさか本人という訳じゃないですよね?」

「うむ、それはあり得ん……だから困惑しているのだ」

「なるほど……」


 そしてダギル学園長とロイノビは、その後もハルリアが千メートルを走り切るまで話していたのだった。

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