指導と後ろ姿

 あれからハルリアは、カールディグスに散々言われる。

 その後ハルリアは、渋々馬を選んだ。


 そして現在ハルリアは、馬を引き連れ乗馬コースに来ていた。

 勿論、カールディグスも一緒である。


「まさか、ハルリア嬢の頭を噛んだ馬を選ぶとは……」

「選んでたら、ジーっとみてたからな。それに……」


 そう言おうとしたその時……――カパッ!!――……青毛の馬がハルリアの頭を軽く噛んだ。


「は、ハルリア嬢……相当なめられてますね。アレだけ、殺されかけたのに……」

「ああ……そうだな。まあ……いい、これ以上のことをしてくるようなら……〆てやるだけだ」


 ハルリアはそう言うと青毛馬の口を押え自分の頭から、スポンっと押し剥がした。その後、青毛の馬を睨みつける。

 それを知ってか知らずか青毛の馬は、媚びるようにハルリアの頬をなめた。そう、ただ単にハルリアに構って欲しいだけなのである。


「クスッ、この馬はハルリア嬢が好きなんですね」

「そうなのか? なるほど……これは、愛情表現て訳か」


 青毛の馬は、またハルリアの頭を軽く噛んでいた。そのためハルリアの頭はヨダレだらけである。


「そ、そうだと……思いますよ。でも、馬にまで好かれるって凄いですねぇ」


 そう言いカールディグスは、ジト目でハルリアをみた。


「……流石に馬じゃなくて人間の女がいい。っていうか、コイツは牝馬と牡馬……どっちだ?」

「牡馬ですね。それと名前が、ハルリオフだそうです」

「ハルリオフ……なんか悪意しか感じないんだが」


 そうハルリアが言うとカールディグスは、ハハハッと笑う。


「では、そろそろやりますか……時間もなくなりますしね」

「そうだな。余り気が進まんが」


 そう言いハルリアは、ハルリオフの口を自分の頭から押し剥がした。


「これは、終わったら即シャワーだな」

「そうですね……クスクス……」

「ハァー、やるか」


 そうハルリアが言うとカールディグスは、コクリと頷く。

 その後ハルリアは、カールディグスに手伝ってもらいハルリオフに跨る。


? かなり高いんだが……」

「僕を信じてください」

「いや……お前だから信じられん」


 そう言われカールディグスは、ムッとした。


「そうですか……そうですね。それなら、自分で勝手にやってください。僕はみていますので」

「カール、本気か?」

「ええ、それが冗談だとしても……言っていいことではありませんよね?」


 カールディグスにそう言われハルリアは反省する。


「すまん……悪かった」

「本当に反省してますか?」


 そう問われハルリアは、ウンウンと頷いた。


「まあ、いいですけど。じゃあ教えますので、ゆっくりやりますよ」


 そう言いカールディグスは、ハルリアに手綱の持ち方や色々と初歩的なことを教える。


(これが英雄と云われたハルリオン……前々から思ってたけど、ただの我がままで変態なオッサンにしかみえない。でも……強さは、野性的な何かを感じるけどな。

 ……僕は、どうなのか。いつの間にか、隊長の一番近くにいる。ただハルリオンの後ろ姿さえ……みることができればよかった。それだけなのに……)


 そう思いカールディグスは、指導をしながらハルリアをみていたのだった。

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