それぞれの思考

 ルミカが受付を終え次はメイミルだ。

 受付にメイミルは、書類と紹介状を渡した。


「メイミル・セルビノズ、二十歳……兵団第一部隊所属。んー……」


 そう言うと受付の男性は、メイミルを疑いの目でみる。


(えっと……まさか、バレてないよね?)


 メイミルは何かを隠しているようだ。


「本当に、二十歳ですか?」


 そう言われメイミルは、胸を撫で下ろす。


「はい、間違いなく二十歳です!」

「……まぁ紹介状もありますし、問題ないでしょう。では、これを……――――」


 そう言い受付の男性は、六番の腕章と書類をメイミルに渡した。

 それを受け取るとメイミルは、後ろに居るカールディグスの方をみる。

 するとカールディグスは、口を塞ぎ笑いを堪えていた。


「ムッ、カール様!?」


 それに気づきメイミルは、プクッと頬を膨らまし怒っている。


「あーごめんごめん、プッ……」

「まぁいいです。あとがつっかえてますよ」

「そうだな……」


 そう言いカールディグスは、受付の方へ向かう。

 それを確認するとメイミルは、ルミカが待つ場所に向かい歩きだした。


 カールディグスは書類と紹介状を受付に渡す。

 それをみた受付の男性は、驚き立ち上がり直立し頭を下げる。


「これは、兵団第一部隊の副隊長カールディグス・ルビア様。お噂はかねがね聞いております。まさか……貴方のような方が、我が学園の教師試験を……」

「あーえっと、今仕事がなくてね。偶々みつけたから、やってみようかと」


 そう言いカールディグスの額を一滴の汗が流れ落ちた。


「なるほど……色々あるのですね。分かりました……頑張って下さい」


 受付の男性はそう言い椅子に座ると、七番の腕章と書類をカールディグスに渡す。

 それを受け取りカールディグスはルミカ達が待つ場所に向かう。

 その場に居た者は、目で追うようにカールディグスを見送る。


(ハァ~、予想はしてたけど……視線が痛い。それも、なんでみてるのが男なんだ? まぁいいかぁ……)


 そう思いながらカールディグスは、周囲をみないように身を縮め歩いていた。


 ★☆★☆★☆


 一方ハルリアは、生徒の試験受付の方にいる。そしてその場で書類に記載していた。それを受付にみせる。

 受付の女性は、隅々まで目を通した。


「確認させて頂きます。ハルリア・アルパス、十五歳、剣術が得意……――――……師匠ハルリオン・ヴェグス…………。エエェェェエエエエー!?」


 そう言い受付の女性は、驚き仰け反る。


「あーえっと……これは、本当なのでしょうか?」

「あ、ええ……ですが師匠は行方不明らしくて」


 そう言いハルリアは、悲しい表情で俯いた。因みにこれは、流石に演技である。


「なるほど……そうなのですね。分かりました……それが本当かどうかは、試験で分かりますので。それでは、受験用の腕章と書類をお渡しします。あと試験は明日ですので」


 そう言い受付の女性は、十九番の腕章と書類をハルリアにわたした。

 複雑な気持ちになりながらハルリアは、それらを受け取る。


(これでいい……下手に隠しても、分かるヤツは……剣筋で気づく。なら、敢えて誤魔化すより……師匠として書いておいた方がいい。

 それにしても……19……いく……イク……か。まぁ悪くねぇ番号だな)


 そう思いながらハルリアは、ルミカ達の方へと向かい歩き出したのだった。

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