試験開始と思わぬ運命の出会い

 ここは王立騎士養成学園の敷地内にある広い庭。と云うか、どうみてもグラウンドだ。

 そこには約五十人ぐらいの男女が適当な順番で整列している。そうこの学園の生徒になるために集まった者たちだ。

 その者たちをみるように、数名の教師が台を挟み並んでいる。台の上では、学園長が話をしていた。

 そんな中ハルリアは、受験生たちの最後尾で退屈そうにしている。


(まだか? 相変わらず話がなげえなぁ。隊長……いや、今は学園長か。でもまさか、この学園の学園長が……。まぁバレねぇとは思うが気を付けとくかぁ。後々……面倒だしな)


 そう思考を巡らせながらハルリアは聞いていた。


(それにしても、なんだ? 周囲の視線が真面に刺さるんだが。それも、野郎ばかり……女だといいんだけどな。まぁ……この姿じゃ、しゃあねぇか)


 そう思うも気づかないフリをしている。


 そうこう考えていると学園長の話が終えた。

 その後ハルリアは、指定された教室に向かう。勿論、他の受験生もである。


 ★☆★☆★☆


 ここは指定された教室。ペーパーテストを行う教室は五部屋に分けられた。

 ハルリオンは11番から20番と貼り紙がされている教室へ入る。

 そして19番と貼られた席に着いた。

 筆記用具などは学園側で用意している物を使うようである。

 机の上にはテスト用紙が裏返しになっていた。


(さて、いよいよだ。どんな問題がだされる? 分かる問題ならいいんだが……)


 そう考えていると、この教室の担当の女性教師が開始と合図をする。

 その合図を聞き一斉にテスト用紙を捲り表にし書き始めた。

 ハルリオンも書き始める。


(なるほど……まぁ、そういう事か。これなら……大丈夫だな)


 そう思い問題を解いていった。


 それから一時間おきに休憩をとりペーパーテストを三回やる。それが終えると女性のみ礼儀作法の試験会場へ向かった。

 勿論ハルリアも向かうが、気乗りしない様子でゆっくり歩いている。


「あら、どうしたのです? そんなにゆっくりでは試験の時間に間に合いませんわよ」


 そう言い赤で長いクセ毛の髪を上の方で縛っている女性は、心配そうにハルリアをみる。


「あっ、そうですわね。ちょっと、緊張しちゃって……」

「そうですのね。大丈夫ですよ……そんなに難しいことはやらないはずって、先輩に聞いてますので」

「そうなのですね。それなら……大丈夫かなぁ」


 そう言いハルリアは、ニコリと笑った。


(か、可愛い……天使?)


 それをみたその女性は、ハルリアの笑顔をみて顔を赤らめる。


「え、ええ……。あ、そうそう……そうでした。私は、セリアーナ・サフランです……よろしくね」


 それを聞きハルリアは一瞬、言葉に詰まった。


(サフラン……まさかなぁ)


 そうその姓に聞き覚えがあったからである。


「ワタシは、ハルリア・アルパスです。こちらこそ、よろしくお願いしますわね」


 そう言いハルリアは、会釈をした。


「勿論よ。あっ、急ぎましょう……遅れてしまいますわ」


 セリアーナはそう言うとハルリアの手を引き試験会場へ向かう。


(……サフランの姓は、珍しい。でも……そんなに少ない訳でもねぇしなぁ。それに……アイツが……。いや、ナイナイ。そうだ……ある訳ねぇ!)


 そう言い聞かせるもハルリアは、自分の手を引くセリアーナを不安な表情でみつめている。

 そして二人はその後、ギリギリ試験会場に間に合ったのだった。

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