消えたハルリア(ハルリオン)
「……鍵がかかっていない」
ティオルはハルリアの部屋の扉をノックすると開ける。その後、中を見回した。
「……」
何かを悟りティオルは呆れ顔で部屋の中に入る。
(やはり……でしたか)
そう思いテーブルの方へ向かった。
テーブルのそばまでくると便箋が置かれていることに気づき手に取る。
(意味不明ですが。なんとなく居なくなった理由は分かりました。しかし……相変わらず身勝手ですね)
頭を抱えティオルは首を横に振った。その後、自分の部屋に戻る。
それからティオルはカールディグスが居る倉庫へと向かった。
★☆★☆★☆
ここはカンロギの町の倉庫内。
現在ここには捕虜三人を監視しているカールディグスとティオルがいる。
カールディグスはティオルから便箋をみせられ顔が青ざめていた。
「……最悪だ」
「カール……そうですね。それにその便箋に書かれている内容の意味は分かりますか?」
「多分だけど……暗号文になってるよな」
それを聞きティオルは頷き、ニコリと笑みを浮かべる。
「じゃあ暗号を解きましょうか」
「いや、もう解いてるよ……これ単純すぎだ」
「……なるほど、流石ですね。それでは説明してもらえますか?」
そう言われカールディグスは便箋を地面に置き説明し始めた。
【わたしは少し散歩してきま
す。ですので、けしてマー
ルエメスを探る
わけではないので、うえ
に連絡しないでください。め
んどうなので。こっちのことは任せます
お土産を
たくさ
ん持ってきますので、ぐ
んを動かさないようにな。何度も言うがみてくるだけだ。ぜっ
たいに探すなよ。それよりも、捕虜の三人って
いく
つなんだろうな。まあいいか、とりあえず自白させるのにしばらくかかる
だろうがなるべくころさ
ないようにしたいが
難しいだろうな。とりあえず、す
ぐ戻るからな
追伸.背後に気をつけろ
可愛い、ハルリアより♡】
と書かれている。
「……背後に気をつけろ。という事は後ろに気をつける……そしてこの読めそうで読めない文章。ってことは後ろの文字を読む」
「んー……まーるえめすをさぐってくるさがすな……マールエメスを探ってくる探すな。あーなるほど、そういう事ですか」
「そういう事です。だけど、どうしたらいい……恐らく徒歩で向かったと思う」
そう言いカールディグスはティオルをみた。
「でしょうね。それにハルリアのことですから正規ルートを通らないでしょう」
「……そうなると、みつけるのに厄介だな」
「ですね。本当に困ったものです……自分の立場を理解していない」
ティオルはそう言うと、ハァーっと溜息をつく。
「本当です。だけど、どうする? 探すなと言われても、そうはいかない」
「そうですね……追いかけないとまずいでしょう。ハルリアのことですから……何をするか分かりません」
「そうだな……だが捕虜をこのままにして置けない」
そう言いカールディグスは三人の捕虜へ視線を向ける。
「確かにですね。カール……ここは私がみていますので追ってください」
「それはいいけど……ルミカ達が来たらどうする?」
「それなら連絡をしておきます」
カールディグスはそう言われ頷いた。
「どこを通っていったかは分からないけど、とりあえず馬で追いかける」
「そうそう……そうなるかもしれないと思い私の部屋に置いていった荷物を持って来ましたよ」
「助かる……って、ハルリア嬢の荷物は?」
それを聞きティオルは、カールディグスの荷物を指差す。
「その中に置いていった物を入れてあります。必要な物だけ持っていったみたいですね」
「なるほど……じゃあ着替えたら、ここをすぐに発つ」
そう言いカールディグスは冒険者風の服に着替える。そう、なるべく怪しまれないようにするためだ。
その後カールディグスは、ここをティオルに任せて倉庫を出るとハルリオフの居る所まで駆けだした。
そしてハルリオフに乗るとハルリアを追いマールエメス国へと急ぎ走らせる。
ティオルはカールディグスが倉庫を出ていったことを確認すると便箋に書き込んだ。そのあとルミカ宛てに魔法で送った。
(さて……しばらくは空腹との戦いになりそうですね)
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