募集の紙と三人の素性

 あれからハルリオンは、しばらくカールディグスとロイノビの言い合いを聞いていた。だが段々と、イライラしてくる。

 流石のルミカとメイミルも、呆れて来ていた。


「いい加減にしろっ! カール、お前の気持ちは分かった。だが悪い、その気はない。それとロイノビ、学園の件は考えさせてくれ」


 そうハルリオンに言われカールディグスは青ざめる。


(……あの顔はマジだ。絶対に勘違いされてる。だけど……まぁあとで、ちゃんと理由を話せば大丈夫だよな)


 そう思いカールディグスは、気を持ち直した。


「分かりました。あーそうそう、もし学園に来て頂けるのでしたら……これを渡しておいた方がいいですね」


 そう言いながらロイノビは、バッグから紙を一枚とり出してハルリオンに渡す。

 ハルリオンはその紙を受け取り、隅々まで目を通した。


「これ……なるほど、候補生の中途募集か」

「ええ、そのための試験を一ヶ月後に行います」

「……試験なぁ。どんなことをする?」


 そうハルリオンは問いかける。


 そうハルリオンは聖剣士で兵士だが騎士でも貴族でもない。だが本当なら功績からすれば、騎士になれたのだ。でもハルリオンは、兵士のままでいいと拒んだのである。

 因みに騎士は貴族が主で、だいたい養成所を出ている。中には貴族じゃない者もいるが希だ。


 そう聞かれロイノビは、待ってましたとばかりに説明し始める。


「試験の内容は、女性と男性で違います。実技とペーパーテストまでは同じですが。女性の場合は、礼儀作法が加わりますので」

「そうか……細かい内容とかは?」

「流石にそこまでは教えられません。試験は平等に行われますから」


 そうロイノビに言われハルリオンは、考えながら募集の紙へと目線を向けた。


「……ん? 教師の募集も同時にしてるのか」

「あーそうですね。新しくクラスを増やすらしいです。なんのためにかは、分かりませんが」

「教師!? それって、年齢とか制限はあるのですか?」


 そうルミカに聞かれロイノビは頷く。


「年齢は、十八歳以上の男女。実績があれば有利。ですが、採用試験での成績次第になりますね」

「面白そう! ねぇ、私たちも試験受けない?」

「メイミル、安易に応えないでください。まだ、どうするのかも決めてないのですから」


 そうカールディグスに言われてメイミルは不貞腐れる。


「教師の採用試験は難しいですよ。騎士か兵士の経験がないと厳しいかと」


 そう言いロイノビは、見下すようにカールディグスをみた。


「それなら大丈夫だろう。この三人、一応は王国の兵士だ」


 ハルリオンがそう言うとロイノビは驚き三人をみる。


「まさか……この三人が? そうはみえないが、所属はどこですか?」

「コイツら三人、兵団第一部隊に所属している」


 そう言いながらハルリオンは、三人を順に指差した。

 ルミカとメイミル、カールディグスは素性をばらされ気まずい表情になる。


 因みに隊での立ち位置は、カールディグスが副隊長でルミカとメイミルは兵士見習いだ。


 それを聞きロイノビは、三人に興味を持ちみる。


「ほう、第一部隊ですか。確かあそこは、聖剣士ハルリオン様の隊。そういえば、行方不明と聞いていますが?」

「あ……そっちのことは、分からん。そうなのか?」

「ハルリア……そうそう、言ってませんでしたね。今、探しているんですよ。どこに行っちゃったのかなぁ……兵士長はっ?」


 そう言いカールディグスは、ジト目でハルリオンをみた。


「まだみつかって居ないのですか。ああ……一度、会って話をしたかったのですが。……残念です」


 それを聞きルミカとメイミル、カールディグスは笑いを堪えている。

 その後ロイノビの元にバットキャットが戻ってきた。するとロイビノは、バッドキャットを檻籠の中に入れる。そして話を終えるとロイノビは、ここを発っていった。

 それを確認するとハルリオン達は、ハァーっと息を漏らし安堵する。


「やっと帰ったな。さて、どうする?」

「そうですね。とりあえずは、家の中で話をしませんか」


 それを聞きハルリオンとルミカとメイミルは頷く。

 そして四人はその後、家の中で話し合ったのだった。

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