取り合いと褒め合い

 ハルリアはマルルゼノファと一緒に、最初に対戦する組を観覧していた。勿論ハルリアは、一緒に居たくないのだが……。


「なるほど……番号札は、このためか」


 そう言いながらマルルゼノファは、真剣な表情で対戦をみている。


「ええ、そうみたいですわね」


 ハルリアは適当に返答した。


「あっ、ハルリア。ここにいたのね……探したわよ」


 その声を聞きハルリアは、振り返る。


「セリアーナ、そうなのね」


 そうハルリアが言うとセリアーナは頷いた。そして、ハルリアのそばまでくる。


「ごめんなさい、ここいいかしら?」


 そう言いセリアーナは、マルルゼノファをみた。


「あっ、だが……他も空いてるぞ!」

「そうですわね。ですが、私はそこがいいのです」

「言っている意味が分からないんだが」


 なぜか二人の言い合いが始まってしまう。

 それをみたハルリアは呆れた表情になる。


(ふぅ~、これじゃ落ち着いてみてられん。それに、他の者の迷惑になる……仕方ない)


 そう思いハルリアは、持っていた木の剣で二人の頭を軽く叩いた。


「いい加減にして、騒いでると迷惑になるわ。それに、いいところを見逃したらどうするの」


 そう言いハルリアは、二人を睨みつける。


「そうだね……ごめんなさい」

「いや、僕こそ申し訳ない。どうしても、ハルリアさんのそばで観戦したかったんだ」

「私も、ハルリアと……。でも、違う方が空いていたわね」


 ばつが悪くなりセリアーナは、そそくさとハルリアの左側の席に着いた。


「……一試合目、終わっちゃったわ。どっちが、勝ったのかなぁ」


 そう言いハルリアは、がっかりする。


「そうだな……残念だ」

「本当に……ごめんなさい!」


 本当に申し訳ないとセリアーナは、手を合わせ深々と頭を下げた。


「まぁ、いいわ。それより、ワタシの順番……もうすぐだから準備してくるわね」


 そう言うとハルリアは、立ち上がり歩き始める。


「ハルリア、頑張ってね」

「頑張ってください、ハルリアさん……応援しています!」


 二人はそう言いながら手を大きく振った。


 それをみたハルリアは、軽く手を上げる。


「ええ、勿論ですわよ」


 そう言いハルリアは、札をみせるため教師の方へ向かった。


 それを確認すると二人は、話し始める。


「行っちゃったわね」

「そうだな。ああそうそう、僕は……」


 マルルゼノファは自己紹介し始めた。

 するとセリアーナも自己紹介する。


「ねぇ、マルルゼノファって……もしかしてハルリアのことが好きなの?」

「ああ、好きだ。いや……一目惚れ、って言った方がいいだろうな」

「そうなのね。ハルリアって、女の私がみても可愛いし……なんか惹かれるものがあるのよ」


 そう言いセリアーナは、うっとりとした。


「分かりますよ。僕も今日、出逢ったばかりですが……惚れましたから」


 なぜか二人は、ハルリアのいい所を言い合いし始める。そして、盛り上がっていたのだった。

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