一章 ちぐはぐバディ④

 スリーバーズ・テクノロジーのビルを出た悠仁とルカが、バイクを停めた駐車場に向かっていると、


 ピピー! ピピー!

 ピピー! ピピー!


 と、鋭い音が鳴り響いた。緊急時の呼び出し音だ。


「はい」

『お疲れ様です、堀内です。今動けますか?』

「ああ。ちょうど聞き込みが終わったとこだ」

『では東池袋にお願いします。また英雄ゲートと思われる案件が発生したんですが、今回はまずいことに二例同時で』

「あー、お友達と一緒にインストールしちゃった感じですかね」


 勝手に回線に便乗して、話を聞いているらしいルカが横でそう呟いた。


『今対応しているのは、三課の荒事が苦手な局員と新人のバディで、ちょっと心もとなくて……できるだけ早く行ってあげてもらえると』

「了解した」


 通話を切ると、ルカが珍しく真面目な顔をして口を開く。


「悠仁さん、玉突き事故が起きた位置が悪くて、下の道はかなり広く渋滞しているみたいです。首都高の方が良さそうですね」


 こういう時に一瞬で展開される彼の情報判断能力は、間違いなく頼りになる。それは悠仁もよくわかっていた。けれど口を突いて出てくるのは、賞賛や感謝とは程遠い言葉だ。


「この辺りから乗るなら、八重洲か。じゃあとりあえずお前は留守番だな。区域的にバイクの相乗りは禁止なんだよ」

「緊急出動時は大丈夫だってわかってるくせにぃ。こんな時でも拒否を忘れないなんて、本当に困った人です。でも、今回は私を置いてきぼりにしたら絶対に後悔しますよ。そんなことにならないために、心優しいルカちゃんは張りついてでもついていきますからね!」


 言うなりルカは悠仁を追い抜いて駆け出していき、見慣れた黒い大型バイクの横に到着するとぶんぶんと手を振った。


「運転手さーん、早く出してくださーい! 三課の人たちが待ってますよー!」


 悠仁はため息をついて、小走りにその後を追ったのだった。

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