一芝居
ここはカンロギの町にある商店街。
あれからティオルは、この周辺を歩きながら聞き耳を立てていた。
そう噂により何か情報が聞けるかもしれないからである。
(やっぱり噂からは無理か……だが聞きまわって、悟られても厄介だ。そういえば……手紙にハルリオン様のことを調べている者がいると書いてありました。
その者は生死を確認しているようだったと。この情報は、パルキアからとも……まあ間違いないでしょう。
それと隣の国であるマールエメスの刺客が、ハルリオン様を亡き者にしようとしたかもしれないと。あそこは侵略国家……そうなると可能性大。
その刺客が、この町に来てればいいのですが。そうだなぁ……罠を張ってみるか)
そう思いティオルは、わざとハルリオンを探すフリをして聞いて歩いた。
そしてしばらく聞いて歩いていると……。
「すみません。この辺で銀髪に赤いメッシュが入っていて、髪を後ろで束ねている男性をみたことはありませんでしょうか?」
ティオルは建物の壁に寄りかかっている男性に問いかける。
「……知らないですね。だが、それだけじゃ……誰のことか分かりませんよ」
そう言いその男は、ティオルを疑いの目でみた。そうこの男は、タールベである。
タールベもまたハルリオンの情報を探っていたのだ。……という事は、犬も歩けば棒に当たるである。
そう問われティオルは、心の中でかかったと思った。
「確かに、これは迂闊でした。そうですね……私が探しているのは、ハルリオン様です。名前ぐらい知っていますよね?」
「ほう……あの英雄か。だが、なんで探している?」
「もしかして、貴方は……ハルリオン様が行方不明なことを知らないのですか?」
そう聞かれタールベは首を横に振る。
「知ってはいるが、なんで探しているのか……気になっただけだ」
「なるほど……そうですね。依頼ですよ……ギルドでみつけました」
「……依頼か。じゃあ、本人には会ったことがないんだな?」
そう言われティオルは、コクッと頷いた。
「そうですが……なぜ貴方は、そう問うのでしょうか?」
「い、いや……俺も会ったことがないから……どんな人なのかと思っただけ」
「ああ……そういう事ですか。確かにどんな人なのか……会ってみたいですよね」
そう言いティオルは、ニコリと笑みを浮かべる。
「そうですな。じゃあ、用があるので……」
「待ってください。急ぎの用でしょうか? そうでなければ、別の所で……もう少し話などどうでしょう」
「話すことはないと思いますが?」
そう問われティオルは首を横に振る。
「話すことはありますよ。それに貴方は、この国の方じゃないですよね?」
そう言われタールベは、身構え警戒した。
「なぜ分かった?」
「なんとなくですが……強いて言えば、雰囲気ですかね」
「そうか……それで、話とは?」
そう言いタールベは、半目でティオルをみる。
「いえねぇ。他の国では、どんなことをしているのかと思いまして」
「それだけか?」
「ええ……それとも、聞かれてはまずいことでもあるのでしょうか?」
そう聞かれタールベは、ティオルが何を考えているのか分からず悩んだ。
「……まあ問題ないか。じゃあ、ひと気のない所でなどでは?」
「そうですね……その方が、話せることもあるでしょう」
そう言いティオルは、微かに笑みを浮かべる。
そしてその後二人は、別の場所へ移動した。
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