増える敵と軽視する敵

 ここは宿屋の一階。

 ティオルは敵を追いかけながら、そばに居る宿の者へ事情を簡単に話した。……器用である。

 一方カールディグスは、タールベを抱きかかえながら宿屋の外へでた。そのあとを敵が追いかけてくる。


(……って、よく考えたら僕の方を襲ってくるのが当たり前だ。それよりも、敵の数が増えてないか? まさか援軍……。

 もしこの町に多くの敵が紛れていたとしたら……まずい。ハルリア嬢……大丈夫だと思うけど。クソッ……なんで、あの時……気づかなかった)


 そう考えながらカールディグスは片手で剣を振り敵を斬っていった。

 そのあとを追いかけティオルは敵を倒していく。


(これは……最悪です。恐らく隊長は、このことを予想していたかもしれない。だから援軍を要請したのでしょう)


 そう思考を巡らせながらティオルは戦っている。


(……できるなら殺したくはないが……致し方ないか)


 そう思いティオルは敵を次々と斬っていった。


(なんとかティオルが敵を減らしてくれてる。でも……どうやって、こんなに援軍を? まさか向こうには転移の魔法を使える者がいるのか……)


 そう考えながらカールディグスは向かいくる敵を斬っていく。


 ★☆★☆★☆


 ここは商店街の手前にある倉庫が立ち並ぶ街路。周囲には誰も居ない。

 あれからハルリアは、ここまでくる。そして何を思ったか建物との間に入り路地裏へと歩き出した。


(ついて来てるな。一人か? オレを軽視してるってことか。それだけ強者なのか……馬鹿なのかだよな。まあ、どっちにしても警戒した方がいい)


 そう思いながら更に奥へと進んだ。

 一方ハルリアのあとをつけているハンナベルは、なんでこんな所に来たのかと不思議に思っていた。


(この先に何があるというの? まさか……仲間との待ち合わせ場所ってことはないわよね)


 そう考えハンナベルは先を歩くハルリアを見据える。

 ハルリアはひたすら歩き路地裏の広い場所まできた。そこは何もない広い場所である。


「ここまでくればいいかしら」


 そう言いハルリアは振り返り来た道をみた。


「先程から……ワタシのあとをつけてるようですが何か用があるのでしょうか?」


 それを聞き倉庫の物陰に隠れていたハンナベルは驚く。


(気づいていたというの? いったいいつから……。まあいいわ……ここで捕らえて人質にしましょう。

 そうすれば……それにハルリオンの情報も手に入るかもしれない)


 そう考えがまとまりハンナベルはハルリアの前に姿を現した。


「よく分かったわね」


 その声と姿をみたハルリアは心の中で驚き……いや怒りがこみ上げてきている。だが、なんとか堪えていた。


「ええ、殺気が凄かったので」

「貴女……何者なの? 普通の少女にはみえない」


 そう言いながらハンナベルはナイフを構えハルリアへ近づいてくる。

 それをみるも剣を構えずハルリアは余裕な表情で笑みを浮かべていた。


「何者って……ただの可愛い美少女ですわよ」……普通、自分で言うか!?(汗)


 それを聞きハンナベルは、ジト目でハルリアをみる。


「そ、そう……まあいいわ。言うつもりはないみたいね……それなら貴女を捕らえて連れて行くだけよ」


 そう言いハンナベルはハルリアのそばまできた。


「それは困りましたわ。これから、やることがあるのですが」

「そう、それは大変ね。ですが、それはあとにしてもらえると助かるわ」……――……(どういう事? 隙だらけにみえるのに……攻撃できない!)


 ハンナベルはハルリアに手をだそうとするも隙が見当たらず困惑している。


「ごめんなさい、それは無理なの。それに、そもそも……なぜ見ず知らずの貴女のいう事を聞かなければいけないのかしら」

「それもそうね。それなら力尽くで連れて行くだけよ!」


 そう言いハンナベルはハルリアをナイフで突き刺そうとする。

 それをみたハルリアは素早く動きハンナベルのナイフを避けた。その後、即座にハンナベルの首筋を手刀で思いっきり打ち気絶させる。

 なす術なくハンナベルは、パタンと地面に倒れた。


「思ったよりも……アッサリでしたわ」


 ハルリアは物足りなさそうな表情でハンナベルを拘束する。

 その後、便箋に書き込みティオル宛てに送った。


(これでいいか……待っている間、退屈だがな)


 そう思いながらハンナベルをみる。

 そしてハルリアは、しばらく地面に座りハンナベルを監視しながら待機していたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る