話し合いと発覚と親バカと

 ここはハルリアとカールディグスの屋敷。

 あれからハルリアとカールディグスは、ここで学園長の連絡を待っていた。


「思ったよりも遅いな」

「ええ、そうですね。それはそうと今日マルルゼノファに念押しされましたよ……ハルリア嬢を大事にしてくれって。そうでなければ、いつでも奪うそうです」

「そうか……それは困ったな」


 そう言いハルリアは苦笑する。


「どうするんですか?」

「どうするも、こうするも……体が女でも中身は男だぞ」

「ですよね。ですが……もし一生、戻れなかったらどうするんですか?」


 そう言われハルリアの顔は青ざめた。


「流石にそれは嫌だ……どうにかして男の姿に戻りたい」

「そうですね……みつかればいいですが」

「ああ、どんなことをしてもみつけてやるっ!」


 それを聞きカールディグスは、クスッと笑っている。

 そうこう話していると二人の眼前に魔法陣が展開され便箋が現れた。

 その後、魔法陣は消え便箋がテーブルの上に落ちる。

 それを確認するとハルリアは便箋を取り読み始めた。


「隊長……学園長からですよね?」

「ああ、すぐくるそうだ」


 そうハルリアが言ったあと、ベルの音が聞こえてくる。


「来たみたいですね……僕がみてきます」


 そう言いカールディグスは立ち上がり部屋を出て外へ向かった。

 その間ハルリアは考えながら待機する。


(行くのはいいが一番、早く着く方法だと……馬車か。転移の魔法なら早いかもしれん。だが使える者はいない)


 そう思いハルリアは無作為に一点をみていた。

 そうこうしていると部屋にカールディグスとダギル学園長が入ってくる。そして二人は、ハルリアの真向かいに座った。

 その後ダギル学園長に、ティオルから来た便箋をみせる。


「なるほど……流石は、ティオル鬼蛇だな」

「学園長も、その異名を知ってたんですか?」

「ああ、上層部では今でも有名だ」


 それを聞きカールディグスは、なるほどと納得した。


「それはそうと……ハルリオ……いや、ハルリア。この件は、お前の方がいいだろう」

「オレもそう思ってる。だがカンロギの町までは、かなりの距離だ」

「確かに、今から馬車を調達するにも時間がかかる。それを考えると馬で行く方がいいだろうな」


 それを聞きハルリアの顔は真っ青になる。


「いや……そ、それは……無理……だ。ハハハ……」

「まだ乗れんのか?」

「ええ、思ったよりも覚えが悪いみたいです。他のことは平気なのに変ですよね」


 そう言われハルリアは苦笑した。


「だが転移の魔法を使える者はおらんしな」

「学園長、そうですね。もし可能なら僕が同行しましょうか?」

「その方がいいか。二人乗せて長距離だと……馬も疲れるが緊急事態だ」


 それを聞きカールディグスは頷きダギル学園長をみる。


「カールと二人か……」

「なんか不満なんですか?」

「いや、なんか嫌な予感がする。他のヤツも連れて行った方がいいんじゃないか?」


 そう言いハルリアは、カールディグスとダギル学園長を順にみた。


「じゃあ、ルミカやメイミルを連れて行きますか?」

「メイミルも連れて行くのか?」

「なんか不満そうな顔だな」


 そうハルリアが問うとダギル学園長は冷や汗をかいている。


「あーいや、まあ……お前たちが居るから大丈夫だろう」

「……学園長、もしかしてメイミルのことを知っているんですか?」

「いや、そういう訳じゃない。ただ……足を引っ張るんじゃないかと思ってな」


 そう言われハルリアとカールディグスは、ダギル学園長を疑いの眼差しでみた。


「まるで親が子供を心配する態度ですね」

「そ、そんなことある訳ないだろっ! あんなバカ娘が……あ、いやなんでもない」

「なるほど……それでメイミルが学園に入れた訳か。おかしいとは思ったが」


 そう言われダギル学園長は苦笑いをしている。


「まあそれは、あとで聞くことにしましょう。ハルリア嬢が言うように、今はカンロギの町へ向かう者を数名必要という事です」

「そうだな……ルミカと、仕方ないメイミルも向かわせるか。あとはパルキアも必要か?」

「ああ、パルキアも居た方がいい。それと他に学園で、すぐに実戦で役に立つ者はいるか?」


 ハルリアがそう聞くとダギル学園長は、コクリと頷いた。


「それじゃ明日、学園で何人かに声をかける」

「そうしてくれると助かる。そうだな……ルミカとメイミルとパルキアは、ソイツらとあとから向かわせてもいいだろう」

「そうですね。じゃあ、僕とハルリア嬢は先にカンロギの町に向かいます」


 そう言いカールディグスは二人をみる。

 そしてその後も、ハルリアとカールディグスとダギル学園長は打ち合わせをしていたのだった。

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